社会人1年目で成果を出すためのフレームワーク【営業基礎編】
こんにちは。FinTech企業(株)お金のデザイン並びに(株)400Fで代表をしております中村と申します。前回、野村證券に入社した経緯のnoteを書きました。
そんな直感的に入社した野村證券で新卒1年目にどのようにして成果を出したのかをまとめたいと思います。Twitterではダラダラと1年目についての思い出話をしています。noteでまとめる内容は当時の自分の行動を振り返り、再現性のあるものにするとしたらどのような枠組みなのか?という観点で書いています。
再現性のない"ど根性営業"みたいな話はTwitterで面白おかしく発信していきます 苦笑
今回は同じような成果を出すのであればどのようにすればいいのかを、当時の僕の実践モデルからのボトムアップ的な分析でまとめたいと思います。
社会人1年目の方はそうですが、営業などで悩んでいる方に見ていただいても参考になりますと幸いです。
0. 野村證券1年目に何をやったのか?
僕は野村證券に2005年に入社しました。当時の野村證券の新入社員の共通目標は"新規開拓"になります。僕は水戸支店に配属となり、1年間で213件の新規開拓を行いました。当時は2ヶ月間ほど研修などがあったので実質10ヶ月ほどで達ししており、営業日ベースでは1日1件の開拓を新規の飛び込み営業だけで達成しています。
この213件という新規開拓件数は当時の野村證券の新人歴史記録でした(なお、この記録を塗り替えたのは私が3年目の時に育成を担当した後輩です。こちらは今後Twitterやnoteで発信していきます)
この時の営業スタイルはひたすら新規営業を飛び込みやポスティングを中心に行うものでした。
やっている営業スタイルは全国で差があるわけではないです。また、新規開拓には成果を出すための飛び道具もないです。そんな中で僕が野村證券の新記録という成果を出せた要因は何になるのか?それをまとめていきたいと思います。
1. 社会人1年目は守破離の"守"の時期
皆さんは守破離という言葉をご存知でしょうか?僕は社会人1年目というのはこの"守"の時期であると考えています。
ここで記されている守破離とは以下になります。
修業に際して、まずは師匠から教わった型を徹底的に「守る」ところから修業が始まる。師匠の教えに従って修業・鍛錬を積みその型を身につけた者は、師匠の型はもちろん他流派の型なども含めそれらと自分とを照らし合わせて研究することにより、自分に合ったより良いと思われる型を模索し試すことで既存の型を「破る」ことができるようになる。さらに鍛錬・修業を重ね、かつて教わった師匠の型と自分自身で見出した型の双方に精通しその上に立脚した個人は、自分自身とその技についてよく理解しているため既存の型に囚われることなく、言わば型から「離れ」て自在となることができる。
僕が社会人1年目で大きな成果を出せた最大の要因の一つはこの"守"を徹底したことだと思っています。野村證券には大学スポーツの有名人や、学生時代に様々な経験を積んできた強者がたくさん入社します。そんな中で、特に取り柄もない僕が愚直に実践したのが師匠に徹底的に従ったことです。最初に師匠に出された指示はこちらです。
このような狭いエリアを毎日毎日営業すると、すぐに訪問するところはなくなります。ちょっとでも、"このやり方は非生産的だ"、”指導が理不尽だ”、などと思えばやる気を失うでしょう。しかも多くの方に何度も断られるので精神的にも辛くなります。
でも僕はそのようなことを"敢えて"考えないようにして師匠である育成担当の先輩の方針に徹底的に従いました。
よく質問箱などでどのような新人が成果を出すのですか?と聞かれます。その時に僕の回答で真っ先に来るのが、
素直な人
というものです。過去の実績とかって営業をするお客様にとってなんの意味もないです。大学時代に有名であったことやいろんな経験をしたことは話題の一つになると思いますが、それが営業で成果を出す上での絶対条件には一切ならないです。
むしろ、過去の自分の栄光にしがみついて今のしんどさから逃れようとしたら、そこにあるのはなんの価値もない"プライド"です。プライドほど無駄なものはないですね(なお1年目ではないですが、ベンチャーに転職した時には「野村證券での実績は何にも意味ないからね」と言われて転職して必死に勉強/仕事をしました)
もしかしたら社会人1年目で入社して「こんなこと意味ない」「理不尽だ」「自分のやり方の方が意味がある」ということを感じることは多々あると思います。しかし、例えば野村證券のような企業は歴史があり、その歴史の積み重ねで大きくなっています。それを最初から斜に構えて打ち込むのではく、まずはとりあえずやってみる。そういう心構えこそが成果を出す上での大事な一つであると僕は思っています。
これはつまり先入観をなくして一心不乱に目の前の師匠の教えに従うということです。
2. 悪いKPI設定で疲弊していないか?
