キャリアコンサルタント資格勉強〜Vol.3「感情的アプローチ」

カウンセリング理論において分類される4つのアプローチ
・感情的アプローチ
・認知的アプローチ
・行動的アプローチ
・包括的(折衷的)アプローチ

これらの内、今回は感情的アプローチについてまとめます。

【感情的アプローチ】
クライエントが目的達成したり自己実現することを援助する過程で、感情の果たす役割を重視する。

1.来談者中心療法
・理論的背景
 ロジャーズ(1902-1987)は「来談者中心療法」を発表。
 クライエントの自己成長の力を信じその力と決断力を中心に進めるという内容。

 「人間は本来、自己成長力を内に秘めており自分の問題については自分が最も知っている。問題解決およびどう生きていくのかを自分の中で育んでいる」という考え。

クライエントの内的リアリティ、体験の中における現実性を大切にすることでしか治療はなりたたないとした。

・主な概念
自己概念=成長過程で持つ自己イメージ
     自分の事を理解している幅と深さ
    =ロジャーズ曰く「内的準拠枠」

→人は自分の事を理解している幅と深さでしか、人を理解できない

自己概念は「理想の自己」と「現実の自己」から成る。
現実の自己を理想の自己へ近づける努力と、一方で理想の自己を現実の自己へ引き下げる諦めとを繰り返すことで「自己一致」させていく。

自己概念に対する新たな経験が自己概念と離れていると「心理的不適応」となり不安定な感情を抱く。

自己概念に対する新たな経験が自己概念と近ければ「心理的適応」となり安定した感情を抱ける。

※カウンセラーに求められること
・無条件の肯定的関心
・共感的理解(共感)
・カウンセラーの自己一致
→共感的であって同感的ではないことが大切。
 同感はカウンセラーの内的準拠枠でクライエントの感情を捉える事。
 共感はクライエントの内的準拠枠に出来る限り即し、クライエントの感情を捉える事。

2.精神分析的カウンセリング
・理論的背景
フロイト(ウィーン、医者、1856-1939)によって精神分析は創始された。人間の心理的援助理論として開発され今日まで強く影響を残す。

人間観としては、
「人は自分の知らない自分、つまり無意識に動かされている」「人間は本能の塊である」とみなし、「人のエネルギーすべては本能部分が源。自由奔放な本能や欲求エネルギーをいかにコントロールし人間にふさわしい理性や良心を培っていく過程が発達である」
というもの。

心理的不適応は無意識下に抑圧されているものが引き起こしている。無意識を意識化しそれを受け入れていくことが治療。自由連想を通して問題要素を深掘り、無意識を多く意識化し洞察を深めると問題は解決するという考え。

・主な概念
1.構造論と力動論
人間の心は「エス(衝動的な本能エネルギー)」「自我(現実認識の力)」「超自我(理想的な良心)」から成る。

人間は「エス」全開で生まれる。
生きていく中でルール付け、規範を受け止め現実を認識していく(=自我)。
(エスでは寝たいが自我では寝てはいけない、など)
エスと自我を橋渡しする役割が「超自我」。
(寝れないためにガムを噛もう、など)

2.局所論
心は「意識」「前意識」「無意識」の3層から成る。
「無意識」とは抑圧されたものからなる領域。
これは意識していると不快なので意識から締め出されたもの。
※例えば子供の頃に受けた暴力など「意識していると心が壊れてしまう経験」を忘れてしまう、など。
本人の努力だけで意識に上らせるのは困難なので精神分析で意識化し、扱う。

「前意識」は「無意識化」に抑圧したことが夢などに現れてくる領域。

3.心理性的発達論
・フロイトは心(自我)の発達を性的エネルギー(リビドー・生きる力)の出現や充足のあり方によって5段階(口唇期・肛門期・男根期・潜伏期・性器期)に分類。
・5段階それぞれにおいて不満足や過剰がおきるとリビドーの固着が生じ、精神・性発達がその段階で止まり性格傾向に影響を与えると唱えた。
・心理的不適応や思考・行動上のこだわりが口唇期や男根期などに由来することもある。また、固着があっても発達段階を進むが欲求挫折が生じると退行することもある。

