見出し画像

私の彼は優しすぎる。15-恐怖心。

私はビルの外の

少し遠い共有スペースでお弁当を広げた

何を聴くでもないけどイヤホンをして

「話しかけないで」オーラを最大限に出そうとした

職場の人に

『お弁当自分で作ってるの?』

と訊かれないために。

昨日までは私は職場でも

誰も注目しないひとりの地味な新人だった

だから自席でお弁当を食べていても

ミーティングスペースで食べていても

「お疲れ様です」以外の会話を他の人としたことがなかったけど

昨日の好奇と嫉妬の入り混じった視線を浴びて

今まで知らなかった恐怖を覚えて

また誰かほとんど話したことがない人から

「カミチさんの彼ってかっこいいらしいね」

と声をかけられたら、と

過剰に怯えるようになってしまった。

そしてこのお弁当を見て

「自分で作っているの?」と訊かれたら

「はい」と答えればそれまでだけど

この美しい盛り付けを自分の手柄にしたくない。

だからと言って

「彼が詰めてくれて」

と正直に答えると

またあの恐い視線が刺さりそうで

考えすぎて

ネガティブな妄想が止まらなくなって

お昼時混雑するエレベーターを使って

外に出て速足で歩いて

普段は使われていないビル共有のイベントスペースまでやってきた

何やっているんだろ、私。

気が向いた時にサポートよろしくお願いしますm(_ _)m