では、師匠の教えだけに従っていれば結果は必ず出るのでしょうか?残念ながらそれもあり得ません。よっぽど優秀な師匠に従事して仕事をすれば、何も市内でも結果が出るのかもしれませんが僕はほとんど聞いたことがありません。
営業は確率論の世界です。自分が師匠に教えてもらった型を徹底的に守りながらその型を活かす努力をしないといけません。確率を上げる工夫をした上での量を上げるために何をするのかという目標とKPI設定が大事になります。
では、質と量を上げる中でどのように目標管理をすれば結果につながるのでしょうか?
世の中には営業ノウハウの本が溢れかえっていて"PDCA"や"科学的な営業"、といった言葉が氾濫しています。それでもその本を読むだけで営業成果が出るかというそうはならないと思います。僕はそもそもの営業目標を達成するためのKPI設定と運用がダメなケースが多いと思っています。
まずはKPI設定について考えていきたいと思います。この悪いKPI設定について知人の樫田さんのnoteが大変参考になるのでぜひ読んでみてください
例えば、野村證券の新卒時における目標は新規開拓件数でした。ではこの目標に対してのKPIは何になるでしょうか?
通常の考え方では、お客様の開拓のために接触する手段をKPIとして設定すると思います。野村證券の営業の場合営業手段には以下のようなものがあります。
①飛び込み営業 ②電話営業 ③ダイレクトメール/ポスティング ④巻紙(!) ⑤紹介営業 など
では、この目標だけをKPIに設定して走り出すと何が起こるか
上司:「新規開拓のためには行動量が重要だ!」
部下:「はい!」
上司:「よし、まずは飛び込み営業をやって名刺150枚集めてこい!」
部下:「わかりました!行ってきます」
・・・
部下:「やべー、名刺がなかなかもらえないよ」
部下:「よし、こうなったら名刺だけでももらうようにしよう」
・・・
上司:「今日の成果はどうだ?」
部下:「はい、名刺160枚集めました!」
上司:「よっしゃー!この調子でどんどん行動量を増やしていこう!
部下:「はい!」
・・・
1ヶ月後、部下は名刺をもらうだけの能力はついたが営業成果は出せないまま悶々と毎日を過ごしていた
皆さん、上記のような状態に陥っていませんか?僕は営業をやっているの中には手段が目的化しているケースが乱発していると思っています。全く意味のないKPIを追って、KPIだけはしっかり伸びているのに営業成績は向上しない。そんなことが現場ではたくさん起きていて営業成績がでないために上司はイライラし、部下は疲弊していく。そんな構図が起きています。
プロセスマネジメントみたいに綺麗事を行っても、無意味なプロセスをひたすら実行していたらそのさきに結果はないのです。
では、KPIと目標を混合してしまうと何が起こるでしょうか?
上司:「新規開拓毎月10件だ!」
部下:「了解しました!」
上司:「とにかく営業にどんどん行ってこい!」
・・・
部下:「とにかく行動量が大事だから、なんでもいいからやるぞ!」
・・・
部下:「なかなか結果がでないな。どうしよう。でもやるしかない!」
・・・
上司:「今日の結果はどうだった?」
部下:「すいません、ダメでした」
上司:「は?なんで結果出せないんだよ!明日は結果出せよ!」
部下:「わかりました。。。」
・・・
1ヶ月後、なんの成果も出ておらず、部下は何をすれば結果が出るのかもわからないまま悶々と苦痛な日々を過ごしているのであった
こんなギャグみたいな話があると思いますか?言葉はもっと丁寧であったりするかもしれませんが、意外と多くの会社でも起きているのではないでしょうか。
当たり前ですが、目標とKPIを混合すると営業成果の要因分析ができません。また、悪いKPI設定をしてしまうとKPIの進捗は良好なのに成果に結びつかないというケースがあります。
僕は1年目で土日もポスティングをしていましたし、野村證券で語り継がれる巻紙も毎日10枚書いていました。毎日の飛び込み件数も必死にやっていました。もちろんその絶対的な量に自信はありますが、それだけだったら根性でやり切れると思います。しかし、根性で単純な営業量を増やしても結果に結びつくとは限りません。
3. たった一つのKPIを決めて追いかけてみよう
では、悪いKPIを追い求めることに疲弊しないで結果を出すにはどうしたらいいのでしょうか?
