小説:ルビーは情熱の証し エピソード3 フィアンセ元タカラジェンヌ暁彩のルビーエタニティリング
ジェムクラフトのオーナーである浅見透は、バンコクカットのメレサイズルビーのロットは、中川亜紀にアソート作業をやらせる前に、自らアソートをやっていた。
ジェムクラフトで使うメレサイズルビーの色味や表面のファセットのキズの許容範囲は、亜紀に教えている。
さらに、今回は、メレダイヤモンドとメレルビーを交互に配列させる「Pt(プラチナ)フル(全周)エタニティリング」に使うルビーのアソートである。プラチナ、ダイヤモンドの明るさを考慮して、ルビーも明るめのものを揃える必要がある。
ジュエリーの「石合わせ」は、サイズだけ合わせればいいというような単純な作業ではない。繊細な感覚が必要なのだ。
浅見は、もうすぐ70歳になる。大学卒業とともに、数年一般の会社に勤めたあと、大阪の宝飾加工会社で一からみっちり修行を積んできている。
35歳になり、家業の継ぐために実家に帰ってきた。父親の眼の衰えがひどくなり、石留めや、磨きの技術が衰えてきたからだ。
あれから、もうすぐ35年になる。
年齢を重ねるうちに、眼の衰えは進んでいくのだが、日頃からの用心とサプリメントのおかげで、浅見は、なんとか色石のアソートは、現役でこなしている。
そんな浅見が、前もってアソートしたメレーサイズのルビー。50ピースのうち完全にリジェクション対象になるルビーは、数ピース。個人的見解の相違でボーダーラインが数ピース。
そう思っていた。
中川亜紀がソーティングの流れ作業をみて、自分の見解とそう差異はないだろう。
だいたいどんな作業も熟練になると、相手の仕草や手捌きで、相手の技量がわかるものだ。
今回のルビーとダイヤモンドのフルエタニティマリッジリングは、元タカラジェンヌの暁彩に贈るジュエリーだ。
婚約者、暁彩とジェムクラフトのスタッフの佐々木真の友人、西尾修は音楽つながりである。
元タカラジェンヌの暁彩(あかつきあや)は、現在現役ボーカリストで、豊中市でボーカルの教室の先生でもある。
かたや西尾修は、ベーシストで尼崎でギター教室をもっている。
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