読書記録|関岡英之『国家の存亡』
読了日:2023年3月18日
2004年に発売された、同著による『拒否できない日本』から7年後の2011年に、この『国家の存亡』が書き上げられた。
著者の関岡英之氏は、それから8年後の2019年に虚血性心不全でこの世を去っている。
本書の中では、2001年から2008年まで毎年日米両政府間で交換されていた、「年次改革要望書」と「日米経済調和対話」の検証、そしてTPPにおける問題点について取り扱う。
「年次改革要望書」は、アメリカ政府が日米両国の経済発展のため、日本に対して改善が必要と考える部分の規制や制度の問題点についてまとめた文書である。
とは言うものの、実態はというとアメリカ政府が自国の利益のため、日本を都合よく”改良”するための押し付けのような内容であった。
「日米経済調和対話」は、2011年3月にアメリカ政府が日本国政府に対して、規制緩和などの改善を求めた要望事項をまとめたものであるが、これが「年次改革要望書」にある内容と酷似する。
例えば、医療では医薬品の承認機関の短縮、薬事法の改定、外資の参入拡大などで、農業・食品に関しては、食品添加物の承認手続の簡素化、日本の厳しい残留農薬基準の緩和、新たな農薬の使用促進など。
その他の項目は通信、保険、知的財産権などで、全部で10分野にわたる。
つまり、「日米経済調和対話」とは、「年次改革要望書」が名前を変えて蘇っただけ。
内政干渉とも言えるような要望を、アメリカ政府が日本に突きつけている。
特に医療と農業・食は、生きることに欠かせない分野だ。
しかし、断れない日本はそれを受け入れ、日本の生命線をアメリカに握らせた。握らせただけではなく、現状を見ても分かるとおり、日本はアメリカから搾取される国となってしまった。完全に属国である。
私たちは今後、どうやってこの日本を日本のまま保てばいいのか、そのあたりをしっかり考えて自立の道を模索する時だと思う。もう手遅れかもしれないが…
『国家の存亡』は、事前に『拒否できない日本』を読んでいると内容を把握しやすいが、この2冊は現在は絶版となっていて、中古で探さなければ入手できない。
『拒否できない日本』が刊行された直後、Amazonでの取り扱いがなくなり、「アメリカや日本政府(当時は小泉内閣)にとって不都合があるから売らないのでは」という噂が巻き起こったという。
更にその後に刊行された『国家の存亡』も、発売1ヶ月ほどでAmazonでは取扱停止状態に。(他の本屋では購入できていた様子)
そして現在は再販すらされていない。
真相は不明だが、本の内容を読むにつけ、噂も強ちただの噂ではないのかもしれないと感じてしまう…
関岡英之氏が今この世にいないことが悔やまれる。
存命であれば、”新型コロナウイルス騒動”について検証をしてくれたに違いない。