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私の彼は優しすぎる。6-違うよ。

それからの記憶は途切れ途切れだ。

よく似た優しそうなお母さんがいたこと。

お母さんの声も囁くようで、この人から彼が生まれたことに納得した。

猫は毛艶並みがすっかりよくなって

終始喉をゴロゴロと鳴らしていたこと

前に撫でたときは背骨を感じたのに

半分液体のように柔らかくしなやかに感じたこと。

断片的に覚えてる。

彼のことを地味とか大人しいとか目が小さいとか目立たないとか述べたけど

それはむしろ私のことだ。

背が低くて横幅があって…

顔はエラが張っているからボブで隠して

そして彼ほどの優しさも思いやりもなくて

つまんない子だと自分でもあきれる

モテたこともないし恋愛もしたことがなかった

だから男子の家に行くことに緊張して

記憶がもうろうとしている。

一方彼は平気のようだった。

中性的な彼は小さい時から何気に女友達が何人かいたみたい。

ー彼がお母さんに、

「まるを見つけてくれたカミチさん」

と私を紹介してくれたことを覚えてる。

違うよ、マツイくん。

猫を撫でいていた私を見つけて

声をかけてくれたのはあなただよ。

彼の世界は優しすぎて、私でさえ優しい女の子にしてくれた。

生まれて初めて胸の深いところが痛くなった。



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夏色 陣
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