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コミュニティを安定運用するには?立ち上げから成長まで時系列で解説

こんにちは! かけだしコミュニティアシスタントの若林です。

今回は、JINEN株式会社のコミュニティディレクター藤田に、コミュニティを安定運用するために気を付けるべきポイントを、立ち上げ期から順を追って聞いていきます。

「コミュニティがあまり盛り上がらないな…」「コミュニティが長続きするか不安…」

こんな悩みを抱えているコミュニティ担当者のみなさんは、ぜひ最後まで読んでみてください!


設計図なしにコミュニティはつくれない

若林:今回は、「コミュニティを安定運用するために大切なこと」というテーマで、コミュニティの立ち上げ期から時系列に沿ってお話を伺っていきます。まず、コミュニティを立ち上げたばかりの段階で、とくに心がけるべきことについてお聞きしたいです。

藤田:コミュニティを立ち上げたばかりのときは、「設計」が非常に大事です。

ビルなどの建物をイメージしてもらうと分かりやすいと思うのですが、50階建てのビルを設計図なしで建設したら、安定するはずがないですよね。たとえば、地震に強い建物を作るためには、地盤の状態などを考慮して設計すると思います。

コミュニティも同じで、安定運用をするためには初期の設計が重要なんです。どういうゴールを目指すのか、どんな人が参加するのか、そしてその先にどのようなコンテンツを作るのかという「ゴールから逆算した設計」が非常に大切です。

建築に例えると、大きなホールを作りたいのか、タワーマンションを作りたいのか、あるいは低層のマンションを作りたいのかによって、使用する機材や準備する材料がすべて異なるように、コミュニティでも目的に応じた設計が必要です。

新規事業を立ち上げることが目的のコミュニティであれば、その目的に合ったメンバー、つまり新規事業を生み出せるような人たちを集めるべきです。逆に、みんなで楽しく交流することが目的のコミュニティであれば、新規事業に積極的な人を入れても意味がありません。

コミュニティに課題解決や目標達成を求めるのか、それとも交流を重視するのかによって、大きく変わってくるんです。たとえば、サークルに部活動並みの意欲を持った人を入れても合わないですし、逆に部活動にサークル感覚の人を入れても良い結果にはなりません。それと同じですね。

若林:コミュニティを大きく分類するとすれば、課題解決を目的としたコミュニティか、交流を目的としたコミュニティの2つに分かれるということですね。

藤田:そうですね。この軸で分けると、どのようなコンテンツが大切になるかも自然と見えてきます。課題解決が目的であればワークショップのようなものが重要になりますし、交流が目的の場合は、おいしい食事のある飲み会のような場が大事になります。目的によって、コンテンツに求められる価値も全く違ってくるんです。

メンバーを巻き込む鍵「役割実感」とは

若林:設計をしたうえで、最初のメンバーたちをコミュニティに積極的に巻き込んでいくにはどうしたら良いのでしょうか?

藤田:そうですね、そのお話をするために、まずはコミュニティに何が求められているかについてお話できればと思います。

コミュニティには大きく2つの価値があります。1つは、コミュニティの中でありのままの自分が受け入れられているという「存在肯定」。もう1つは、ありのままの自分や自分の持っている個性を生かして得られる「役割実感」です。

この「存在肯定」と「役割実感」の2つのうち、巻き込むという観点では「役割実感」が非常に重要になってきます。ただ、「役割実感」を感じさせるのは難しい部分もありますが、その前提として「存在肯定」がないと「役割実感」は成り立ちません。

たとえば、私はトイレ掃除が嫌いだと仮定します。それなのにトイレ掃除をやらされると、役割実感を得るどころか「なぜ私がやらなければならないんだ」と、むしろマイナスの感情を抱いてしまうと思います。一方、私はトイレ掃除が好きで、「あなたはトイレ掃除が得意だよね。今、トイレ掃除をする人がいなくて困っているからぜひお願いしたい」と存在肯定されたうえでトイレ掃除を任されたら、しっかりと役割実感を得ることができます。これが大前提です。

若林:得意なことや好きなことを生かして、取り組めることが大切なんですね。

藤田:まさにその通りです! 役割を与える際には、金銭を伴わせた方が良いのではないかという意見もあります。お金を得るということは、自分が貢献したことに対する報酬を受け取るということなので、その意見ももっともです。

しかし、大きな報酬があると責任が伴ってしまいますよね。なので、金銭を介在させないことで、「責任が適度に中和された役割実感を得られるようにする」という感じです。

若林:責任が中和されている方が良いのですか?

