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やさしく寄り添う医書のあり方 『あめいろぐ女性医師』 医療者に向けられるバイアス

こんにちは。

いち編集部のリアルです。

8月は「やさしく寄り添う医書のあり方」、そして「医療者に寄り添うやさしい情報提供のあり方」というテーマで、5回にわたり『あめいろぐ高齢者医療』の話をしました。そういえば2回目のNOTEは、こんな結びでしたね。

ちょっと長くなってしまいましたので、『あめいろぐ高齢者医療』の紹介は次回より、そんな視点も加えて投げかけてみたいと思います。逆にあめいろぐ女性医師』は、医療者に向けられるバイアスの視点から紹介します。

医療者に向けられるバイアスの視点

って、何でしょう。

ある女性医師の切実な声

ここで、ある女性医師のコメントを紹介します。

【医師の三分の一は女性医師です.にもかかわらず,女医のキャリアと家庭の両立の本が出ていないのが不思議でなりません.例えば,「いつ出産すればいいのか」「いつ結婚すればいいのか」.この点だけでも、女医は本当にキャリアと人生の両立に悩んでいます.「専門医の資格をとりたいので,それまで以上に勉強に専念せねばならない」となると、出産どころではありません.でも女性の出産期間には限りがあります.結婚も同じで,初期研修中に結婚という形は(ご縁があれば,行うでしょうが),基本難しいです.今後新専門医制度で,研修,試験,研修と病院めぐりがさらに長くなれば,ますます結婚や出産,子育ての選択肢とキャリアと生活のバランスが追い詰められていきます】

この方は、都内大学病院脳神経内科に勤務され、幼いお子さんがお一人、現在はシングルマザーの女性医師です。日頃、企画立案時のドクター取材でお世話になっている方で、当方の企画の吟味をあれこれと指摘してくれます。上記のコメントは2年ぐらい前の取材メモ。医師の場合、婚活の時間や結婚生活の維持だけでも何かと大変と思います。そのうえ臨床をこなしながら、お一人で子育て、想像するだにヘビーですし、将来を考えれば不安でしょう。しかも医師である以上、勉強は欠かせないし、研究発表もあれば、キャリアアップも考えねばなりません。

【程田さんのチームで今手掛けている「あめいろぐ」サイトの書籍化シリーズ。サイトには「女医の妊娠・出産 in U.S.」といったブログ記事がありました。きっと米国は,日本よりも,キャリアと家庭の両立は進んでいると思うので,このシリーズで扱ってはどうでしょう。医師の三分の一は女性ですから,これは読まれると思います】

つまり、そのような本をつくってもらえませんか…、のリクエストでした。

【もし「あめいろぐ女医」みたいな本ができて,成功したら,第2弾として「あめいろぐ子育て」はいかがでしょうか.こちらは女医とイクメン医師の双方が読者対象になります.医師のワーキングタイムが問題となっていますが,保育園の送り迎え,食育,休日の過ごし方も含めて,医師の在り方が問われているし,本当に子育て中の医師の奮闘は大変と思うので,ぜひアメリカの事例を読んでみたいです】

とても大きな宿題…。医書は医書だけど、臨床の話ではなく、社会学的な内容の本となります。しかし企画の都度,医師の皆さんの声を医書に反映させてもらっている身としては、「それは興味深い視点ですね」だけでやり過ごすこともできないテーマのように思えました。それに、男女の比率は半々なのに…、なぜ医師の半数が女性医師でなく,三分の一なのか…。3割って、構成比率でいえば、少数派かもしれません。

【もっといえば、保育園だって、病児保育を受け入れてくれるところなんてないのです。でも子どもはいつ病気になるかわからない。病気になって子どもの側にいたくても、周りに迷惑をかけてしまうから休むわけにもいかず…。それに、病弱な子どもがいる女性医師がまたひとり身になって、新しいパートナーを探すとしても、婚活そのもののハードルも高いし…】

「医師の働き方改革」?

聞けば聞くほど、シリアスです。女性の働きにくさというのは、医師だけの問題ではないと思いますが、「医師の働き方改革」の議論を見ると、医師の長時間労働や医師の健康確保という必要最低限なブラック除外の動きと読み取れるのですが、医師の生活にまで踏み込んだ「切実な声」の反映の議論はあまり見られないようです。もしくは、過重勤務の弊害としての「医療ミス」があり、そのリスクヘッジの対策のようにも思えます。あるいは、医師の地域偏在解消や医療費削減といった「医療ソースの公平分配」のような背景も読み取れます。つまり,

人間としての、生活者としての、医療者の話が前面に出てこないのです。医師のワーキングタイムの過剰と偏重の話であるのに。

今年などは、それに新型コロナウイルス対応も加わり、専門外の皮膚科も耳鼻科も整形外科も泌尿器科もコロナ外来に駆り出されていると聞きます。2年前以上に、今の医療の現場は疲弊しているのかもしれません。

医師というプロフェッションに向けられる世間の目線

一方、(医療職以外の)一般ピープルの観点から医師という人たちを眺めた場合、医師国家試験という難関をクリアした超のつくエリート専門職であり(社会的優位性?)、かつ医系大学卒業に伴う経済力という点からも祖父や親の代からのお医者さんも多く(医師の家系?)、高度なプロフェッショナルゆえの高収入と(高所得?)、われわれは、医師という人たちを、どこか自分たちとは違った別の世界の存在として見ているような節があります。

よく医の現場がTVドラマや映画の舞台になるのは、人の命や患者・家族のシリアスなドラマを設定しやすいという以上に、彼らが「スーパーなキャリアの人たち」であり、憧れのプロフェショナルではあるけれども、どこか自分たちとは違うという、羨望と自己卑下の裏返しともいえる「ある一線」を置いた地点から眺めることができるからではないでしょうか。

そして、その一線を置く理由は、日常の時間ではなくて、(日常が切り離された)医の現場の風景を異国の空でも遠望するように,どこか他人事として眺めることができるからではないでしょうか。憧憬ではあるけれども、「本当の医療者の生活はどこかに置かれている」という設定は、フィクションの設定として最適です。

「人の命を扱う聖職だから、医療者の日々の努力は当然です」
「難病や人の痛みや死へ接近する機会の多い職業上のストレスも、人の命をつなぐための勉強の連続も、医師という聖職である以上は当然です」

そんな声も、どこからか聞こえてくるような気がします。どうも世間の一部にはなにかしら「医療者に優しくないバイアス」があるようです。そのようなバイアス(偏見)を、今回はちょっといじわるく編集部であげつらってみたのですが、この点って、結構、見逃されていませんか…?

この本は間違いなく面白い

さて,これまで女性医師に関する本は、数冊出ているようです。女性のキャリア開発という視点から。ジェンダーという視点から。

でも今回扱う女性医師の本は、もっと内容が突き抜けているかもしれません。男性だろうが女性だろうが適性と能力さえがあれば、どこででも活躍できる。そんなしなやかで力強い、アメリカで活躍する4人の女性医師の本でありますから。

「この本は間違いなく面白い」

こちらのコメントは、本書の冒頭で監修者が述べた言葉です。

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(次回へ続く)

ご清聴(読)ありがとうございました。

2020.9.20

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