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私の彼は優しすぎる。3-行かないで。

彼はコーヒーを飲みながら

キッチンに移動して

冷蔵庫をがさごそといじって

慣れた手つきで

お弁当をつめる

彼はどうして何でも器用にできてしまうのだろう。

コーヒーも本当は彼が淹れたほうが美味しい。

今日は土曜日だけど彼は職場に行って

きっと音楽を聴きながら

仕事をし

お腹が空いたら

このお弁当を食べて

カフェなどに寄ってから帰途につく。

「今日いい感じ」

彼は優しく微笑んでお弁当をスマホで撮影した

どこにアップしているのだろう

私は彼のInstagramしか知らない

「コーヒーありがとう」

彼はいつも律儀にそう言う

優しい人なのだ

そして着替えて髪をセットして…

俳優のようにスマートになって

その扉を出ていく

行かないで

いつも二度と会えないような不安が

蕁麻疹のようにバッと襲って

行かないでと叫びそうになるのを

いつも圧し殺し飲み込む

「行ってらっしゃい」

大丈夫、ここは彼のお城だから

彼は帰ってくる

でもやはりもらわれたての子犬のように内心不安になってしまう

そのドアが閉まる瞬間。

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