キャリアコンサルタント資格勉強〜Vol.8「包括的(折衷的)アプローチ2/3」

カウンセリング理論において分類される4つのアプローチ
・感情的アプローチ
・認知的アプローチ
・行動的アプローチ
・包括的(折衷的)アプローチ
これらの内、包括的(折衷的)アプローチについてまとめていきます。

※感情的アプローチ〜行動的アプローチを組み合わせ、良いとこどりをしたアプローチ方法。

今回は「1.発達理論」「2.家族療法」「3.ナラティブ・セラピー」「4.実存療法」についてまとめていきます。

1.発達理論(=生涯発達)

■理論的背景
1952年に発足したアメリカ職業指導学会により、カウンセリングと発達を関連づけようという動きがはじまった。

カウンセリング心理学は「健常者の生涯にわたる発達援助にかかわる専門分野である」とみなされる。
※ここでいう「健常者」という定義についてはいまでも議論されている。

カウンセリングでは人の発達を援助し健康(身体的・精神的・社会的に適応出来ている状態)を促進するものであるという理念に基づき発達理論をクライエント理解や援助の介入に活用する。

※言葉の定義
成長=量的な変化
発達=機能の高度化

■主な概念や技法
1.ピアジェの発達理論
①認知発達論
思考・認知の発達を質的に高次なものへと発達する4つの段階にまとめた。

・感覚運動期(生後〜2歳)
 感覚と運動とを共応させることを覚える。
 外界の存在を知り、外界と意識的に関わり始める。
 物の永続性の理解
・前操作期(2歳〜7歳)
 表象機能がより発達。ごっこ遊びや延滞模倣が盛んに見られる。
 しかし現実と自分の思考内容を混同することがある。
 自己中心性。
・具体的操作期(7歳〜11歳)
 具体的で目に見える物事について論理的に操作できる。
 現実にない物にはできない。
 保存の概念の獲得。
 脱中心化。
・形式的操作期(11歳〜15歳)
 仮想の問題や事実に反する事態や想定などについても論理的に思考できる。
 仮説演繹的思考。

②同化と調節
 同化=認識や行動を新しい対象物に対して一般化すること。
 調節=認識や行動の変更を行うこと。
 シェマ=認知の枠組みのこと。
 均衡化=同化と調節を相補的に作用させ繰り返すことで、より適応的なシェマを発達させること。

③ピアジェの発達理論とカウンセリング
・アイビイはピアジェの発達理論を援用した発達心理療法を提唱。
・ピアジェの定義した②と異なる言葉の定義
 均衡化=まだ自分の考えを変えようともしていない状態
 同化=自分の視点で物事を見ている状態
 調節→同化=カウンセラーによる受容により、今までとは違う視点で物事を見ようという気になる状態
 新たな均衡化=新たな自分を発見できるかも知れない可能性が生まれる

2.エリクソンの発達理論「ぜん成的発達理論」
・生涯発達と8つの発達段階
 エリクソンは発達理論の中で生涯発達を論じた。
 人の生涯発達の中で8つの発達段階を想定し、心理社会的発達のざん成説を提唱。

 人は歴年的(年齢)な発達において、発達の危機に遭遇し、その危機を克服して発達課題を達成していく。発達課題を生涯にわたって達成していくためには、危機と克服の繰り返しが必要だとした。

・エリクソンの発達段階
 発達段階 年齢   発達課題vs危機
1.乳児期   0-2歳 信頼感vs不信
2.幼児期前期 2-4歳 自律感vs恥・疑惑
3.幼児期後期 5-7歳 自発性vs罪悪感
4.児童期   8-12歳 勤勉性vs劣等感
5.青年期   13-22歳 同一性vs同一性拡散
6.成人期前期 23-34歳 親密性vs孤立・孤独
7.成人期後期 35-60歳 世代性(生殖性)vs停滞
8.老年期   61歳以上 総合感vs絶望

特に同一性についてはアイデンティティ、つまり「自分とは何者か?」と定義され、乳児期〜児童期の課題が解決されているかに影響される。
自分とは何者かが分からず「自分探し」することを「モラトリアム」と呼ぶ。

発達課題の達成が出来ていないとそれ以降の発達段階に影響が出る為、カウンセラーがクライエントの理解や介入、カウンセリングの実践を行うのに有用。

3.レヴィンソンの発達理論「生活構造的発達理論・成人発達理論」
レヴィンソンは青年期以降の成人には年齢と生活構造にともなう特徴的な発達期があることを分析し5つの発達段階があるとした。
※「中年の危機」を指摘し、有名になった。

①大人の世界へ入る時期
②一家を構える時期
③中年に入る時期
④中年の最盛期
⑤老年期

これらは四季のように平面的に移ろい変化していく、ひとつの発達期から次の発達期へ移る際「過渡期」が必ず訪れ、それらの安定期と不安定期における発達課題をクリアしていくことが価値ある人生を実現していく上で重要とした。

