デザインが次世代を救うと期待されている「デザイン経営」

2018年5月23日経済産業省と特許庁により、「デザイン経営」宣言が発表された。そこから、個人的に共感した内容を以下に抜粋した。

◆デザイン経営の役割
デザイン経営(効果)とは、ブランド力向上とイノベーション力向上
その結果企業競争力が向上するという

◆デザインは発明と社会をつなぐ架け橋である。
革新的な技術を発見しても、社会に届かないことが沢山ある。
社会に届ける架け橋になるのが、デザインの発想や力。

◆産業とデザインの変遷
インターネット時代となり、顧客の体験が重要となってきた。
 →顧客と長期に良好な関係でいられるブランド。
 →顧客接点を取り込んだイノベーション創出手法。

◆デザイン投資効果
デザインを重視する企業の株価は、S&P500社と比較して、10年間で2.1倍成長など紹介されている。

◆「デザイン経営」の定義
デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活用する経営である。
ブランド力とイノベーション力を向上させる経営の姿である。
 →経営にデザイン責任者がいること
  (例:CXO=チーフ・エクスペリエンス・オフィサー)
 →事業戦略構築の最上流からデザインが関与すること

◆◆所感◇◇

デザイン経営におけるデザイナーとは
単にプロダクトデザインができる、ビジュアルデザインができる。UIデザインができるのがデザイン経営が求めるデザイナーではない。経営を理解し、経営と同じ視点をもち、かつ顧客体験を主眼にして、サービスの開発やイノベーションが起こせる人であると考える。

デザイン宣言を読み、内容に共感する。大量工業生産における競争力が低下し、ITやネットワークにおけるサービス提供とプロセス体験が次の競争要因、優位性となる。その中で、デザインに対する期待は理解できる。自身もデザイナーとして30年近く活動してきたので、理解を得られ始めてきたと感じ嬉しい。

一方「デザイン」という言葉にあまりに広い意味があり、認識にずれが生じる可能性を危惧している。コラムに書かれている事例では、歯磨き粉のチューブがデザインによって進化してきた歴史が紹介されている。この事例からも、デザイン宣言で言われているデザインは、UXデザイン的思考方法を行える人だと考える。

デザインはもともと、UXデザイン思考をもっていた。卵のケースだって、卵がかっこよく見えるというより、卵が割れない構造をどう作るか、デザイナーが考えていた。飲料水のボトルでも、人の手のひらサイズで握りやすく、握っても壊れない強度で、軽くて、かっこいいなど、複数の検討すべき要因を複合的に考え、解決を試みている。時にテストをしたりする。

UXデザインの違いとは、ユーザ評価プロセスの絶対量なのかもしれない。そしてUXデザインが進めるプロセスにはその点細かく規定されているので、参考にすると良いと思う。

◆経営視点
デザイナーでありながら、私が経営を学んだのはまさにこの理由からだ。デザインの効果を計る上で経営指標は欠かせない。しかし、ROIという言葉や経営指標をデザイナーやプロデューサーに投げかけた時点で、それは、私の領域ではない。という言葉がかえってくる。お客様にコミットできないとかえってくる。対等に話せないとかえってくる。期待に対し非常に寂しい状態だった。だから学んでいる。

お客様は良いデザインが欲しいのではない。お客様の掲げる経営理念を実現し、社会に価値を提供し貢献したい。そのためにより良い体験をお客様に提供し、経営を持続したいと考えている。デザイナーはお客様の大切なお金を預かり、使ってデザインを作り、提供する。だから、お客様の1円がいくらになったのか、責任をもって理解する必要がある。

仮に最初は1円の投資で、1円以下の成果しかない場合もあるだろう。でもそれこそ、チャンスである。なぜ、成果が出なかったのか。顧客に向き合い、調査やヒアリングし、課題を見つける。もしくは、内部の仕組みやオペレーションに課題があるかもしれない。そんな課題を見つけるきっかけになるチャンスである。

そして最終的に1円以上の価値を生みだせば、成功である。

「デザイン宣言」が発信された理由を考えると、生産性や効率化、機能性など従来の日本のもつ得意領域が世界に通じなくなり、新たな価値を生みだしたいという発想からだと思う。

デザイナーもその期待から逃げず、経営に向き合ってほしい。デザインやアートを学んだ方。仕事で向き合っている方。是非、経営的視点を学んでほしい。その結果「デザイン経営」が初めて実現されると思う。

引用:
デザイン宣言
http://www.meti.go.jp/…/2…/05/20180523002/20180523002-1.pdf…
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