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私の彼は優しすぎる。12-覚悟。

彼の帰りはいつも遅い。

私が用意したごはんを温めて食べている。

「どしたの?」

彼は目をぱちぱちさせた。

「ずっと見てるやん」

疲れているのに悪いと思ったけど

ずっと喉元まで来ていたことを口にした。

「昨日会社の人に見られたみたいで」

「あー」

「『かっこいい彼氏だね』だって」

「うん」

彼は動じることもなくおかずをぽりぽり咀嚼した。

言われてみれば彼はかっこいいかもしれない。

私はやっと気づいた。

こんなにそばにいるのに、人に言われて初めて気づくなんて。

「かっこいいって言われたことある?」

「うん、まあ」

彼はあまり頓着していないみたいだった。

「背があるから目立つし。

なんかこういう顔の俳優さんがいるんだって。

それでみんなひっぱられるのかな」

みんな?

みんなからかっこいいって言われてるの?

「仕事始めて服装とかにも気をつけるようになったし」

確かに彼は垢抜けた。

私は恥ずかしくなった。

自分も何かしなきゃ、と思った。

「これからはイケメンとして生きて行きますよ」

と彼は笑った。

私も笑った。彼のこういうセンスも好き。

でも私はイケメンの彼女として生きる覚悟が全然できなかった。

笑ったけど、会社から続く不安が消えたわけではなかった。

悶々と夜が更けた。





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