第2版出ます。もう【極論で語る】シリーズで、最薄とは言わせない(刊行直前)
こんにちは。
いち編集部のリアルです。
さて,刊行記念特別インタビューはいかがでしたでしょうか.そしていよいよ『極論で語る神経内科 第2版』(河合 真著、 香坂 俊監修、 龍華朱音イラスト)が刊行されます。刊行直前,本編の「監修者・まえがき」「著者・まえがき」「目次」を紹介します。
監修者・まえがき
「極論」神経内科の初版は大変好評をいただきました.河合先生の執筆された内容は,臨床神経内科の「凄み」を十二分に伝えてくれるもので,どのチャプターも一線の現場からの生の声を届けようという意気込みに溢れており,神経内科医が目指すべき高みを示してくれていたように思います.
その第1 版を上梓してから6 年が経ちました.今回の改訂では新たに「頭痛」(2 章)「末梢神経障害」(6 章)「めまい」(12 章)のチャプターが執筆され,さらに各章に必要な内容を加筆いただいています.その内容がまた俊逸であったため,内容の全面的な再構成をさせていただきました.具体的には,以下の三部構成となっています:
■新しい時代の神経内科疾患(主に脳血管障害に近い部分)を河合先生が語る
このセクションの6 つの章は脳から末梢神経まで順番にみていくようになっており,特に最初の3 章は,脳血管障害を軸として新たな時代のスピーディな神経内科を扱うこととしました.
■古典的神経内科の疾患を河合先生が斬る
このセクションは最初のセクションと打って変わって「古典的神経内科疾患」が中心となっています.ただ,「古典的」とはいえ,そこに河合先生流の現代的な考え方が取り込まれており,多くの読者にとって新しい内容となるのではないでしょうか.個人的には8 章のALS や9 章 ギラン・バレー症候群がハイライトとなるのではないかと思います.
■症候別に神経内科全体を俯瞰する
最後のセクションにくるのは「疾患論」の内容です.この項では疾患ではなく患者さんの訴えという視点から神経内科を俯瞰的に捉えているチャプターを集めました.第1 版でも大変評判がよかった「器質的疾患でない神経疾患」を最後に配置させていただきました.
本書の対象は,神経内科をローテートする研修医(初期・後期)はもちろん,ひと通りの神経内科の勉強を終え,臨床の現場に出たが今ひとつ教科書的な知識やガイドラインの素読では物足りないといった方も対象になるかと思われます.あるいは,神経内科の業務に携わり,その裾野を広げたいという方にも【極論】という形式でのエッセンスの共有は役に立つのではないかと考えています.
最後にややプライベートな内容になりますが,本書の著者である河合先生と自分は,ちょうど同じ時期に同じ都市(ニューヨーク・ヒューストン)で研修した間柄です.その後 15 年を経て,一緒に医学系の書籍を上梓する機会に恵まれたわけですが,河合先生が日米で経験してきた臨床のコアの部分を多くの方に共有してもらえたことを非常に嬉しく思います.
その「心意気」が1 人でも多くの読者に届くことを願っております.
2020年12月吉日 監修者 香坂 俊
著者・まえがき
「神経内科の面白さとは,何だろうか?」
数ある医学分野の中で「なぜ,その進路を選んだのか?」を言語化することは道を迷わないために大切な作業です.よく進路を決めるときに「いい指導医に感化されて…」「いい先輩に憧れて…」という決め方をする人を見かけます.別に入口はどんな入り方をしてもいいと思いますし,選んだ先で真の面白さに目覚めて,そのままその分野に突き進むこともあるでしょう.
ですが,そういう進路の決め方は結構危ういと思っています.「じゃあ,その指導医が転勤になったら?」「その先輩がどこか別の科に転向したらどうしますか?」と問いたいのです.大前提として,病める患者に寄り添っていかねばならないのは,どの分野に進んだとしても変わるものではありませんし,その作業は喜びもありますがときに辛く厳しいものです.だからこそ,医療従事者が専門分野を選ぶときには,
自分がいかに前向きにその分野を興味深いと思えるか
が重要になってきます.医学の一分野を一生の仕事にするには,ここのモチベーションがはっきりしていないと「もたない」のです.極論で語れば「その分野を面白い」と思えるかどうかです.
初版を執筆したときのことを思い返せば,「なぜ,神経内科の面白さが伝わらないのだ!」という怒りにも似たエネルギーをぶつけて執筆したことを思い出します.6 年の歳月が経ち,神経内科を取り巻く環境もかなり変わってきました.名前が脳神経内科に変わろうとしていたり,初期研修制度やマッチングなども普通になり,新薬が次々と発売され,専門医制度も変わったり,画像技術はさらに精度が上がり身近になってきました.それでも,これらの要素は神経内科を進路に決める状況において一番の優先順位を与えられるものではありません.だからこそ,冒頭の「神経内科の面白さとは、何だろうか?」に戻りたいのです.
それは,今も昔も(きっと未来も)「局在診断」です.
(皆さんがお読みの本は【極論で語る】シリーズです).
本書の中でも「これでもか!」というほど強調していることなのですが,じつはこれはかなり複雑なコンセプトです.まず,大脳から始まって脳幹,脊髄,末梢神経,筋に至る空間的な局在診断をつける作業があります.すなわち3 次元に人間の身体をとらえる必要があります.さらに,病変によっては,あるときは異常を呈するが,時間が経つと消えてなくなるような病変もあります(多発性硬化症,てんかん発作,睡眠関連疾患などがそれにあたります).時間的な局在診断をつける作業が求められるのです.すなわち,4 次元に人間の身体をとらえる必要も出てきます.
この作業を「面白いなあ」と思えれば,神経内科へようこそ.この分野はあなたの知的な好奇心を満たしてあまりある複雑性で迎えてくれることでしょう.そして私は,そんなあなたに何回もくり返して言いたいのです.
神経内科は絶対に面白い.
■ 謝 辞
香坂俊先生にはいつもながら鋭い視点から監修していただき感謝します.章立ての変更など,彼に監修してもらったことで第2 版は格段に読み進めやすくなったと思います.ニューヨークとヒューストンで同じ時期に同じ場所にいたことは,私にとって空間的・時間的な奇跡以外の何ものでもありません.
龍華朱音先生には今回も的確かつ親しみやすいイラストで【極論で語る】シリーズのテイストを支えていただき感謝します.私がコンセプトを伝えて,彼女に医師の視点から関心をもっていただき,それをイラストにしてもらえるこの作業がいつも非常に楽しいです.
今回第2 版を出版できるようになったことを丸善出版企画編集部の程田さんに感謝します.初版からの付き合いになりますが,その間に睡眠医学編の執筆もあり,それ以外にも連絡をもらい,執筆のヒントをいただいているせいか,彼とは常に一緒に働いているような気がしています.今回も粘り強く編集作業をしていただきました.
さらに,改訂版では編集部総出で校閲作業をしていただいたと聞きます.ここで感謝の意を表します.
そして,最後になりましたが,この第2 版が出版できることになったのは,今読んでいただいている読者の皆さんのおかげです.ぜひ忌憚のない意見,感想をSNS などで聞かせていただければ幸いです.
2020 年12 月吉日 著者 河合 真
目 次
毎年多くの研修医や医学生、専門医、他科の専門医の方に愛読され、読み継がれていく「極論」。本シリーズに携わるすべての方に感謝を申し上げて、『極論で語る神経内科 第2版』刊行の寿ぎの言葉とさせていただきます。
ご清聴(読)ありがとうございました。
2021.1.14