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雑話・タクドラのエピソード①

私はタクシー会社に勤務している。この商売は様々な人と接するので、会話スキルや演技的なものが磨かれていく。なにせ、楽しく愉快に快適に、を気にしながら仕事をしてるとどうしたって会話も重要になるからだ。勿論、話しかけない方が良いかも、と思った時はお声掛けがある迄は余計な口はきかない。それを判別するのも仕事だ。服屋の店員のように体当たりのセールストークなどはしない。


ただし、頭のおかしいやつは「これが最適解だ!」と思って異世界の扉を開けてしまうこともある。そう、私です。



ある暇な日、特に泥酔客などの障害もなく淡々と仕事をしてたのですが、ある時めそめそ泣いてる女の子とそれを励ましてる女の子の二人組が俺の営業車に接近。恐らく乗るだろう。ドアをガチャリと開け、乗り込むのを待つ。

ところがどうしたわけか、なかなか乗らない。漏れ聞こえてくる会話を総合するに、どうも彼氏が他の女の子と遊びに行ったりホテルに行ってたのを知り喧嘩になり、慰め話しにお店でお酒飲んでたようだ。


はっきり言って、こういうお客さん乗せるのは気まずい。超気まずい。だって話しかけようがないし話しかけられてもどう答えたらいいか分からないからだ。浮気するどころかされて別れた側の私にはそんな心理わかりようもない。

とりあえずやっとこさ乗って、車で30分くらいの場所で、とお連れの方が指示。かしこまりましたーと返答し発進。

まあ案の定車の中でも泣くよね。スンスン泣くよね。どうしようかな無言で走ってた方がいいかな、と思ってたら、乗車後5分辺りでおもむろに彼女が口を開いた。

「運転手さん…やっぱり男の人って…浮気するものなんですか…?」


Oh YeahきやがったFoo↑!答え辛いやつやんなんて返答しても納得頂けないやつやんヽ(´Д`ヽ)(/´Д`)/イヤァ~「いやモラルがしっかりしてる男は浮気なんかしませんよ変なの掴みましたねHAHAHA」なんて言えるわけねぇーじゃんかといって「んーそうかもしれませんなあいや私は違いますけどHAHAHA」とも言えねーしどうしたらええねん(☝︎ ˙-˙ )☝︎ふぅー!!


なんぞと思いながらも、以前に似たような話を振られた事がありその時の失敗を反省し、こういう事があればこう返そうと思ってた人格が勝手にセットされた。ここからは、完全に黒歴史なので狂おしい程枕に顔をうずめて泣き叫びたいが記録として残しておこう。言っておくが演技なので、実際は違うというのは私の最後の名誉の為に言っておきます。そう、これから起きるのは私の「演技」です。





で、先程の質問振られた直後。

私「いや…僕、男心わかんないっていうか…ぶっちゃけそっちなんで」

客「…え?」

私「だから!ソッチなの!わかるでしょ!顔と声がゴリゴリでも、心は女なの!男の浮気なんてされる方で、する方の気持ちなんてわかんないわよぉ!(´;ω;`)アタシだって今まで何回もされてきたわよ!」


お客さん、泣くのをやめて鳩が豆鉄砲食らったような顔をした。うむ、まあそりゃそうだ。そして、とりあえずオネェの爆発的ゴリ押しで空元気出させようと試みる。


私「でもね、他の女と天秤にかけるようなバカ、いつまでも好きでいてやる必要無いわよ!なぁに貴女まだまだメソメソ泣いて!泣いてばかりだと陰気なブスになるわよ!そんなんなったらいい男居ても近寄って来ないじゃない、ほら泣きやんで!じゃないとおナベの巣に放り込むわよ!」

客「いやいや、えー…なんか運転手さん大変なんですねー」

私「聞きたい?アタシの話?彼氏が女に寝取られたりオカマ同士で男の取り合いして、本町の○○ビルの踊り場で女装したオッサンが大乱闘して警察呼ばれたり、そんなんばっかよ!」(踊り場でケンカは昔実際にあった。ただし当然の話当事者でなく又聞きしただけだが)

そんな感じでしゃべくり倒し、目的地近郊に入る。クライマックスが、


私「男なんて、女の子の気持ちわかんないのよ、それでもこっちがついていきたい!と思う男って必ず居るんだから、女は焦ることないのよ。まあ、アタシ女じゃなくてドラゴンボールと如意棒ぶら下げてるんだけど!」

この時、いっらっないぜ、ドラゴンボール☆てボソッと歌いながら股間に手をやる一発ギャグしてました。

↑このあたりでひきつけ起こす位に大爆笑してた(`・ω・´)笑顔を取り戻せたようでなによりだが、何が可笑しかったのかわかんねえや。


そして、降ろす時も

私「端数いらないから、なんか甘い物買って帰りなさい!んでヤケ食いしてブクブク太ればいいのよ!それが嫌ならスッパリ割り切って、そのバカからLINEきてお前の方がやっぱ好きとか言い出したら、他の女と天秤にかけるクソなんてサイテー死ねってこっぴどく振ってやりなさい!もう落ち込んだらダメよ!」

客「はい、ありがとうございます!また何かあったらお話させて下さい!」

何度も会釈して去るのを、親指をグッと立てて、400年前のタロットの太陽のアルカナに描かれているような笑顔で見送った。


その帰り、セブンイレブンのホットコーヒーを一口啜りながら、やたらタクシードライバー辞めたくなった。私は思考放棄をしてしまった。キャラでゴリ押しなんて普段は頭使えとか思考停止させたら人は人では無くなるんやぞと言っておきながら。あの子また乗せる時、またこのキャラにならなあかんやん…。まあ、元気になったならいいんだけど。


もう一度言うけど、単なるキャラ付けで私はノーマル&ノンケですので。本当に。なんであんなキャラやってしまったのだろうか、今も自分に問いかける。



いや、「本気で伝えようとすれば、誰かの心にきっと届く」ということなのだろう( ・´ー・`)

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