これは結構シンプルで、社会人1年目や営業で成果を出したい時に設定するべきKPIはたった一つにすることだと思っています。
あるメガメンチャーのマーケティング責任者の知人とお話した時に伺ったのですが、その会社は四半期ごとに追うべきKPIをたった一つだけ設定して、そこから逆算して施策を決めていっているそうです。もちろん運営する際には色々と他の数字も見ますが、何を自分たちは追っているのかをはっきりさせることが大事です。「イシューからはじめよ」に似ていると僕は感じています
営業は、マーケティング活動(飛び込み、電話、ポスティングなど)を通してリードジェネレーションする。次にリードナーチャリングを行って成約に結びつけることです。営業が大変なのはこの一連のプロセスを一人でやり切ることです。ファネルのイメージ的には下図のような感じでしょうか。
これってすごいことであるのと同時に、極めて難しいことをやっています。SaaS企業などではこれらのそれぞれのステージごとに別のチームが担当しており、それぞれのチームは別々のKPIを追っています。対人営業はこれを一人でやるので、設定するKPIなどがごちゃごちゃになってしまうことがあります。一人でやり切るが故にKPI設定の特定を見誤ってしまいマーケティング活動を人の3倍やっているけど制約がそれほど出ていないというケースが発生します。
なお、現在はSaaS企業などを中心としてザ・モデルのような考え方が普及してきていますが、対人営業企業においてはまだまだ分業はできておらず一人でやらなくてはいけないということが多いのではないでしょうか。(個人的には今後金融営業でもこのようなモデルは普及していくと思っています。)
そんな中で、僕が野村證券1年目の時にはまずは"リードナーチャリング"に該当する顧客との有効接触時間を意識していました。行動量を増やしても、実際の提案時間がなければ意味が絶対に開拓なんてできません。そのため、自分が1日の営業の中で何件15分以上話をすることができた潜在顧客数があったのかを追い求めました。15分もお客様と話ができれば、いろいろなヒアリングや提案ができます。そしてそれだけ話をしたならば潜在顧客から成約に至るケースも多くなります。
樫田さんのガールズバー施策でも言われていますが、新規開拓をするために飛び込み件数をKPIに設定すると接触量は増えますが、成約にむけた会話はできていない可能性が高いためやってもやっても疲弊することが起こります。
そのため、僕の1年目はとにかく「会って話ができる人」の母集団形成に意識を持って、徹底的に狭いエリアを回りました。狭いエリアを回り続けると認知度が高まり、その結果として有効接触が可能となりリードナーチャリング対象者が増えます。デジタルマーケティングと一緒で対人営業においても「いつも来ているあの人(いつもみているあの広告)」みたいな認知度はすごく重要だと思います。たまにしかこない営業に大切な資産を預けようなんて思いませんから。
なお、注目すべきKPIは変化していきます。リードナーチャリングだけに注目をしていると今度は成約にまで至らない母集団だけがどんどん増えていきます。このような局面になるとこれまで正しかったKPIが悪いKPIに変化してしまいます。
そのため、母集団形成がある程度できた段階では今度は成約件数にKPIはシフトしていきました。
4. KPI設定をしたのちに何が大事なのか?
では、正しいKPI設定をできて行動したとしてすぐに結果は出るのでしょうか?
それはないです。
デジタルマーケティングのように大多数に対してアプローチできるケースにおいては、特定ペルソナの延長線上で多くの人からの成約を達成できる可能性が高まります。
現在弊社もN1ユーザーを特定してマーケティングすることによってユーザー獲得を行っています。このやり方はデジタルの世界では様々なユーザーに届くので可能であると思っています。
(N1についてはこちらが参考になります)
しかし、対人営業の場合そこまでスケールできるわけではないので、個々の対応がより一層必要になります。あるやり方がAさんに通じたとしても、Bさんには通じない。そういうことが多々あります。では、Aさんに似た人にアプローチすればいいとデジタルの世界ではなりますが、対人営業ではそれはなかなか難しいです。そのため、昨日やったやり方が今日通じないということが当たり前に発生します。
そこで、正しいKPI設定を行った後にやるべきことは「WHY」の追求だと思います。WHYで有名なのはトヨタ式「5回のなぜ」ではないでしょうか
一人一人、一社一社の潜在顧客が「なぜ成約に至っていないのか?」を追求して、違った方法でのアプローチなどを駆使して成約確率を高める。営業においてはこれが重要です。
もちろん圧倒的な訴求力のあるプロダクトがあれば画一的なセールストークで十分なのかもしれませんが、特に金融においては他社には絶対に負けない圧倒的な商品などはほぼ存在しません。その代わりにお客様のニーズに合わせてあらゆる提案ができるという利点もあります。
だからこそ一人一人の個性、お金に対する考え方、他の金融機関との取引状況などを鑑みて提案内容をチューニングすることで成約確率が高まります。
