いよいよペレニアルガーデンの植栽。みんなのデザインが形に!
前回、班ごとに行ったデザインをもとに、いよいよ宿根草の苗を植えつけます。“ゼロからイチ”へ形ができあがる、その瞬間をみんなで楽しむ、貴重な時間となりました。
みんなのデザインがペレニアルガーデン植栽用の平面図に
長かった夏の気配が遠ざかると、秋を飛び越しいきなり冬が姿を現す、ここ数年、日本はそんな気候になりつつあります。めまぐるしい季節の変化に、体がおいつかない人も多いのではないでしょうか?
第3回目のワークショップ当日も、冬のようなピリッとした冷たい朝でしたが、幸い日中はポカポカと暖かな陽射しも差し込む日となりました。
ワークショップは、いつも通り9時半ジャストにスタートです。
まずは木村智子さん(有限会社スマイルプラス)より、このnoteの紹介を交えながら、前回の振り返りを行いました。毎回、盛りだくさんのコンテンツなので、参加者の皆さんも「そうだった、そうだった」と一つ一つ確認しながらの大事な時間となりました。
前回、各班でつくりあげたペレニアルガーデンのデザインを、今日は実際の形に変えていきます。今期植え付けを行うのは、全体の3つのエリア。
まず、デザインの平面図が配られましたが、これは、2回目のワークショップで参加者の皆さんがパーツを使ってデザインしたものを反映したもの。
「全体のデザインと調和するように、皆さんが植物を選び、デザインしたものを、ピンクを中心としたエリアと黄色、紫を中心としてエリアに、班毎に分けました」と三浦香澄さん(グリーンワークス)から説明がありました。
苗が健康に育つために必要な情報をみんなで身につけ、いざ植栽へ!
では、実際に苗を植えつけるときはどうすればよいのでしょうか?
谷村伴子さん(グリーンワークス)から、宿根草の苗の植え付け方について説明がありました。
苗の配置には、「千鳥植え配置」と「格子植え配置」という、大きく分けて2つがあります。2つの違いは上から見ると一目瞭然。「千鳥植え配置」は三角形の集まりになっているのに対し、「格子植え配置」は四角形の集まりになっています。
一見すると「格子植え配置」の方が理路整然と並んでいるように見えますが、「格子植え配置」は縦横の株間(苗と苗との間隔)に比べて斜めの株間が広く、株が成長するにつれ、真ん中の空いているところが気になる事が多いのです。
一方の「千鳥植え配置」はどの方向からも株間が一定に保てるため、空きが気になりにくく、日当たりや風通しも均一になります。加えて面積に対して植える苗の数も少なくて済むので、公共の花壇のように予算が決まっているような現場では大きなメリットとなります。
配置の次は、植えつけと水やりの説明です。
植え付けで大事なのは、根鉢の上側と地面の高さがそろうようにするのがポイント。根鉢が高すぎると、水切れしやすく、根鉢が低すぎると株元が土に埋まり、根腐れや成長不良の原因となります。
植え付け直後の水やりにも大事な役割があります。水をたっぷり与えることで、周りの土と根鉢が密着し、新たな根が伸びやすくなります。水やりが足りないと、根鉢の底面に隙間が残り、一番根が伸びて欲しい根鉢の底の根の成長の妨げになるのです。
コミュニティガーデンや公共の花壇では、頻繁な管理が難しいため、水やりは最低限。植物は雨水だけが頼りなのですが、それでも枯れずに元気に育つのは、根に秘密があります。植物の根は土が乾燥しているときに伸びるという性質があり、土が乾き始めると水を求めて、根が下へ下へと伸びていきます。地中深くには、水を多く含む層があるので、そこまで根が伸びていれば、地表部が乾いていても平気というわけです。
最近は、夏の猛暑と日照りが厳しくなっていますが、グリーンワークスの管理している花壇は、どこも月1〜2回程度の水やりで夏場を乗り切り、秋は美しい色とりどりの花壇になっています。
宿根草の苗の数に驚きつつ、まずは苗を配置するコツをつかむ
さて、休憩を挟んでいよいよお待ちかねの植栽タイム。植物会館を離れ、宿根草園へ移動です。
きれいに区画がつくられた3つの花壇には、すでにポット苗が並べられています。これは前日、前々日と、運営スタッフが、花壇デザインをもとに宿根草の苗を用意し、バランスを取りながら並べたもの。花壇のなかには、管理作業の際の足場となる丸いステップストーンも敷かれています。
花壇ボランティアに関わったことのある参加者のかたたちも、これだけの宿根草の苗が並ぶ様子は初めてのようで、驚きの声があちこちであがっていました。
花壇をよくみると、ポット苗の置かれていない区画がちらほら。ここが、前回のワークショップで参加者の皆さんが班ごとにデザインワークしたエリアです。ピンクと黄色、紫ゾーンにそれぞれわかれ、班の場所がわかるようにプレートもあらかじめ挿してあります。
まずは、谷村さんが、ポット苗の配置のデモンストレーション。班のエリアごとに植える予定の苗が置いてあります。これらは前回、班ごとにデザインした際に選んだ植物。これを実際のエリアに配置します。植物会館でふれた「千鳥植え配置」についておさらいし、谷村さんが三角形を組み合わせるように配置していきます。
また、苗のポットをよく見ると、前回のデザインワークででてきた植物の成長した姿を図式したマークがついています。これを参考にすれば、背の高い植物と低い植物、広がる植物とこんもり育つ植物など、それぞれの個性をざっくり把握しながら配置ができます。
配置している人は、全体のバランスが見えづらいので、少し離れて全体を見る役目の人を設定したり、自分の区画だけでなく、隣の区画の植栽も見たりしながら、株間を調整する必要性についてもお話がありました。
谷村さんのデモンストレーションが終わったら、いよいよ班ごとに分かれて、植物の配置決めのスタートです。
みんなで知恵を絞り、体を動かしながら苗の配置を考える!
