#1 人事担当者のひとりごと
4月1日。
急に温かくなったり寒くなったりした気候に驚いたのか、
桜はまだ五分咲き程度なのに、青葉が顔を出している。
花の部分だけを見るときれいな桜の花も、
つぼみと、満開の花と、青葉が共存する樹としての姿は
その異様さ、不自然さに何とも言えない不快感をおぼえざるを得なかった。
…4月1日。
多くの会社が入社式をやっている。僕の会社も例外ではない。
大手ホテルの宴会場をいくつも借りて、何百人の新入社員を迎え入れる。
僕の仕事は人事担当。
自分が採用担当として関わったメンバーが入社を迎える。
苦手な懇親会も、この日ばかりはこちらから話しかけなくとも、
いろいろな人が「その節はありがとうございました」と声をかけてくれ、
穏やかに対応していればあっという間に2時間が過ぎ去る。
いつもの地下鉄に、いつになく多いリクルートスーツに身を包んだ若者たち。
新入社員か、就活生か…それさえも、よくわからない。
僕は休暇を取って、2時間ほど離れた美術館に向かった。
彼はうちの会社に来ない方がしあわせなのではないか。
転職をしても、報酬が下がるだけで、
望んでいるようなキャリアを描くのは難しいんじゃないか…
今年もまた、内心そんな風に思いながら、
口説いた候補者たちが入社をしている。
彼らは僕の会社のメンバーに足りない「スキル」を持っているから、
そこに個人的な想いを挟むことはできない。
僕の仕事は、採用担当だから。
きっと彼らは何にも感じていないのに、
彼らがまだ何も感じていないくらい希望に満ちているからこそ、
僕は勝手に罪悪感のようなものを感じてしまって、
入社式がある4月1日、僕はお休みをもらった。
大規模な入社式を賄うには補って余りあるほどのメンバーがいる。
採用担当の僕は入社式担当ではないし、
休みを取ったところで何の影響もない。
人事をやっているうえで口にできない個人的な想いや、
2chやみん就を見て一喜一憂してしまう人事のあることないことを
気が向いたときに少しずつ、つぶやいていこうと思う。