このWHYの実行力を営業において高めるためには失敗の数を増やすしかないと思います。机上の仮説だけを抱えていても無意味です。自分の仮説を実際にお客様にぶつけてみて反応をみる。駄目であればさらに考えてぶつけてみる。その繰り返しです。
僕は社会人1年目に誰よりも新規開拓を行ったのと同時に、誰よりも提案を断られたと思います。その失敗から学び様々な話し方や提案のやり方を工夫したことで、成約力が養われ大きな結果を出すことができました。
例えば、10ヶ月を200営業日と仮定します。僕の開拓件数は213件ですが、開拓率は1%くらいではないでしょうか。そうなると10ヶ月で21,300回断られています(同じ人からの断りもある)。つまり、一日平均で106件も断られて初めて1件の成約になるのです。毎日100件以上断られることに対してWHYを追求していけば、自然に様々なアプローチ方法や自分なりのケーススタディが出来上がってきます。
5. グリット
このようなやり方を実践してきたら、結果を出すために最後はやり抜く力(グリット)が必要になると思います。グリットについてはこちらが参考になります。
こちらの書籍のメディアレビューにはこうあります
成功するには「IQ」より「グリット」 やり抜く力の大切さを伝えて28万部。大きな成果を出した人の多くは、必ずしも才能に恵まれていたわけではない。成功するために大切なのは、優れた資質よりも「情熱」と「粘り強さ」――すなわち「グリット(GRIT)」=「やり抜く力」なのだ。
ロジックをしっかり組み立てて、WHYを追求して、営業スタイルを洗練させても華麗に成果が出るなんてありません。
営業は人に意思決定をしてもらうものであり、AIで合理的に判断したからさくっと成約に至るなんてことはないです。人の意思決定に影響するものは多種多様です。その時の心境、会社の状況、市況、などなど複雑すぎてたった一つの意思決定要因なんてありません。
そのため、成約に至るにはいろいろな障害があり、その度に営業には苦労が発生します。洗練された営業プロセスを構築したのだからあとは結果だけと油断していると、結局は結果が出ないケースが多くあります。
最後は結局やり抜く力が重要になります。
このやり抜く力を得るためには何が必要なののでしょうか?僕は何かたった一つの回答はないと思っています。
例えば、合理的に考えれば
営業成績を出して年収を高くする!営業成績を出して社内留学する!
など何か大きな目標があるから諦めずにやれる!と考えるかもしれません。そして営業ノウハウ的な本を読むと計画が大事だとか、大きな目標が大事だと理路整然と書いています。もちろんそのような計画や壮大な目標というのは素晴らしいことだと思いますし、あればそれは良いことだと思います。
しかし、
よくわからないけど今を必死にやってみる
というもの大事ではないでしょうか?
社会人1年目で営業に配属になり、特に大きな目標はない方も多いのではないでしょうか?そういう時にはぜひ今やっていることを疑わずまずは目の前のビジネスに一心不乱に取り組んで見てもらいたいです。とにかく一生懸命です。何も考えずに。
そのうち自分としてやりたいことや、目指したい道が見えてきます。スティーブ・ジョブズの言葉にもある通り(有名な2005年にスタンフォード大学の卒業式での講演です)
you can't connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something — your gut, destiny, life, karma, whatever. This approach has never let me down, and it has made all the difference in my life.
先を見通して点をつなぐことはできない。振り返ってつなぐことしかできない。だから将来何らかの形で点がつながると信じることだ。何かを信じ続けることだ。直感、運命、人生、カルマ、その他何でも。
この手法が私を裏切ったことは一度もなく、そして私の人生に大きな違いをもたらした。
6. まとめ
前回のnoteでも書きましたが、僕は野村證券に入りたい!営業で成果を出したい!とか何か確固たる意思があって野村證券に入社したわけではありません。
しかし、まずはゼロベースで自分の師匠である育成担当者に教えられた型を徹底的に守る守破離の"守"を実践しました。
そして、死に物狂いで営業する中でも成果に結びつく正しいたった一つのKPIを意識しました。このKPIは時間と共に変化もさせました。
さらに、KPIを追うだけでは成果は出ない。そこでWHYを追求してなぜ成約に結びつかないのかを考え続けて、アプローチや話す内容を変えていくことで成約率を高めていきました。その裏には膨大な失敗があります。
最後にどんだけ辛くてもやり抜く。僕の場合には必死に営業をやり抜く中で将来やりたいことが固まっていきました。正直、最初の一歩は特に何か目標があったわけでもありません。
しかし、必死に営業をやるという"点"が振り返ってみると線となっており、そして現在ではベンチャー企業の経営者になっています。
来年入社する方、現在社会人1年目、営業で成果が出ていない方、営業でもっと成果を出したい方。世の中にはたくさん営業について悩んだりしていらっしゃる方がいるのではないでしょうか?そのような方にこのnote少しでもお役にたっていれば幸いです。