
日本金利は上昇?住宅ローン金利を固定にすべきか?
サマリー
日銀の政策変更
この数年間で、日本を取り巻くマクロ環境は大きく変わっており、日銀の政策シフトが必要というコンセンサスに変化している。
結論から言えば、日銀が急速に金融政策を変更することは困難だろう。
新総裁体制がスタートする23年春以降、3/21~22のFOMCを経て、米国では5月以降の利上げの打ち止め観測が高まってくる中、日銀の政策修正に向けた判断も慎重にならざるを得ないだろう。
黒田総裁がYCC修正に踏み切り円安トレンドが反転したことで、新総裁は時間的な余裕を持つことができた。
従って、国会質疑や就任タイミングで、政策変更する可能性は低く、政策正常化に向けた説明準備を経て、実際に政策変更が行われるのは、7月の展望レポートのタイミングになるだろう。
住宅ローン金利
日本の長期金利に上昇圧力がかかる中、既に固定金利は上がり始めている。
今のうちに固定金利で借りた方が安全という発想もあるが、変動金利の方がメリットは大きい(日本の住宅ローンの7割は変動金利)。
変動金利は一般的に半年ごとに見直されるが、金利が上昇した場合も、当初5年間の返済額は変わらず、5年経過後の返済額も従来の25%増までに抑制されるというルールの金融機関が多い(125%ルール)。
足元の変動金利は年0.4%以下に対し、住宅金融支援機構が提供する35年固定金利の「フラット35」は年1.7%弱。仮に、7,000万円を35年で借りた場合、返済総額は1,800万円もの額が生じる。
いずれ、変動金利が上昇する可能性もゼロではないが、年央にも世界経済が悪化するとの見方が多い中、日銀がマイナス金利解除し短期金利が1%上昇する可能性は低いだろう。
これまでの金融政策
日本政府(アベノミクス以降)と日銀の金融緩和によって、
GDPを押し上げた一方、産業の新陳代謝が起こりづらくなり、日本の生産性は世界対比で成長していない
YCC(イールドカーブコントロール)によって、金利を人為的に押し下げることで、円安が進み輸入国である日本の物価は上昇
この数年間で、日本を取り巻くマクロ環境は大きく変わっており、金融政策のシフトが必要というコンセンサスに
2022/12のYCCの運用修正、2023/1の共通担保オペの拡充などの決定を経て、2022/2には日銀総裁及び副総裁人事が発表される公算が高まっており、当面の日本金利相場は荒い値動きとなる可能性がある


今後の金利見通し

日銀が急速に金融政策を変更することは困難だろう。
日銀がYCC修正を事前に市場に伝えることは事実上不可能であり、市場に何度もサプライズを引き起こすと、日銀の信用が損なわれ、市場の機能回復が一層難しくなるからだ。
新総裁体制がスタートする23年春以降、3/21~22のFOMCを経て、米国では5月以降の利上げの打ち止め観測が高まってくる中、日銀の政策修正に向けた判断も慎重にならざるを得ないだろう。
黒田総裁がYCC修正に踏み切り円安トレンドが反転したことで、新総裁は時間的な余裕を持つことができた。
従って、国会質疑や就任タイミングで、政策変更する可能性は低く、政策正常化に向けた説明準備を経て、実際に政策変更が行われるのは、7月の展望レポートのタイミングだと思われる。
その際、前提条件は世界経済が景気後退を回避していることだ。
内閣府の2022年版短期日本経済マクロ計量モデルによれば、短期金利1%上昇の実質GDP 押し下げ効果は1年目▲0.3%、2年目▲1.0%、3年目▲1.2%と、当然ながら景気を減速させる。
グローバル金利が低下局面に入り、ボラティリティが低下しなければ、日銀が政策を変更することは難しいだろう。
なお、日銀がマイナス金利解除で利上げに踏み切る前に、買入減額(QEテーパリング)が必要となる。
日銀がYCCで国債購入を継続しながら政策金利を引き上げた場合、日銀当座預金への付利支払費用の増加が日銀のバランスシートの負担となるからだ。
令和5年一般会計予算・歳出における国債費負担は25兆円と歳出の2割超を占めているが、仮に10年金利が1.6%まで上昇すれば、2026年のそれは、30兆円まで増大することが見込まれている。


住宅ローン変動金利の仕組み

5 年ルール (例)
借入後の返済額は、借入後 5回目の10月1日を基準日とする借入金利の見直しを行うまで一定のままとなる。
この期間中、借入金利に変更があった場合も返済額は一 定のまま「元金」と「利息」の金額の内訳が変更となる。
借入後 5回目の10月1日を基準日として、借入金利、適用期間における元金残高、残存期間、未払(未収)利息に基づき、新しい返済額が算出され、12月の約定返済日の翌日から適用される。
以後、5回目ごとの10月1日を基準日とし、12月の返済日の翌日に同様に返済額を再計算。
借入金利が上昇しても、5回目の10月1日を基準日とし、12月の返済日の翌日に再計算される新しい返済額は、再計算前の返済額の125%を超えることない(125%ルール)。
借入金利の引下げが行われ返済額が減少する場合は、制限はない。
半年毎増額返済額において、前回半年毎増額返済日と次回半年毎増額返済日までの 間に新借入金利の適用日がある場合の按分計算は、「半年毎増額返済部分の元金残 高×旧借入金利(年利率)×1/12×前回半年毎増額返済月から新借入金利適用月まで の経過月数」+「半年毎増額返済部分の元金残高×新借入金利(年利率)×1/12×新借 入金利適用月から次回半年毎増額返済月までの月数」で計算される。