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小説:ルビーは情熱の証し エピソード2 ルビーのアソート

亜紀は、ソーティングパット、宝石用スコップ、使い慣れたルーペ、ピンセット 、無蛍光色紙を東京からもってきている。

ダイヤモンドの色味をみたり、色石のアソート用デイライトは、 ジェムクラフトにある。

亜紀は、手慣れた手つきで、ユニパックから100ピースほどのメレサイズのルビーをソーティングパットに開け全体の色味をチェック。そして、ざっくりと宝石用スコップでルビーを取り、折り畳んだ無蛍光色紙の上にのっけた。

それをデイライトに近づけ、そのロットの中にあった少し暗い色のルビーをピンセットではじいて、ソーティングパットに置いた。ざっと見れば、ルビーの色調の違いがわかるらしい。

残ったルビーをパットに戻し、今度は、ピンセットで1ピースずつルビーをピックアップ。ルビーの面傷、色調、照り、カットの正確度を10倍の宝石用ルーペで瞬時に 判断し、ソーティングパットに鉛筆でA、B、Cと書いたところに、その検品済みのルビーを1ピースずつ自分の眼で判断したグループに分けてゆく。

その一連の作業を流れるようなリズムで、しかも驚くようなスピードでこなしている。

宝石の仕入れ担当の宝生ヒカルは、その作業を目を皿のようにして見ている。ダイヤモンドメレのアソートには、ヒカルは手慣れているが、亜紀のように色石のアソートをこれほど早くこなせることはできないでいる。

「ハイ、終わりました」亜紀の手はもう止まっていた。

「Aロットがダイモンドとルビー混合エタニティーに最適で、Bロットは、第二候補、Cの数ピースはリジェクション対象です」

エッ、もう終わったのか。
ジェムクラフトのスタッフ一同は、誰しもそう思った。

亜紀が「絶対色感を持つシンデレラ」と言われる由縁をその場にいた誰もがが見た気がする。

それにしても、手慣れた、鮮やかなアソート作業だ。

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