4.防衛機制
意識として受け入れ困難なことに直面すると自我が「意識に受け入れやすい形で処理する」という心の働きとして防衛機制がある。

◇種類
抑圧…認められない欲求、苦痛な感情などを無意識の層に押し込める。
否認…出来事の全体や一部を拒否、なかったことにする。
反動形成…認められない欲求、苦痛な感情などを抑圧し、反対の行動を取る。
置き換え…本当の欲求を抑圧し、入手可能な欲求を満足させることで充足する。
合理化…満たされなかった欲求に対しもっともらしい説明をつけることで認めがたい現実から目を逸らす。
同一化…大切な人の特徴の全てや一部を取り込んだり同じものとして振る舞う。
補償…劣等感を感じる部分がある場合、ほかの部分を優位にしたり優位に立つことで劣等感を埋める。
知性化…感情や欲求、葛藤などを意識化して解放するのではなく、知識を集めたり抽象化する知的態度をとる。
抑圧…認められない欲求、苦痛な感情などを「意識的に」意識の外においやる。
愛他主義…自分では満たせない欲求を他者が満たすために献身的に尽くす。
ユーモア…認められない欲求、苦痛な感情などを笑い飛ばすことで発散・解放する。
昇華…社会的に認められない欲求、満たされなかった欲求を社会的価値のある行動へ転じたりより高い目標達成で満たす。
予期…将来生じる不快な感情を現実的に予期し、対処するための計画を立てる。

◇精神分析療法
1.自由連想法
 カウチに横たわり思い浮かぶ言葉全てを語ってもらう。

2.夢の分析
 フロイトによる「夢」とは「無意識が抑圧され変形され加工されたもの」。夢に現れたものを自由連想で紐解き潜在的思考を明らかにする。

3.介入と解釈
 明確化(内容を明確にする)し、直面化(クライエントの無意識の重要な問題を直視するよう促し、現実と称号する)する。

4.抵抗の分析
 「抵抗」とは、クライエントの無意識が現れそうになると、それに蓋をするような思考パターンや行動が生じること。
 この「抵抗」を分析することで防衛や無意識的過程を明らかにする。

5.転移の分析と逆転移
 「転移」とは、クライエントにとって重要な誰かに抱いてきた感情をカウンセラーに向けること。
 「逆転移」とは、カウンセラーの個人的葛藤に由来するクライエントへの感情。

◇(備考)フロイトからの分派
1.個人心理学(アドラー、1870-1937)
 フロイトは性を重視したことに対しアドラーは個人の主体性を重視した。
 「人間は自己の劣等感を補償しようという力への意志を持つ」と主張。治療は「勇気づけ」など劣等感を和らげる働きを中心とする。

2.分析心理学(ユング、1875-1960)
 治療は夢分析を重視。ユングは夢を「自我への補償」と定義した。

3.自我心理学(アンナ※フロイトの娘、1895-1982)
 発達論的解明、子供やクライエントの外的環境調整を重視。

4.クライン学派(クライン、1882-1960)
 クラインは遊戯療法の創始者の1人。
 子どもの精神分析をめぐりフロイトと激しく議論。
 原始的防衛機制を解明。

5.対象関係論
自我と対象の関係のあり方の特徴に着目、人間の精神現象を理解しようとする立場。

6.ブリル
 職業選択に対して快楽主義・現実原則を適用し、昇華の概念を使って説明した。

7.ボーディン
乳幼児期における欲求への対応タイプが青年期以降の職業選択行動と対応しているとした。

■学び、考察、感想
「人は自分の事を理解した幅と深さでしか他人を理解できない」つまり「自分のものさしで他者を測ろうとする」ものだと知っておくことが大切。

カウンセリングの中でいかに「クライエントが見ている世界」を見ることが出来るかが重要である一方、クライエントの解釈や感情に引きずり込まれず、一定の客観性を保つことも重要。

「クライエントの見ている世界」に基づく事実と解釈、環境や精神状態を現状把握することがカウンセリングとコンサルティングの起点になると感じた。

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