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最愛の君に


出会い

君と出会ったのは20年前くらいだったと思う。

俺は初めて社会人になって2年めくらい
君は大学1年生の同じ職場のアルバイトだった。

あまりにも君が綺麗過ぎたから、
恥ずかしかったけど
仕事終わりに教室の掃除で2人になれたタイミングで

「ごはんでも行きませんか?」

と声をかけた。

ナンパすらできない俺にとっては、心臓バクバクだったと思う。

すべての勇気を振り絞った瞬間だった。

「いいですよ~、ぜひぜひ~!」

いや、断られたならきっと高嶺の花子さんのままだった。

すごく笑顔でそんなこと言われたらもう有頂天でしかないじゃないか…。

たしかはじめての食事デートは「フライングガーデン」(群馬県に多いファミレス)だった気がする。

とにかく嬉しかったな。

あとから知ったことだけど、「ミス○○(高校)」だったとその子の後輩から知らされた。

ほんとに信じられないくらい君は綺麗だったんだ。

上司の結婚式

上司の結婚式があった。

地元ではいちばん有名な結婚式場。

あまり未来のことは考えないんだけど、結婚式で泣いてしまった。

もしみんなに祝福されながら君に愛を誓えたら…って
想像してしまったら

涙が溢れて止まらなかった。

俺は結婚式をしたことがない。

でもこんな気持ちになったのはこれが最初で最後だった。

傲慢

親戚にサラリーマンはいなかった。

父親はTHE亭主関白だった。

君が喜ぶためだったら何でもしたかったけど、

何をしたらいいかがわからない。

ご飯の炊き方すらわからない。

だから教えてほしかったんだ。

何も知らなかったから。

「何でもするから言って。」

でも君は何も言わなかった。

俺が何もできなかったから、

炊事も洗濯も家事関係はすべてやってくれた。

大学も通いながらバイトもしながら。

そんな君を毎日貪(むさぼ)った。

絶対に君を離したくなかったのに、

心の何処かでは

「まだまだ20代だし、上には上がいる」と

慢心してしまっている自分もいた。

最高の人が目の前にいるんだから、

それより上をいく人がいるわけないじゃないか。

でも、困ったことがあったら特殊な経験上分からないから

何でも話して2人で解決していきたかったんだ…。

別離

地元では有名な温泉旅館にも泊まったね。

東銀座で「エンゲージリング」代わりとして、ハート型のピンクダイヤの指輪も、サプライズでプレゼントして喜んでくれたね。

でも俺が間違ってた。

君は大学1年生だし、

どんなに求めても、結婚なんて考えるのは早すぎたんだ。

突然、距離を置くようになった。

毎日一緒にいたのに、抱きしめることさえできなくなった。

「わたしはあなたの家政婦じゃない!」

「わたしはまだ大学1年生なの!」

「子どもだってまだ作りたくない!」

別れる覚悟を決めたのならば、その前に相談してほしかった。

本当に何も知らなかったし、

君の気持ちが知りたかった。

これは悪夢なのかな。

いや現実じゃない、これは夢で、明日になったらいつもの2人に戻ってる。

でも違った。

俺と別れた君は同じ職場の同じバイト仲間と付き合い始めた。

本当、本当につらかった。

別れても同じ職場で働いている以上

「○○さん」と、他人として接することしかできなくなった…。

大好きな人が同じ職場でバイト野郎とラブラブで付き合っている。

女性ってすごいな…。

俺だったら同じことできないな。

別れたら「次の人」のために連絡先すら消してしまう。
(残しとけば再婚できたかもしれないのに、退路があるのが男らしくないと勘違いしてた)

でも、20年の日々と経験を経て思うことは、全部自分が悪かったんだ。

だからせめて「あのときはごめん…」と言わせてほしかったんだ。

未練

その後、何人も付き合ったし、いろいろあったけど、君を超えるくらい好きになった人っていなかった。

例えば美容室も毎月ずっと君と過ごした街に通っていたし、

街で一番大きいショッピングモールを歩いていたら偶然に再会できないかなって…

未だに後悔と未練が消えない。

女々しくてつらいよ…。

君が誰かと幸せな家庭を築いているのなら、それはそれでいいから、

「あのときは本当に俺がバカでごめん…」ってひとことが言いたくて。

最愛の人、最高に愛した人、未だに誰も超えることができない人。

タイムマシーンがあっても、ただ戻りたいとは思わない。

きっとこの20年の経験も記憶も消えてしまったら意味がないし、

同じことを繰り返すだけだから。

経験と記憶をなくさずに過去に戻れるタイムマシーンがあったら、君に告白したあの日を選ぶかもしれない。

でも、いくらあの場所に戻っても、もう二度と会えない気がする。

会うことは叶わなくていい。

でも、「あの頃の自分がクソ野郎だったという事実」を認識するために定期的には「あの街」には戻るだろう。

叶わなかったからこそ俺の記憶の中では美しいままの君でもあるし、願い叶って再会できたとしても、20年もの時を経て幻滅したら嫌だしねw

だから、ずっとずっと「最愛の君」のまま、心の奥底にしまっておくよ!

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これまでほぼ苦難しかない半生でしたが、これからは上がるのみだと信じて活動していきます。苦あれば楽あり。苦労を知っているからこそ幸せに価値を感じるもの。よかったらチップしてもらえると嬉しいです。