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住宅建築家が口々に話す「写真や図面では伝わらないけれど、とても居心地が良い」永田昌民氏の住宅の魅力

生涯164もの住宅を手掛け、今なおその住宅の魅力と人となりが語り継がれている建築家・永田昌民氏。永田さんが手がけられた住宅は、ひとたびその空間に身を置くと、写真などでは捉えられない心地よさがあるといわれています。

心地よさの正体とはー

その心地よさの正体とは?
なぜ、写真や図面では伝わらないと言われるのでしょうか。
書籍『建築家・永田昌民の軌跡 居心地のよさを追い求めて』の中で、住宅建築に関わる方々が永田さんの住宅の魅力について語り、その住宅の住まい手とその施工者の方の声を紹介。その理由を読み解いていきます。


建築家 益子義弘さんは、本書の「はじめに」で、その心地よさの魅力についてこう語ります。

彼は設計を解きすすめるうえで、上から見下ろす俯瞰的な視点からでなく地に足を着けた目線を心がけていた。(中略)

実際の空間はプランからの想像に違わず、より豊かである。その構成は多焦的なしつらえと言っていいだろう。
写真映りのいい一つの焦点を定めるような見せ場づくりの設え方をしない。包まれた場の全体を大切にし、実際の空間に身を置けば、二次元の写真などには捉えられない多様な視界がその空間に織り込まれているのが感じられる。(中略)

永田作品の特質を言葉にするのはむずかしく、「よいものはよい」のただひと言でよかったのかもしれない。

本書 はじめに より /建築家 益子義弘さん

写真を撮るときのような一つの焦点ではなく、空間のどこにいても、どこから見ても気持ちが落ち着く居場所の重心があるそうです。


1章 居心地のよい住まい

本章では、建築家・建築史家・造園家の6名が、それぞれ永田さんの住宅に赴き心地よさの真髄に迫ります。

建築家 堀部安嗣さん
“この場所にはこの在り方しかない"と身体が自然に納得してしまう配置計画。過不足のない、そしてチャーミングなディテール


建築家 趙海光さん
家をつくることがそのまま町をつくることに直結する。それも特殊な住宅の姿ではなくて、ごく当たり前の住宅の姿として


建築史家 倉方俊輔さん
人間と外界を取り結び、世界を秩序する、神秘的な住宅


建築家 三澤文子さん
暮らしに寄り添うと言っても、おせっかいではなく、逆に『これがいいんだ』と断定して投げかけるような


建築家 横内敏人さん
建築はあくまで気候風土に立脚し、土着的で環境共生的に。日々の生活や感性は常に今日的に


造園家 田瀬理夫さん
内側から外を見てマドを開き、家の中を回遊しながら設計しているんだと実感した


この場所にはこの在り方しかない、と身体が自然に納得してしまう配置計画

「北鎌倉の家」を訪れた堀部安嗣さんは「永田さんの建築の佇まいは、とても聡明で愛らしい。」と話します。
また、心地よさについてはこう語ります。

永田さんの建築は言葉で語ることも写真に表すことも難しい建築であることは永田さんを知る誰もが口を揃えて言うだろう。永田さんの空間を実際に体験した人はその空間の素晴らしさを頭でなく身体で瞬時に感じてしまう、そんなわかりやすさをもっている半面、それを言葉や写真というものに置き換えようとすると、途端に難しくなる側面を持ち合わせている。

本書 1章より/建築家 堀部安嗣さん

  


どこにいても家全体が感じられる 仲間はずれの場所が無い

堀部さんは「この家の上下階の快適性は、階高の低さとスキッププランによるもの。2階にもあっという間に行ける。どこにいても家全体が感じられる。仲間はずれの場所が無い」など、魅力を上げたら枚挙にいとまがない、永田さんの暮らしへのあたたかなまなざしが感じられる、と話しています。


シンプルで簡素で美しい。比率もきれいで余分なものがない

誌面では、施主・施工者の方の声も紹介しています。
「北鎌倉の家」の施主であるご夫婦も、永田さんの住宅の魅力について「すべておまかせして正解だった。家の中にいながら風を感じられて、とても気持ちがいい。」と語ります。
十数年の間に直したのは、竹の縁側とデッキに外塀の一部だけ。ご夫婦がこの家を慈しみ愛されていることが空間からも十二分に伝わります。


施工者側が気にしたり懸念することを承知の緻密な詳細図
全てを背負い込んだ、後にも先にもいない設計者

当時、この施工に関わった伊東進也さんと遠藤光春さんにもお話を伺っています。
「あれだけの詳細図を描いてくる建築家は、そうそういません。永田さんは全箇所、詳細図を描いてきたんです。つくっていきながらじゃないと見えない部分が我々にはあったけど、たぶん机の上で永田さんは全部わかっていた、見えていたんだと思いますね。」
「アルミサッシが1つもない、というのにはしびれましたよね。」
永田さんは現場を大切にしてくれた、というお二人。永田さんの現場を楽しみにしていた大工さんもいたそうです。


施主の声、施工者の声からも伝わる永田さんの人柄や住宅の魅力を、ぜひ本書でじっくりご覧ください。

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