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バハレーンのカール

 先日、原宿の駅前にあるWITH HARAJUKUというところにはじめて行ってきました。日本・中東3か国(アラブ首長国連邦・オマーン・バーレーン)外交関係樹立50周年記念文化イベントなる催しがここで行われていたからです。1月に同じ枠組で50周年記念シンポジウムも開催され、こちらのほうには私も登壇して、日本と湾岸3か国の関係について話をしたこともあって、文化イベントにも参加せねばということで、原宿という私にとっては場違い感たっぷりの場所に妻といっしょにいってきました。
 会場にはUAE、オマーン、バハレーンの3か国のお土産物や特産物などが展示され、売っていたり、無料で配られたり、アラビア文字で名前を書いてくれたり、ヘンナーをしてくれるサービスもありました。これら3国とも、これまで何度もいったことはあるので、とくにそそられるお土産はなかったんですが、それでも食べ物を中心にいろいろ収穫がありました。また、文化イベントらしく音楽の演奏などもあり、それなりに楽しくすごさせていただきました。

UAEの有名な楽団

 会場でバハレーンに関するクイズ大会があり、妻が正解を出して、バハレーンのお土産セットを獲得しました(白状すると、夫が答えを教えました)。そのなかにバハレーン製の「プファク」というお菓子が入っていました。写真でもわかると思いますが、日本のスナック菓子の「カール」と似ています。味もチーズ味でカールと同じです。ただし、アラビア語にはPの音がないので、アラビア文字の表記は「ブファク」になっています。いちおうバハレーン製とはなっていますが、商品名にアラビア語にないPの音を使っていたり、そもそも「プファク」にしろ「ブファク」にしろ、アラビア語にはない言葉です。

バハレーンのプファク

 中東研究センタの同僚とこのお菓子を食べながら、あれこれ議論していたんですが、そのうち同僚のイラン専門家が、イランのオンライン・ショッピング・サイトでも売られており、お菓子を中心とするイランの食品メーカー、ミーヌー製造グループMinoo Industrial Groupが同名のお菓子を作っていることを教えてくれました。ミーヌーはチョコやガム、クッキーなどを作っているお菓子の総合メーカーで、いろいろ見ていると、キットカットや日本のプリッツのパチモンみたいなヤツやディズニーのキャラクターつきのものありました(ディズニーの許可を得ているんでしょうか)。
 そして、製品紹介のなかにプファクを見つけました。ペルシア語だと、「ポファク」と発音されるんでしょうか。

イランのポファク

 で、グーグルで検索したら、Wikipediaにちゃんと「ポファクپفک」の項目がありました。それによると、このポファクがいつのころからかこの種のお菓子の共通の名前になったそうですので、どうやらこのポファクがバハレーンのブファクの起源かもしれません。
 そのWikipediaで引用された記事に面白い話が載っていました。それによれば、もともとは米国のトルコ系ユダヤ人移民2世のモーリー・ユーハーイーが1950年代はじめに発明し、ニューヨークのブロンクスで「チーズドゥードル」の名前で売り出されたんだそうです。彼の会社は、のちに日本でも有名なボーデンに売られ、それがこのスナックが広く知られるようになったきっかけだということです。
 チーズドゥードルは1960年代にはイランに上陸しており、1970年代はじめにはイランでも作られるようになり、上述のミーヌーがポファクの名で製造販売したといわれています。
 ただし、米国のフリトレーのチートスのほうが早く、1948年に製造開始していたという説もあります。個人的には、何の根拠もなく明治製菓のカールが起源だと思っていて、プファクはカールのパクリじゃないかとも考えたんですが、どうやら違うようです(ちなみにカールの発売は1968年)。
 さらに調べてみたら、バハレーン以外の湾岸アラブ諸国にも同じようなお菓子があるのがわかりました。クウェートとUAEではバハレーンと同じプファク、オマーンではポファク、カタルではパフキーという名で同じようなお菓子が売っていました。ただし、サウジアラビアだけは、まったく違う名前でした。しかも、パッケージがあやしすぎ。

 さて、問題はプファク、あるいはポファクの意味です。これがわかりません。Pufakで検索すると、ウズベク語で「泡」という意味が出てきます。発明者の1人がトルコ系ということから、プファクの由来はこれではないかと思ったのですが、Redhouseのでかいトルコ語の辞書をみても、その音に近い語は見つかりませんでした。もちろん、アラビア語の辞書でも出てきません。
 となると、残るはペルシア語ですが、実際、ペルシア語だとこれに近い語として、「息を吹くこと」「膨らませること」を意味する「ポフpof پف」という語があります(英語の「puff」と同じ)。ちょっと音は違いますが、この種のお菓子の製造方法を考えると、これじゃないかなあと思います。根拠はあまりありませんので、ご存じのかたがいらっしゃれば、教えてください。
 なお、冒頭に触れたイベントにきていた旧知のかたから後日、UAEでバカ売れだという「うまい棒」をいただきました。これも広い意味でカールやプファク、ポファクと同じ「コーンパフ」に分類されます。中東の人はこの類のお菓子が好きなんでしょうか?写真だとわかりづらいですが、アラビア語でも「うまい棒」って書いてあります。ちなみに、こちらは日本からの輸入です。

UAEのうまい棒

(保坂修司)


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