藤田:「コミュニティに巻き込む」という文脈であれば、それが最も良い方法です。

一方で、メンバーが責任感を持って役割を果たしたいという意思を持っていたり、期待以上の成果を出してくれる場合は、コミュニティとしてしっかりと金銭的報酬を払った方が良いでしょう。

若林:コミュニティメンバーの姿勢や、メンバーそれぞれにどのような関わり方をしてほしいかによって、運営側が判断しなければならないのですね。

藤田:その通りです。ただ、「関わるならお金をもらいたい」という人も出てきます。そうなると、コミュニティへの貢献よりも利己的な部分が顕在化してくる可能性があるんですよね。コミュニティに対する貢献が主語に無いので、アウトプットの質も低くなりがちです。

若林:コミュニティよりも自分の利益を優先してしまう人ということですね。

藤田:そうです。もちろん、メンバー自身のためにもなる役割を与えられるのが理想的ですが、コミュニティの運営という観点では、やはりコミュニティの発展に貢献することを中心に考えてくれる人と協力できた方が望ましいですよね。

アクティブ率が低下してきた…どう対策する?

若林:コミュニティにメンバーが集まってしばらく経つと、アクティブ率が低下してしまうこともあると思いますが、そういった場合、どのようにメンバーのモチベーションを向上させることができるでしょうか?

藤田:アクティブ率をどう維持するか、という課題ですね。

まず、アクティブ率の定義をお伝えしたいと思います! 「2:8の法則」って知ってますか? どんな組織やコミュニティでも、積極的に運営に参加する層は全体の2割程度で、残りの8割は“見る専”やイベントにたまに参加する程度の層である、という法則です。

つまり、アクティブ率を維持するためには、この2割のメンバーにより深く関わってもらうこと、そして8割のメンバーにも視聴者としてコミュニティに関与し続けてもらうことが重要。

とくに重要なのは、この2割のメンバーのアクティブ率をいかに上げるかという点です。具体的な施策としては、運営メンバーとして巻き込み、役割を担ってもらうことや、メンバー主体でイベントが発生する仕組みを作ることが挙げられます。また、モチベーションの観点では、コミュニティに貢献しているという実感を持ってもらうこと、つまり「役割実感」を感じてもらうことが非常に大切です。

そのうえで、8割のメンバーが求めるコンテンツを継続して提供することも重要です。8割のメンバーは主にベネフィットを求めてコミュニティに参加しているので、その人たちが「ここに居たい」と感じるような機能をコミュニティに内在させることが必要です。

若林:8割のメンバーが求めているものは、どのようにリサーチすれば良いのでしょうか?

藤田:運営を民主化することが鍵になります。選挙のようにメンバーを意思決定に関与させるということです。たとえば、週次や月次でアンケートを取るのも良いですね。アンケートに答えること自体が、メンバーに「このコミュニティに貢献している」という「役割実感」を持たせることに繋がります。

若林:アクティブ率が低下する原因には、どのようなことが考えられますか?

藤田:アクティブ率が低下する原因は、設計上の問題と運営上の問題、大きく2つに分けられます。

たとえば、ある町が自然を大切にすることを目的としている場合に、「もっと都市開発を推進すべきだ」と主張する住民がいたとしたら、それは設計の問題です。コミュニティの設計段階で、その目的にそぐわない人を受け入れてしまっているのです。

一方で、自然を大切にする町のはずなのに、自然保護のためのワークショップやエコな文化を広める行動がなかったとしたら、それは運営の問題です。

若林:アクションが目的に合っていない場合は、運営に問題があるということですね。

藤田:そうです。デザインに統一感がなかったり、考え方に大きな違いがあるメンバーが存在する場合は設計に問題があり、具体的なアクションやコンテンツにズレがある場合は運営に問題があると言えます。

若林:デザインやメンバーに問題がある場合は設計を見直し、アクションが間違っている場合は運営を見直すというかたちで、分けて考えると良いということですね!

ガイドラインの大切さ

若林:メンバー間で意見が対立したり、トラブルが生じた場合は、どのように対処すべきですか?

藤田:コミュニティによって異なるのですが、大前提として、意見の対立やトラブルを人同士で直接解決させてはいけないんです。

若林:そうなんですか!?

