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ステージフライト
暗転しているステージ袖で、今日のSEにしたソニック・ユースが流れるのを聞くと、テレキャスを握った俺は先にステージへと駆け出す。
今日の客入りはそこそこだな。後ろが少し空いてる。
そんなのこんなライブハウスの暗がりでもわかるさ。
マイクスタンド足元のオーバードライブを踏みつけると、一瞬後ろのギターアンプからノイズが鳴る。
Aメジャー7thから始まるこの曲を、でかいボリュームでかき鳴らすと、他のメンバーがステージへと入ってくる。
そしてステージは明転。
さぁお前ら、好きなだけ音を出しな。
それなりの拍手と歓声をもらったからな。
客席には見慣れた顔もあるようだ。だけどもう今日はいいじゃねえか。好きなだけ音で騒ごうぜ。
振り返るとへたくそにドラムスティックを回しながら、スネアを叩きつける腕っぷしが見える。
ピンスポが眩しくてもちゃんと目あけて叩けよ。
右を見ればいつも通りうつむいてベースを刻む右腕が見える。
だいぶ上手くなったな、始めた時はど素人だったけど。
左を見れば買ったばかりのレスポールを見せつけながら、俺より前に出て客席を煽る右腕が見える。
まだイントロなのにヴォーカルより目立とうとすんじゃねぇよ。
この曲のイントロはな、ずいぶん作り込んで何度も練習したさ。
さぁお前ら騒げ。これから歌ってやるから。
こんばんわ神明です。
ちょっと恥ずかしくなるくらい青臭いバンドの出番だったようですな。
いよいよライブハウスも新基準に沿って営業を再開し始めましたが、しばらくはこんな雰囲気のライブはお預けなのかなと思う次第です。
だけども、ライブハウスを主戦場にしているすべてのバンドとアイドルとシンガーとプレイヤー、そしてライブハウスに通ったすべてのお客さんに敬意を表して。
フィクションとノンフィクションを混ぜたやつを。