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あのソボッタが帰ってきた!

こんにちは。新年あけましておめでとうございます。

いち編集部のリアルです。

さて、本日のお話は、いち編集者の主観に基づく「ひとり語り」です。途中で「ん?」と思われた方はどうぞスルーされてください。

はい、まずですね。

医学書を扱う出版社が一番出したい本は、何だと思いますか? 

いろいろ迷いますね。でもわたしが思うに…それは,解剖学の本。それもアトラスではないしょうか。つまり解剖学アトラス。アトラスとは図譜のことで、図や写真を集めて分類した見本帳のようなものでして、解剖学アトラスといえば、人体の解剖図のイラストや写真入りの図譜となります。では、

なぜ医学系出版社が解剖学アトラスを出したいのでしょう。

思うに…それは、医学を勉強する医療系の学生さんが一番最初に教わるのが、解剖学だからです。実際は医学生は一年目は教養科目を中心に学び、二年目から解剖学実習という大学が多いと思います。医学部保健学科の学生さんですと一年目から解剖生理学や筋肉骨格系の授業がはじまるようです。いずれにしても、医の学びのファーストステージは人体の構造を理解し、覚えること。となると、解剖学アトラスは医学生や保健学科の学生さんが最初に手にする医学書かもしれません。そこで学んだ最初の驚きやインパクトは、もしかしたら終生続くのかもしれません。このように考えてみると、医学系出版社にとって解剖学アトラスを手掛け、ラインアップとして刊行できるということは、ものすごく大事なポリシーであり,ステータスでもあるように思います。その証拠に解剖学アトラスを毎年のように重版し、かつ定期的に改訂し、学生の皆さんにコンスタントに提供できる版元さんは数えるほどしかありません。それは結構な力業(ちからわざ)だからです。

そして、その最初の一歩の医学書から派生して、さまざまな基礎系の本、臨床系の本が誕生するのだとしたら、その意味でも解剖学アトラスをラインアップとして有することは,ステータスであり、ポリシーだと思うのです。

すべての道は解剖からはじまる

といっても過言ではないかもしれませんね。いち編集部のリアルチームも、そのようなタイトルに接する機会をどこかでずっと模索していたのかもしれません。もちろん,そのような機会に恵まれることはめったにありませんが…。

ここまでが前段です。

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さて、2021年1月、満を持して発売させていただくのがソボッタ解剖学アトラス 原書24版 第1巻 全身解剖・筋骨格系です。

全3巻で、1巻(全身解剖・筋骨格系)を1月に、その後、2巻体幹(内臓系)、3巻頭頸部・神経系と続きます。いってみれば、人体を「筋肉骨格系」「内臓系」「頭頸部(神経系)」に分けて、3巻でお届けする大掛かりな発売物です。しかも購入すると日本語版の電子書籍も付いていますし、オンライン機能(解剖図の拡大縮小、ダウンロード、英語・ドイツ語切り替え機能)付きです。

海外を見ますと、ソボッタ先生(Johanes Sobotta;1869~1945年)ネッター先生( Frank Henry Netter;1906~1991年)の書かれた解剖学アトラスが医学生らに多く利用されておりまして、かなり乱暴な区分けですが、ヨーロッパ系はソボッタ(ドイツの本)。米国系はネッター(アメリカの本)が二分している感じです(そんなことはないとツッコミがきそうでありますが)。今回リリースさせていただくのは『ソボッタ解剖学アトラス』の 原書24版 です。1903年にドイツのボン大学解剖学教授のソボッタ先生が刊行し、以来約120年にわたり24回も改訂されています。4年に1回の改訂ペース。すごいですね。それはそれは歴史のあるアトラスです。

解剖学アトラスというのはもう一面の価値を有しています。何だと思いますか?

それは、メディカルアートとしての価値です。

東京芸術大学には美術解剖学研究室があります。同研究室のホームページには次の説明が掲げられています。

 美術解剖学は、美術を学ぶものが、その創作のため、また美術作品の研究のために、人体の形態と構造を研究する学問です。いわば、「自然」を美の最高の教師とし、芸術の本質に迫ろうというものです。
東京芸術大学における美術解剖学は、明治24年(1989年)の森鴎外の講義に始まり、以来100年以上の歴史を積み重ねてきました。

日本美術解剖学会という学会もありまして、会長は養老孟司先生です。昔の芸術家を遡れば、レオナルドダヴィンチミケランジェロも解剖図を手掛けていますし、解剖学者アンドレアス・ヴェサリウスによる16世紀の人体解剖書『ファブリカ』(1543年出版)などは芸術・美術的要素が強い解剖図として有名ですね。

『ソボッタ解剖学アトラス』の特徴はなんといっても精緻で微細な解剖図。一見すると写真と見間違えるほど、美しい人体解剖のイラストレーションが展開されています。1冊8500円ですから、一般の方が購入するには敷居が高すぎますが、メディカルアートコレクションの視点としても、書店でお見掛けしたらページを繰っていただけたらうれしですね。

そして、もちろん医療を学ばれる学生の皆さんの最初の医学書として、お手にとっていただけたら、これに勝る喜びはありません。

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ご清聴(読)ありがとうございました。

2021.1.1.



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