私の彼は優しすぎる。14-億劫。
会社に行くのが億劫だった。
頼むからもう誰も彼のことに触れないで。
自分が不釣り合いなのはもう承知しているから。
彼はゆうべのおかずの残りを上手に
お弁当箱に詰めている。
私の分も詰めてくれた。
彼はやはりセンスがあるのか
お弁当を美味しそうに詰めるのが上手だった。
私が詰めるといかにも『あまりもの』の醜いお弁当になるのに。
私は傍らで多めに作ったコーヒーを彼の出勤用のボトルに注いだ。
「途中まで一緒に行こ」
と言いつつ、マイペースな彼は音楽を聴くから
会話などないのだけど。
「うん」
私は大きな不燃布のマスクを着けた。
マスクがあって良かった。
彼もウレタンのマスクを着けた。
気のせいかもしれないけど
余計にかっこよくなったように思えて
私はマスクを着けていても
彼の隣を歩くことに
卑屈になりそうだった。
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