みんなの“好き”が形になる! ペレニアルガーデンのデザインに挑戦!
都立神代植物公園でスタートした「JINDAIペレニアルガーデンプロジェクト」も早いもので第2回目。皆さん前回で十分打ち解け合い、非常に熱いワークショップとなりました。
草花のならびを考えるだけではない、デザインのもつ大きな可能性
今日のテーマはデザインワーク。3時間の間にデザインの基本を理解し、実際に手を動かして班ごとのデザイン案をつくりあげるところまでたどり着きます。
まずは、木村智子さん(有限会社スマイルプラス)からの「花壇デザインの話」です。
デザインと聞くと、つい色や配置などを思い浮かべがちですが、それ以外にも気を配るべきことがあります。なにより、植物は生きていますから、成長や季節の移ろいによって姿が変わります。そのため将来の姿を予測して組み合わせるという視点が欠かせません。
また、花壇に関わる人たちの状況によって、管理の頻度も変わります。週1回お手入れができる花壇と、月1回お手入れができる花壇とでは、かけられる作業量が違うので、手間のかかり具合によって植物選びが変わります。
さらに、花壇には、管理する人たちだけでなく、その場所を通り、眺めてくださる近隣の人たちもいます。彼らと一緒になって、花壇の草花でブーケをつくったり、摘んだ花や葉でハーブティーを楽しんだり、ラベンダーなどでクラフトをしたり、花壇に訪れるチョウや鳥など、生き物の様子を観察したりと、さまざまな利用法が考えられます。
たくさんの人が花壇に関わることで、花壇を管理している人たちの思いやメッセージがまちへと染み出していく……。
花壇のデザインには思っている以上に大きな可能性がつまっているのです。
センスは誰にでもある! 大事なのはみんなの視点をまとめること
花壇デザインの大前提を把握した上で、デザインの基礎知識に入っていきます。
大事なポイントは、どの植物をどう組み合わせるかという視点。
大きさや形、色や質感といった植物それぞれの個性が引き立つように並べることです。実際の公園の写真を見ながら、そこに育っている植物たちを色違いの楕円の図形でトレースし、デザイナーがどんな意図で植物を配置しているのか読み解きます。時折、「どっちが植物の個性が活かせているでしょう?」とクイズ形式で会場の理解度を確認しつつ、先へ進んでいきます。
デザインは「センスの問題」と片づけてしまう人も多いのですが、実際は人の好みにもよるので、デザインの正解は人の数だけあるといえます。ただ、その中でも「美しいもの」や「バランスが取れている」といった感覚はみんなで共有しやすいため、グループでデザインをまとめる場合は「好き嫌い」にフォーカスしすぎずに、「美しいかどうか」「バランスが取れているかどうか」といった少しだけ客観的な視点を持ち寄るようにするとよいです。
それぞれの夢が現実になる、夢マップの完成に向けたマイルストーン
このワークショップは神代植物公園の宿根草園に、みんなでデザインしたペレニアルガーデンをつくりあげることが目標ですが、本当のゴールはさらにその先にあります。
知識と経験、そして想いを共有した人たちが、自分たちで花と緑の活動を担っていく、つまり「ワークショップの知見がまちへ染み出して行く」ことが理想とする最終ゴールです。
それを実現する上で、大きな力になるのが、夢マップの存在です。
夢マップとは、自分たちがやってみたいと思っている夢を1枚の紙に書き出したもので、ワークショップを通して、夢マップをつくりあげていきます。第2回目のテーマはデザインですが、その場所を利用するさまざまな人たちの視点に立ってデザインすることが、結果的に夢マップづくりにも役立ちます。なぜなら、いろいろな人が共感しやすいものなら、夢は夢で終わらず、どんどん応援してくれる人が加わり、加速度的に実現への道をたどるからです。過去に夢マップをつくった人たちが、数年経ってほとんど実現させているという実例と、そのときにつくった夢マップも実際に紹介しました。
そこで、参加者の皆さんが多様な視点をもてるように、班ごとのワークを行いました。クリップボードに自分の目線、子どもの目線、高校生の目線、家族連れの目線、高齢者の目線、障害者の目線、という6つの視点が書かれた紙を挟み、実際に神代植物公園の中を散策しながら、自分以外の多様な属性の来園者になったつもりで、書き込んでもらいます。
自分以外の視点をもったときに、初めて見えてくるもの
休憩を挟んで、班ごとへ公園に繰り出します。
散策の時間はトイレ休憩も含めて30分。秋バラが香るバラ園を抜けて、宿根草園や芝生広場などを見ていると、あっという間に時間が経ってしまいました。
さわやなか空気の中、植物の元気な姿に触れられ、皆さんとてもよい顔をして植物会館に戻ってきます。机の上には、運営スタッフが用意したハーブティー。部屋に入ると誰ともなく「わぁ、いい香り」と声が出るほど、部屋に優雅な香りが満ちています。
外では書き切れなかったメモを一とおり書き込んだら、班ごとに、ガーデンの可能性を考える付せんワークのスタートです。ガーデンでできること、やってみたいことを、自由な発想で付せんに書き出し、意見を班ごとにまとめます。
自分の視点だけでなく、多様な視点で公園を見ることによって、各班からさまざまな気づきやアイデアが生まれます。また、他人からの意見やアイデアが引き金となって、別の人が新しいアイデアを思いつき、相乗効果を生んでいきました。
当初のスケジュールではさらっと進める予定だったこのワーク。思いのほか、参加者のアイデアが出て、嬉しい悲鳴でした。班ごとのまとめにも熱が入り、順番の奪い合いになるほど。5つの班、すべての紹介が終わるころにはホワイトボードが付せんで埋め尽くされました。
手を動かしながら、花壇デザインをつくる!
ペレニアルガーデンの基本計画は、ガーデンデザイナーの吉谷桂子さんが担当されています。その基本計画をもとにエリアを分け、ピンク系がメインのエリア、黄色系がメインのエリアとカラーごとにデザインを考えることになりました。
植えた草花が育ったときのシルエットをつかみやすいよう、あらかじめ紙に印刷してあるディフォルメされた植物の形をハサミで切り取り、花壇を模した紙の上に配置していきます。
今回植える植物はすべてペレニアルなので、種類によっては、すごく大きくなったり、花の咲くときと咲いていないときとで、背の高さに違いが出たりします。グループを二つにわけ、少人数になったことでそれぞれの意見も出しやすくなりましたが、その分1つにまとめるのは難しそうでした。
東京のみどりを豊かにしていく、そんなデザインを自分たちの手で生み出す
これからつくる花壇について、あれこれ思いを巡らしながら、植物好きのメンバーと一緒に語り合う時間はなんと豊穣なのでしょうか。
同じ立場で参加する人たちから生み出される、数々のアイデアや夢、そこに自分の新しい夢の手がかりを見いだす人もいたはず。どのテーブルも「新しいガーデンでは、こんな過ごし方ができるといいんじゃない?」と、夢の花が咲き、止まることがありません。
あっという間にまとめの時間が迫ってきます。
悩んで手の止まっている班には、自分たちで答えが見つけられるよう運営スタッフが問いかけをして先へ進めます。
なんとか形にまとめあげ、班ごとにホワイトボードへ張り出しました。
付せんワークであれだけ白熱した皆さんですから、デザインについて、それぞれの思いのたけを紹介することになったら、大盛り上がりだったことでしょう。
次回、11月はいよいよ宿根草園エリアに出て、植物の植栽作業です。
どんな形の花壇ができあがるのか、楽しみです!
●写真・文責:小林渡(AISA)
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