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さまざまな樹種を活用し、銘木店がつくった「木の茶室」

銘木の町でありながら、木のよさを味わってもらう場が少なかった鳥飼銘木町(大阪府摂津市)。その地に銘木をふんだんに使ってつくられた、北川銘木店の「木の茶室」は、地域の人々も集まる憩いの場になり始めています。
(「和風住宅26」(2021年7月発行))

銘木を肌で感じる空間。

大阪府摂津市鳥飼銘木町は、その名の通り銘木店が軒を連ねる町。北川銘木店を営む北川須義さんは、煤竹を大量に入手したことを契機に、手元にあった銘木も使い、倉庫内に木の茶室をつくりました。どんな木をどこに使うかを、馴染の建築家・木原千利さんと相談しながらつくりあげたもの。銘木の町でありながら、木の良さを味わってもらうものが少なかったですが、この空間に身を置いて、木の良さを肌で感じてほしいといいます。

煤竹は、茶室では天井に使われることが多いですが、ここでは煤竹で屋根を葺いています。雨のかからない倉庫内の茶室ならではの使い方。茶室内の左側と正面の壁にはきれいな細かい柾目の栂を配置しています。右手障子の上下の壁には楠。長いこと使われていなかったものですが、迫力ある杢目が印象的です。障子の桟は神代杉。袖壁には一枚物の松。床は手前が欅の広板一枚物で、その奥は楠と松。棟木に北山杉磨丸太、桁には檜。さらに茶室の外側の倉庫全体にも杉板を巡らせ、杉で床を張った広間風の空間も設けました。このように倉庫に眠っていた銘木たちが日の目をみることになったそう。

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さまざまな銘木を用いた木の茶室。
倉庫内の壁にも赤白の色味が美しい
杉材を張っています。

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袖壁には松の一枚板。

数寄屋建築に学ぶ。

北川さんは高知出身で、大阪の銘木店に25年務めた後、独立した開業。以来、松と栂を主に扱ってきました。木のことは仕事をしていたら、「自然に身についた」といいます。取引先は数寄屋建築専門の工務店や建築家が多く、その注文に応えられるように努める中で、「どんな松を用意すればいいのか」「何がよくて何がよくないのか」などを勉強させてもらったそう。

綺麗な柾目の松。上品でおとなしい杢が入った板目の松。アテがなく、細かい柾目の栂。そうした銘木を中心として扱ってきた北川さんは、全国の銘木市場を歩き回り、注文に見合う木材を探すこともあるといいます。

現在は施主や工務店からも、難しい材を要求されることは減り、松や栂を使う普請も少なくなったそう。しかし、銘木の価値を知り尽くしているだけに、木の良さを知って欲しいという気持ちは揺るぐことはありません。

この空間は地域の人日が集まる憩いの場としても使われ始めています。この茶室がきっかけとなって、木の良さがより広く認知されて、地域のつながりにも役立てられればと北川さんの思いは尽きません。

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煤竹で葺いた屋根が印象的。

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障子の桟は神代杉。その上下の壁は杢目が美しい楠。

北川銘木店
昭和59年創業。京都迎賓館をはじめ、多くの有名建築などに木材を提供。松と栂を軸に、品質の良い多種多様な銘木を取り揃えています。

(写真/松村芳治)

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