藤田:トラブルが発生したときの対処法は、すべて「ガイドライン」に記載すべきです。コミュニティのルールで解決することが重要なんですよ。

たとえば、自然豊かな町にタワーマンションを建てるべきかどうかという論争があった際、ガイドラインに従って決めることで円満に解決できるはずです。うまくいっている例として、京都市が挙げられます。京都市では「景観条例」で、10階以上の建物は建ててはいけないといった景観を守るためのルールが細かく定められていて、みんながそのルールに従って意思決定をしています。

たとえ小さなトラブルでも、すぐにガイドラインに記載してルールとして整備することが大切です。

若林:「ガイドラインに記載されているから守らなければならないよね」というかたちにしていくと、人同士が直接ぶつからなくて済むということですね?

藤田:そうですね。人が対立するときって、基本的に「コミュニティをより良くしたい」という思いから、自分なりの正義を持って意見を出している場合が多いんです。たとえば、「自然が好きだから自然を守りたい」という気持ちや、「町を発展させて豊かにしたい」という気持ち、どちらも正しいんですよ。

ただ、コミュニティとしてどこを目指すかが決まっていれば、「自然豊かな町にしたい」という意見と、「東京のように発展させたい」という意見の、どちらを優先すべきかがはっきりします。コミュニティにとっての正義が何なのかをベースに考えていく必要があります。

お祭りを見習って!? 「しんどくない変数」をつくろう

若林:コミュニティをある程度安定して運営できるようになった次のステップで、重要なことはありますか?

藤田:安定運用ができたとなると、次に重要になるのは、期待値の調整です。

基本的にコミュニティメンバーは、コミュニティの未来にワクワクして参加しているんですよ。

交流を目的としたコミュニティの場合は「来月の飲み会はあのお店に行ける」という期待があったり、課題解決を目的としたコミュニティの場合は「来年にはコミュニティがこのくらい稼げるようになる」という期待を持っていたりします。こうした期待値をうまく調整していくことが求められるのです。

とくに重要なのは、コミュニティ運営を1年単位で考えることです。「100年後にはこうなります」と言っても、人は100年も待てませんので離れていってしまいます。「来年この目標を達成します」と言い続けることが大切です。

1年単位の運営をよりよく機能させるために役立つのが「お祭り」です。

お祭りの具体例として、課題解決を目的としたコミュニティでは「競技」や「表彰式」、交流を目的としたコミュニティでは「飲食の出店」や「創作物の出展会」などが挙げられます。

興味深いのは、これらのコンテンツが毎年同じようなものでも、みんな飽きないということです。

なぜ飽きないかというと、関わる人や役割が変わるからです。お祭りには準備期間があり、半年くらいかけて進行しますよね。その間に「去年はフランクフルトを出したから、今年は綿菓子にしよう」といったコミュニケーションが生まれたり、太鼓・石運び・踊りといった役割が変わったりします。

毎年似たようなアウトプットになるのですが、その過程で過ごした半年間のプロセスは毎回違うんです。だから、とくに「観客を増やそう」なんて目標を掲げなくても、毎年面白いんですよね。

若林:去年これが人気だったから今年はもっと売り出そうとか、逆に今年のトレンドに合わせて去年と全然違うものを出していこう、みたいな「ちょっとした変化」が大事だということですか?

藤田:その通りです!  お祭りのコンテンツを毎年ゼロから考えるのは大変なので、コミュニティの種類に合ったかたちで「しんどくない変数をいかにつくるか」ということが重要になります。

普段ビジネスの現場で活躍されている方の視点からすると、「クオリティの高いものをつくらなくて良いの?」と思うかもしれませんが、コミュニティは時間が経つほど価値が高まるんですよ。

たとえば、「このお祭りは1,300年の歴史があります」と言われたら、直感的に「これは消えてはならない大切なお祭りだ」と思うじゃないですか。

単にコンテンツのクオリティが高いから残っているわけではなく、「しんどくない変数」を取り入れつつコンテンツを維持してきた結果、唯一無二の価値が生まれているのです。

だからこそ、「安定運用し続けること」が大切です。安定運用し続けることで、コミュニティに歴史や伝統が生まれ、それ自体が価値になるので、ぜひ辛くならない範囲で変化することを意識しながら取り組み続けてほしいと思います。

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