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手元に集められた数奇な石たち ④ユナカイトについて調べた
はじめに
さまざまな見知らぬ鉱石についてネットで情報を探すシリーズも4回目。またかと素通りされそうだが、蓄積していずれチャート化できればそれなりになるかもと妄想的自己満足にひたりながら書いている。
ネット情報の真偽におびえつつ、しごとのすきま時間をあてながらまとめた。ただひとつ決めているのはウィキペディアを使わないこと。どれだけ調べられるか、あるいは調べられないか。
いつもどおり「鉱物」、「鉱石」、そして「石」の語をあいまいなまま使っているのでご注意を。
独特な名前は…
ぐうぜんうちに集められた石たち。このうちいくつかを調べていこうと思っている。今回は出先の仕事場からなんとか原色岩石図鑑(保育社)(1)を借りられた。
じつはこの本、もとは自分のもの。縁あってこの仕事場にこの本をふくめて300冊ほど寄贈して先日貸し出しシステムを完成させていただけた。すると借り手はやはり私自身が多い。自分の本だったのであたりまえか。
しばらくのあいだこの図鑑を使えそう。嬉々として臨む。今回はユナカイト。色合いは独特。手持ちの石は淡い緑色のベースに濃いめの桃色を散りばめたさまは個性的。
撮影ではなんとかその色合いを出せたように思う(実物に合うように若干加工してある)。こうした個性のあるふだん目にすることがない石をながめるのはなかなかいい。淡緑色の色合いも趣深い。
みがいた面で観察すると両方のまったくことなる風合いの結晶が、どうしてこんなにもべつべつに混じり合わないで存在できているのか不思議だ。
さてその疑問を中心に探っていきたい。この石について図鑑(原色岩石図鑑)の記述から一部を引用。( )は私の記述。
ピンクや橙色の粗粒他形の塊はカリ長石(せいちょうせき正長石)、・・・黄緑色粗粒部は緑簾石(りょくれんせきepidote)の微細結晶の集合からなる。・・・これは長石が変質して緑簾石化して生成した・・・。最初の発見地がアメリカのノースカロライナ州のユナカ山地なので、ユナカイトの名がある。
淡緑色+桃色の鉱石
鉱物名はユナカイト(unakite)。和名ではユナカ石。べつのサイトには緑廉石(りょくれんせき)とある。アレ、これって上で説明した黄緑色の部分の名称。こちらが名前の上で主役だったのか。どうしても桃色のほうが目立つのでてっきりこちらが主のように見がち。
どうも調べつづけていると、上の図鑑のべつページ(p.236)を読んでわかってきたのだが、ユナカイトとはこうしたいくつかの鉱物をふくむ複合的な岩石らしい。
ユナカイトは、花崗岩が熱水活動による変成作用の結果で生じる変成岩だ。ここでおさらい。岩石を大きく分類すると火成岩、堆積岩、変成岩の3種類ある。 ユナカイトはそのうちの変成岩のなかま。
たしかに使っている図鑑では花崗岩もはいる深成岩類のページに掲載され、さらにべつのサイトなどには変成岩とされている。この石には見あたらないが白から灰色の鉱物として石英が入ることがあるらしい。石英や長石といえば花崗岩といえそうなぐらいおなじみの鉱物。
つまり花崗岩の一部が変成作用を受けてユナカイトの形状になったといえそう。
この石のモースの硬度は6.5~7で、硬玉の示す硬度(6.5~7.0)とほぼ同じらしい。原石の値段はそれほど高額ではないようだ。
独特な色と感触は…
ユナカイトを化学式を示すと
Ca2Fe3+Al2(Si2O7)(SiO4)O(OH) (数字は下つき)
ついでに緑閃石:Ca2Fe3+Al2(Si2O7)(SiO4)O(OH) (数字は下つき)
ユナカイトと緑閃石の化学式は同一。化学式をよくみるとSi(ケイ素)があり珪酸塩鉱物であることを物語っている。
緑簾石の結晶が細かいと透明だが、結晶が大きくなると不透明度が増してくるらしい。そしてこの鉱物、造岩鉱物として広く世界中に分布しており、さまざまな火成岩中に見出すことができるとのこと。
輝石や角閃石が岩石中に直接結晶ができていくのとは違い、熱水の働きで生じる二次鉱物であることはたしか。なるほど、ユナカイトのなかでこれほど明確な色合いでべつべつにまだらもようのできている原因は鉱物のできかたのちがいだったのか。
いったんできた花崗岩が、深い地の底の高い圧力の状況下で熱水により変成が進んだ結果、明確な斑状組織を残しつつ色合いを加味しできあがったのがユナカイトなんだ(正しく理解できているかどうかは神のみぞ知る)。
二次鉱物とはそういう意味か。
分類を調べてみると
分類上の位置づけを岩石鉱物詳細図鑑(3)に基づいて大分類から順に行う。
ユナカイトについては主要な鉱物である緑簾石として調べると、
10種ほどある化学組成にもとづく分類では、ケイ酸塩鉱物
6種あるケイ酸塩鉱物のうち、ソロケイ酸塩鉱物
8種ほどあるソロケイ酸塩鉱物 のうち緑簾石グループ(epidote)
6種の緑簾石グループのうち緑簾石(もしくはユナカイト)
とたどれる。やはり頼りになるサイトだ。
国内では
ユナカイトについては産業としては国内で採掘していないようだ。手持ちの石はアメリカ産。秩父産とか福島産と称する鉱石の販売のサイトがわずかに見つかる程度。
おわりに
今回はなかなかてごわかった。ユナカイトの位置づけがそもそも二次的な産物ということで、緑簾石でようやく検索することができたぐらい。この原色岩石図鑑は安心して調べられる。
ただしこの図鑑の記載は基本の用語や分類をある程度理解している方が使いよいようだ。
そういえば、すこし前になるがテレビで「ブラタモリ」を放送していた。過去の放送のダイジェスト版で、「日本の岩石スペシャル」(4)だった。過去の放送のなかから新たな映像も交えつつ、日本各地のさまざまな岩石に焦点をあてていた。
この番組、まさに自分の興味対象とかなりの部分がかち合っている。そして毎回のようにタモリ氏の関心の広さと造詣の深さに驚かされている。
追記
上記の番組は2021年4月20日深夜に再放送された。
参考文献・サイト
(1)原色岩石図鑑 改訂新版p.13(1999)保育社
(2)原色岩石図鑑 改訂新版p.236(1999)保育社
(3)岩石鉱物詳細https://spotlight.soy/detail?article_id=ktiypccer図鑑 https://planet-scope.info/rocks/minerals/pyroxene.html
planetscope(https://planet-scope.info/index.html)のひとつのカテゴリ。沢田輝氏(海洋研究開発機構JAMSTEC研究員)運営。
(4)ブラタモリhttps://www.nhk.jp/p/buratamori/ts/D8K46WY9MZ/episode/te/7YW64GMZN2/