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私の彼は優しすぎる。5-会いたい。

「マツイくん」

ある日私はどうにも耐えられなくなって

彼に声をかけた

「最近猫見ないね」

すると彼は申し訳なさそうな表情になり

「あのこ、うちにいる」

と答えた

えっ?と戸惑うと

「うちで飼うことにしたんだ。ごめん、言ってなくて」

心配したよね…と小さい目をしばしばさせながら説明した。

「栄養状態よくないみたいだったし、ちょうど猫飼いたいって思ってて」

今思えばこれも彼の優しさで私が責任を感じないよう黙って猫を保護したのかもしれない。

『ちょうど猫を飼いたかった』というのもwhite lieかもしれない。

「よかった、マツイくんちならあのこも安心だね」

心からそう思った。いい人にもらわれて本当に幸せだと。

「私も猫好きなんだけど、飼ったことなくて。マンション飼えないんだ」

私がそう言うと彼はまた申し訳なさそうに目をしばしばさせた。

あの日、彼は帰宅後、猫のことを親に話し、すぐに親と車で戻って猫を保護したそう。

優しい人の親はやっぱり優しいんだな、

優しい家族が容易に想像できた。

「まる、と言います」

にっこりと彼は言った

「ん?」

「名前。まるにしたんだ

まるまるになるようにって。

結構もうまるくなってきたよ」

彼の目はもう見えないくらい細くなってにこにこが止まらなかった。

「まるちゃん。かわいい」

「うん」

「写真ある?」

「あるよ」

彼はスマホから『まるフォルダ』を見せてくれた

「ほんとだ、めっちゃまるくなってる!」

私は笑った。

野良猫だったあのこはすっかり安心しきった家猫になっていた。

私はムズムズした。

まるちゃんに会いたいな。

でも言えないな。

「まるに会いたい?」

優しい彼にはテレパシーがあるようだった。

私は驚いて目を丸くして狼狽えたけど、

それはとてもわかりやすいYESだった。


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