自分たちで前回考えたデザイン案を見ながら、現場の実情に合わせて苗を1つ1つ置いていきます。植物の特性や、育ったときの様子など、わからないことは苗の札を参考に、班のメンバーがスマホで調べ、「この子は大きくなるみたいだから、こっちのほうがいいんじゃないですかね?」「そうなんだ。じゃあ、こっちと入れ替えよう」といった具合で、相談しながら決めていきます。
どの班も、最初の数個を置くまでは時間がかかっていましたが、並び始めるといろいろなことに気づき、コツがつかめるのか、20分ほどですべての苗がエリアに置かれました。
ここからは、全員で配置を眺め、全体のバランスを確認。
迷う部分は運営スタッフにも相談しながら、抜けている部分や、バランスの悪い部分、植物の特性と合っていない配置がないかどうかなど、改善すべきところを直していきます。エリア内のステップストーンに立つ人に、外から全体を見渡している人が、「あの苗をもう少し右へ」「こっちの苗と、あの苗を入れ替えで」など、指示しながら、配置を完成させました。
ブレイクタイムでみんなの思いを共有していく
配置したら、すぐに植えたくなるのが心情ですが、ここはぐっと我慢。
いったんブレイクタイムを入れて、頭と心をリセット。少し草花から離れて、改めて見直すことで、作業中にはわからなかった問題点に気づくことはプロの現場でもよくあります。
みんなで宿根草エリアから芝生エリアへ移動し、班ごとにティータイム。運営スタッフが用意した麦茶とお菓子で、たのしいおしゃべりの時間です。
話題は植物から、いま取り組んでいること、未来の宿根草園への期待、自分の夢など、さまざま。公園協会の都立公園を担当しているスタッフからは、今の見頃の草花情報や、公園のイベント情報などもシェアされ、盛り上がっていました。
朝の気温は低かったものの、11時を過ぎた芝生エリアは風もなく、ぽかぽかとしていて、誰ともなしに「ピクニックみたいで楽しいね〜」と明るい声があがっていました。
みんなに愛されるペレニアルガーデンを願い、苗を植えつける
さて、10分間のブレイクで心と体がほぐれたら、いよいよ植えつけです。
再び、谷村さんによる、苗の植え付けと水やりのデモンストレーション。
植物会館でも話した、苗の土の位置と、地面の位置の高さを合わせるポイントも忘れずに。苗の周りに指で土をしっかり入れ、表面をならして植え付け完了。
植え付けが終わったら、堆肥を苗の周りをぐるっと囲むようにまいてマルチングです。これで冬の寒さから苗を守るとともに、水切れしにくくなります。
最後は、ジョウロで水やり。1つの苗あたり、10秒とたっぷり水やりしましょう。ハス口のないジョウロの場合は、水の出る部分に手を当て、土に当たる水の勢いをやわらかくするのが大事。手を当てずにそのまま水やりをすると、土がえぐれて穴が空き、雨水が降った際に水がたまって、苗の成長に悪影響が出ます。
デモンストレーションのあとは、実際の植えつけです。見るのとやるのとでは大違い。穴を掘りすぎたり、植えてみたら場所がずれていたり、いろいろなハプニングが続出。
「今ならやり直しがききますよ〜」というスタッフの声かけに安心しながら、どんどん苗を植えていきました。
マルチング後の水やりは、「こんなに長い時間水やりするんですね!」とみんなびっくり。ふだんの水やりが実は足りていなかったのだと、大事な気づきも得られました。
すべての班のエリアの植えつけとマルチ、水やりが終わったところで集合写真をパチリ。草花に触れ、土いじりをした後なので、皆さん大満足の笑顔です。
最後に、芝生エリアで今日の感想を付せんに書き出すワーク。
「宿根草が多種でびっくりした」
「春が楽しみ! ワクワクです」
「植えホーダイが気持ちよい!」
など、いろいろな感想が集まりました。
すでに、1年後、2年後の株分け作業の心配をしている人もいて、この場所をみんなで見守っていこうというムードができあがっていました。
また、この日は最後の連絡事項で、都立浮間公園や、都立代々木公園の担当者から、それぞれの公園についての告知もあり、せっかくだから遠出をして見に行こうという人たちの声も聞かれ、まさにガーデン好きのためのガーデンづくしの1日となりました。
●写真・文責:小林渡(AISA)