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新規事業と新機能開発を成功に導く!選民性が鍵の顧客フィードバックコミュニティ
こんにちは! かけだしコミュニティアシスタントの若林です。
これまで、JINEN株式会社のコミュニティディレクターである藤田に何度かインタビューする中で、企業のマーケティング活動におけるコミュニティには、大きく分けて「顧客のエンゲージメントを高めるためのコミュニティ」と、「顧客からフィードバックをもらうためのコミュニティ」の2種類があるという話がありました。
とくに後者の、顧客からフィードバックをもらうためのコミュニティでは、得られたフィードバックを活用して新規事業の開発や新機能の開発に役立てることができるとのことです。
そこで今回は、「実際にどのような設計や運営を行うべきか」「本当にそのようなコミュニティをつくるメリットがあるのか」といった点について、さらに掘り下げていきます!
*企業のマーケティング活動におけるコミュニティの分類についてはこちらの記事をご覧ください。
「企業が顧客からフィードバックをもらうためのコミュニティ」とは?
若林:まず、イメージを湧きやすくするために、「企業が顧客からフィードバックをもらうためのコミュニティ」とは、具体的にどのようなものなのか、具体例があれば教えていただけますか?
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藤田:食品メーカーでは、「顧客からフィードバックをもらうコミュニティ」を活用しているケースがよく見られます。たとえば、ヤッホーブルーイングなどが有名な事例ですね。
この会社では、多くのファンを集めて地域を盛り上げるためにお祭りを開催したり、ビールをさらにおいしくするためにどうすればいいかを一緒に考えるワークショップを行ったりしています。その中で、「このビール、どう思いますか?」といったかたちで率直な意見を募り、「このデザイン、『よなよなエール』らしくないですね」といったフィードバックを受けることができます。
ほかの大企業でも、このような取り組みが行われているケースが見られますね。
「選民」の重要性
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若林:コミュニティから良いフィードバックをもらうために、何か工夫すべきことはありますか?
藤田:フィードバックの質を高めるというよりも、「誰からフィードバックを受け取るか」が非常に重要です。企業への思い入れの強さが、フィードバックの質を大きく左右するからです。
現実には、ただ不満をぶつけるためだけに意見を言う人もいます。たとえば、KIRINに対して「もっとアサヒビールっぽくしたほうが良い」といったフィードバックをする人がいるかもしれません。しかし、それではKIRINらしさが失われてしまいますよね。KIRINらしさとは何か、他社との違いは何か、そのブランドがなぜ愛されているのかを深く理解している人からのフィードバックでなければ、ブランドの方向性を見誤る可能性があります。それが結果的に事業の衰退につながるリスクもあります。
若林:良くないフィードバックに引きずられて進むべき方向性を見誤るのは怖いですね……。フィードバックを活かして競争優位性を高めるためには、コミュニティに入る人をしっかり選ぶ必要がある、ということですね!
藤田:その通りです! フィードバックを言う資格があるか、つまりコミュニティへの貢献意識や社会的意義を考えているかどうかをしっかり審査し、適切な人を選ぶことが大事です。
また、コミュニティ自体が何を目指しているのか、その目的が明確であることも非常に重要です。目的に合った適切な人を迎え入れることで、質の高いフィードバックを得やすくなり、迅速にPDCAを回すことが可能になります。その結果、競争優位性を高めることができると考えています。
若林:コミュニティの目標を明確にし、適切なメンバーを選ぶことが鍵なんですね。お話を伺う前は、SNS上でコミュニティを作り、そこで意見を集めるようなイメージを持っていたのですが、SNSはあまり適さないということでしょうか?
藤田:その通りです。とくに新規事業や新機能の開発においては、SNSを活用することが逆効果になる場合があります。誰でも参加できるオープンな形態だと、どうしてもコミュニティの質が下がりやすいのです。もし「良質なフィードバックを得ること」が目的であれば、SNSの活用はあまり推奨できません。
一方で、ファンのエンゲージメントを高めることが目的であれば、SNSの活用は有効です。しかし、サービス力を向上させるために新規事業を立ち上げたり新機能を開発したりする場合には、特定の目的に特化した、明確にターゲットを絞ったファンを集めるクローズド型のコミュニティを作る方が効果的です。クローズド型であれば、スピード感も出ますし、より質の高い意見を集めやすくなります。
コミュニティメンバーはもはや社員!?
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若林: 「顧客からフィードバックをもらうためのコミュニティ」をつくるにあたって、ほかに注意すべき点はありますか?
藤田: 「社会を良くしていくこと」や「目標達成」を目的にしたコミュニティ設計も重要です。
ファンマーケティングの文脈だと、つい「現実逃避」的なコミュニティに偏りがちなんですよね。つまり、交流や親睦を目的としたものです。もちろん、そうした「第三の居場所」を提供することにも意義があります。
ただし、新規事業や新機能の開発となると、そういった「親睦重視」のアプローチでは、適切なフィードバックが得られない恐れがあります。むしろ、自分の承認欲求を満たすためだけに意見を言う場になってしまうこともありるんです。
そこで、企業の社会的ミッションや目標に共感する人を選び、コミュニティを設計することが重要です。
若林: なんだか、もはや社員のような立ち位置ですね!
