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私の彼は優しすぎる。9-照明。

出会ったときはそんなに背は高くなかったのに

いつの間にか彼の身長は180㎝を超えていた。

そしてひょろっとしていた。

身長が高いせいで食べても食べても太らないみたいだった。

彼が背が高くなったことはもちろんわかっていた。

でも並んで歩くことに抵抗はなかった。

彼は彼だから。

つぶらな目は少し垂れてて離れてて

背が伸びた分痩せて少しほっそりしたけど

相変わらず柔和な眠たい顔


あれは確か

お互いが大学を卒業して就職して一緒に住むようになって

私の勤務先近くで待合わせしてお茶をしていたときだった

彼は大学進学すると設計を専攻して

デザイナーになろうとしていた。

おしゃれなカフェを見つけてはカフェ巡りをするのが彼の趣味のひとつで

私は時々彼に連れ添った

私の勤務先の目と鼻の先に気になるカフェがあるというので

終業後彼を待っていた。

少し遅れて彼が現れ、私たちはカフェに移動して

彼はよくよく悩んで豆を選び

椅子やテーブルをそっと撫でたりスマホで写真を撮ったり

内装に夢中だった

大学に入ってからはそんな感じで

私は彼が研究熱心に見えて

そういう真面目なところも本当に好きだった。

「いいお店だね」

彼は満足そうだった。

「照明はちょっと変えてもいいかも。

人がもう少し優しく見えるような照明でもいいと思うんだ」

「どう見えているの?」

「ちょっとカミチさんの顔に影が多いかなあ・・・」

そうなんだ。

照明にも優しさを求める彼が

少し可笑しくもあり愛おしくもあった。




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