提言力の高め方

業界でよく言われることですが、コンサルは話さないとNo valueです。でもやはり経験が足りなかったり相手がCXOレベルとなると、臆してしまう気持ちも分かります。その状況を打破すべく大体よくルーキーの方々にお伝えするのは、どんな発言に価値があるのかを理解すべきという点です。提言のレイヤーを先ずは理解する必要があるため、それぞれ説明していきたいと思います。

1. Fact

アナリストは調査した事実についてはマネジャーよりもクライアントよりもわかっています。だからこそ上司が適当なことを言ってたりクライアントが事実誤認をしていた場合、調べた事実を伝えるのが初めの第一歩です。
でもこれは事実を伝えているだけであり何をすべきかの提言には至っておらず、言うならばGoogleなどの検索エンジン以上の価値は出せていない状態です。

2. Analysis

次のレイヤーとしては、情報を分析した結果を伝えるものです。ファクトを料理している分だけもちろんGoogleより価値は出ています。でもよくありがちなのが、結局So Whatがない分析結果の共有となっていることが多く、つまりは計算機以上の価値は出せていない状態ということです。

3. Opinion

次の次元としては、とにかくAだからBすべきと、論拠を示しアクションを提示することです。とにかく何らかの理由が伴ったロジカルな意見にはなっている訳なのでSo whatはあります。でもありがちなのはJust ideaを連発するアイデアマンになるパターンで、なんでこの状況や目的のコンテキストでそれが出てくる?という展開に繋がりやすいです。空気が読めない"Just an opinion"は重ねる程、信頼が落ち発言力が低下していきます。
更に言うと、ベストプラクティスだと押し続ける出羽の神や美辞麗句を並べる「キレイゴト」コンサルも、相手の立場に立てていないという観点から全てJust an opinionの範疇に留まっていると言えます。

4. Advise

ここからがやっと価値ある発言になり始めるのですが、それは要はクライアントに寄り添っているかという点に尽きます。相手の状況を理解した上で「自分ならこうする」というのは、カウンターパートの目的や制限を踏まえた上での「こうだからこうすべき」になるので、聞き手にも親身になってもらえているが故の安心感や信頼感が芽生えます。
だからこそ提言をする時には「自分がもし社長であったらその意思決定ができるのか」という観点で物申さないといけないです。そうすれば自ずと実現可能性やリスクにも配慮が及んだ実のある話になりますし、よく虚業とコンサルは揶揄されますがownershipなくして一人前のコンサルになれない理由にもなります。

5. Mentor
最後は相手に悟らせるという境地であり、誰かにもらったアドバイスなんかよりも自ら気づいた真実ほど人が手放さないものはなく、実現に向けた原動力を得ます。
尊敬していた大先輩はよくこうすべきなどのべき論は振りかざさずに、的を得た質問を投げかけるばかりでした。彼曰く「答えを与えるのでなく、答えに自ずと辿り着ける手助けをすべき」ということで、本来ならばコンサルなんて使わずに成長できた方がヘルシーなのですが、自分で考えるのを放棄しコンサルを使いまくる経企やそれをいいことに骨抜きになるまで依存させるコンサルが少なくありません。共に健全な成長を遂げていくためにも、諭せる質問を投げかけられるようになるべきということです。


提言のレイヤーを一つ一つ説明しましたが、大事なことはコンサルの提供価値はクライアントを変えられたか以外の物差しでは測るべからずであり、変容を促せないとどんな大見得を切った殺し文句にもレポートの紙束にも価値はないということです。

提言のレイヤーを意識すること以外で重要なの基本としては、各会議の目的を踏まえた上での落とし所をちゃんと用意しておくことと、その上での肝となる想定問答をしておくことです。これは炎上プロジェクトの消し方にも通ずることなので、そちらに関しては他の記事で詳しくは触れることにします。

また、クライアントを動かすための筋のいい仮説の立て方も、それは他で詳述しましたのでそちらをご覧頂ければと思います。

仮説の立て方
https://note.com/jintae/n/n706d4c4639bf

最後に大事なのは心持ちであり、絶対に全ての会議で勝負することを忘れないという点です。文字通りの会議毎のイケてる度合いを定量化し備忘録をつけている先輩がいれば、毎会議クライアントに勝ち負けや良し悪しを確認しているパートナーもいました。この会議は誰々さんが決めてくれるから、と思った瞬間に勝負は決しており土俵にすら立てていない状況になるので、全ての会議で勝負することは忘れずに。

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