特に③の後に訪れる人生半ばの過渡期が最重要とし、中年の危機を指摘した。

4.ハヴィガースト
発達段階に対応すら発達課題の概念を提唱した。
発達課題とは発達の各段階において解決すべき心理・社会的課題のことでありそれぞれ一定の時期に完了しなければならないとした。
適切な時期の課題達成が出来ないと、その後の発達課題の達成に問題が生じるとした。

2.家族療法(システムズアプローチ)
■理論的背景
1950年代半ば、アメリカで生まれた家族全体。援助対象とした心理療法。
開発時は家族療法と呼ばれたが「システムズアプローチ」と呼ばれるようになった。
「家族を集めて行う心理療法」というより「家族関係あるいは人間がつくる関係性の変化(職場など)にかかわる心理療法」という考えを強調しようとする考え方から。

家族システム論はベルタランフィの一般システム論からきた考えで、精神力動的視点から、家族をひとまとまりのシステムととらえる発想。

個人を集団の一部と捉えることで、問題の原因を個人に還元するのではなく家族(システム)の相互作用の関係性の中に存在すると考える。

■主な概念や技法
問題や症状は「関係の問題」であり、最も負担を感じた人や被害を受けた人が症状としてSOSを表現したと見なす。
この人をIdentical Patient=たまたま患者とされた人、略してIPと呼ぶ。
IPに責任をおしつけるのではなく全体の問題としてシステム不具合の解決を図る。

家族をシステムとして理解するため、システムの境界と階層、循環的・円環的因果律、家族システムの発達と変化をとらえる必要がある。

・境界と階層
家族の中には個人の境界があり個人は家族のサブシステム、家族はより上位のコミュニティ(自治体など)のサブシステムという階層を作り、相互に関わり合っている。

・循環的・円環的因果律
物事を相互影響の中で捉えるシステム論は原因→結果であるため、問題の原因を追求する直接的因果論でなく、問題は周囲との影響し合う関係から起きているとみる循環的因果論。

3.ナラティブ・セラピー
■理論的背景
家族療法を起源とし1980年代後半から複数の国で実践された心理療法の総称。
アメリカのアンダーソンらのグループ、ニュージーランドのホワイトとエプストンらのグループが代表的。

ナラティブ=語るという意味で「語りの中にその人らしさが現れる」と考える。

ナラティブ・セラピーは語りによって構成される現実(その人が見ている世界)や語りがもたらす意味を重要視し、クライエントが置かれている文化社会的なコンテクストを明らかにしようとするもの。

新たな語りを生むことが新たな自己を構成することに通じるととらえる。

■主な概念や技法
ナラティブ・セラピーではカウンセラーとクライエントとの会話を問題解決の手段と必ずしも考えず、会話プロセスそのものを治療と考える。
問題の浸透しているストーリー(ドミナント・ストーリー)とはことなった、それに代わるストーリー(オルタナティブ・ストーリー)をクライエントと治療者が協働しながら構築していくことに主眼をおく。

アンダーソンがカウンセラーに勧めた態度が「無知の知」。
クライエントこそが自分自身の問題についての専門家であることを認め、カウンセラーの専門知識や先入観を捨て置き、「何も知らない」という立場に意図的に立つことでクライエントの語りを尊重し、会話を促進する。

その過程を促進するために、カウンセラーは循環的な質問、再帰的な質問(特に意味を問う)、会話的な質問などを積極的に用いる。

4.実存療法
■理論的背景
哲学に基づいた心理療法。
「あらゆる存在の中で自分の存在意義を問うのは人間だけである」という考えが基盤。

19世期半ばから後半にかけてのキルケゴール、ニーチェらをはじめ、ドイツのハイデッガー、ヤスパース、フランスのサルトル、マルセルらに代表される「人間の実存」、人間特有の存在の仕方を中心的関心とする「実存主義」思想の影響を受けている。

「開かれた世界への志向性や自己執着からの解放」などが共通原理。

分析対象は個人内の力動ではなく、人間存在のあり方、個人の生きる意味や責任などのより高次な精神活動とする。

■主な概念や技法
実存療法では個人を固有な存在として尊重し、「意味」の追求を重視。意味を見つけて自らの意志で生きることを選択していく自由があると考える。
直面化や解釈をはじめ、意味や価値を探究するための働きかけ(問いかけ)が技法として用いられる。

備考
「ロゴテラピー」を創始したフランクルは、フロイトの「快楽への意志」やアドラーの「権力への意志」が満たされても「意味への意志」が満たされない限り真に満足することはないとした。
人間はいかなる困難や苦悩の中でも意志の自由を持つと唱えた。

ヤーロムは実存療法を「人間の心の奥にある内的な葛藤は、与えられた存在性に対して個々人が直面した時に生じるという信念に作用する、治療の哲学的方法である」と定義した。
(↑これはよくわからん…)

■学びや考察、感想
家族療法は人事時代に出会っていれば組織づくりをもっとより良く出来た気がする…組織における個人の問題を個人の責任とする上役がいたので、結果的に残念な別れ方になってしまうケースが多かったので…

それよりも…

ナラティブ・セラピーこそ、これまで自分がやってきた面談や面接の概念に近しい!「やっと見つけた!」という気持ち、嬉しい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?