藤田: そうですね! どちらかというと「中の人」に近い存在ですね。ただの参加者ではなく、一緒に何かを企画する仲間のような位置付けです。たとえば、一緒にイベントやお祭りを企画する実行メンバーとして巻き込むことが重要です。
若林: 運営メンバーになってもらうということですか?
藤田: そうです。コミュニティメンバーに対して思いを伝え、共感してもらいながら提案を引き出し、「中の人」として参加してもらうかたちですね。こうすることで、採用活動にも繋がっていきます。
若林: コミュニティから採用に繋がるなんて、とても素敵ですね!
藤田: はい。新規事業や新機能開発という文脈では、ただサービスを使ってもらうだけよりも、長く愛用してくれているコアなファンを採用するほうが圧倒的に有益です。もとからファンだった社員のほうが、まだそのサービスをよく知らない社員よりも優れた成果を生むことは明らかですよね。
新規事業や新機能開発に直結するだけでなく、採用や会社全体の価値においても良い流れを作れると思います。
メンバーとの適切なコミュニケーション方法は?
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若林:コミュニティメンバーとの適切なコミュニケーションの取り方について教えてください! たとえば、話す頻度や、大勢で話すべきか、それとも1対1が良いのかなど、アドバイスをいただけると嬉しいです。
藤田:とても良い質問ですね。コミュニケーションの取り方は少し難しいポイントですよね。
コミュニティメンバーとのやり取りには、私が作った言葉ですが、「マスコミュニケーション」「グループコミュニケーション」「1on1コミュニケーション」の3つのスタイルがあります。
1つ目の「マスコミュニケーション」は、コミュニティ全体に向けたものです。たとえば、「私たちの事業はこういう方針で進めます」といった方向性を共有する場ですね。ニュースやメディアのような感覚で、全体に向けて当たり障りのない内容を伝えることが重要です。また、特定の個人を批判しているように受け取られないように注意しながら、コミュニティ全体を俯瞰して管理する役割を担います。このタイプのコミュニケーションは、月に1回程度で十分だと思います。
2つ目の「グループコミュニケーション」は、イベント単位やコアメンバー、運営メンバーとのやり取りを指します。イベントに参加する人や運営に関わる人たちは、共通の目標を持っていることが多いですよね。そのため、この目標を達成するために、どうコミュニケーションを進めるかが鍵になります。頻度としては、月に2回くらい行うのが良いのではないでしょうか。
最後の「1on1コミュニケーション」は、1対1でのやり取りです。グループでは話しにくい内容や、個人の本音を引き出す場となります。「グループではああ言ったけれど、実はこう思っています」といった意見が出てくることもありますよね。こういった意見をしっかり拾うことは重要です。ただし、これを頻繁にやると負担が大きくなるので、とくにコアメンバーに対しては、3か月に1回くらいの頻度で行うのが現実的だと思います。
若林:ありがとうございます! とてもよく分かりました。この3つをバランス良く使いこなすのが大切なのですね。
アンケートでもインタビューでも補えない。コミュニティならではのメリット
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若林:アンケートや口コミなど、ほかにも顧客の意見を知る機会はあると思いますが、コミュニティからのフィードバックだからこそ実現できることはありますか?
藤田:コミュニティの場合、「選民されている」という点が本当に重要なんです。アンケートでは、いろんな声が自由に集まってくるため、どうしてもノイズが多くなりがちです。でも、コミュニティでは信頼関係が構築されているため、ノイズが少なく、適切なフィードバックを得やすいという特徴があります。
ネガティブな意見を集めるのは、信頼関係がなければ難しいものです。一般的なアンケートでは「良かった」とか「満足しました」といったポジティブな回答が多くなりがちです。一方で、コミュニティ内でワークショップを開催すると、「ここはもっとこうしたほうがいい」といった具体的な改善案が出やすくなります。心理的安全性が高い状態で課題解決に向けたディスカッションができる点が、大きなポイントですね。
それから、一般的なインタビューとコミュニティの違いもあります。インタビューは基本的に1対1で行いますが、コミュニティでは複数人でディスカッションが可能です。その場で意見を出し合うことで、新しいアイデアが生まれることも多いんです。
これは「弁証法」と呼ばれるもので、正しいものと正反対のものを組み合わせることで、新たな価値を生み出す手法です。このようなプロセスが、コミュニティではとくに実現しやすいんです。
若林:たしかに! コミュニティならではの強みですね。
藤田:そうですね。アンケートや1対1のインタビューでは難しいことでも、複数人が集まる場でのディスカッションを通じて可能になる。それがコミュニティの強みだと思います。
若林:最後に、藤田さんから読者の方にメッセージをお願いいたします!
藤田:コミュニティは、新規事業をつくったり新機能を開発したりする上で、絶対にあった方が良いものです。ですので、ぜひ作ることを検討してみてください!
ただし、そのコミュニティには「選民性」をしっかり持たせる必要があります。選民性がないと、コミュニティが本来の目的から外れてしまう恐れがあるからです。
また、コミュニティマネージャーについても、適切に評価し能力のある人を選ぶべきですし、それに見合った報酬をしっかりと支払うことも大切です。
こうした点を踏まえて、より効果的で成果のあるコミュニティをつくっていただきたいです!