あの日見た夢〜性産業従事白ウサギ編〜
思い出せない、思い出せない、どうしたって思い出せない。
「きれいにコロンっと出てくる耳垢がたのしく、妻の耳掃除をせがんで見せてもらう夫」の記述。どこで読んだのか全く思い出せない。
エッセイ?小説?webメディア?Twitter漫画だろうか。昼休憩中に流し読みしたネットニュースだろうか。ここ数日、石丸伸二氏のアンチ記事を多く目にしたように思うが……まさかお前……!?
『耳垢ベチャベチャしてないのか〜奥さん健康なんですね』
なんてそこじゃねぇだろ……なコメントまで覚えてるのだ。それなのになぜ……
一度気になったら脳の片隅にへばりついて離れない。
他シートからマクロ転記する際の留意点とか、そんな忘れたが最後大事故不可避案件は聞いたそばから抜けてくくせに、くだらなければくだらないほど執着するのだからほんとうに損な性分である。
さてSafari履歴のしらみつぶしにも飽きにっちもさっちもいかなくなったらどうするか。
「これ、夢だな」の発動である。
耳垢極度乾燥奥方絶見夫、これはきっと私の夢に出てきたエピソードなのだ。考えれば考えるほどそうとしか思えない。私の見る夢というのはこういう、地味なトンチキが光る作風なのだ。フーン……で?で終わる小話の寄せ集め。
基本的に自分が登場人物として出てくることはなく、傍観者としてワンシーンワンシーンを見ているものだから夢の内容を映画や小説と間違えることは無きにしもあらずだった。
ただ、私もごくまれに自分自身が主人公として登場する夢をみることがある。
そういった夢は高確率でエキセントリックかつセンセーショナルになるため「なにやらとんでもない目に遭った」と朝から虚脱感に襲われるのだが、どんな夢をみてもダントツの「とんでもない目」であった2019年11月9日の夢には敵いそうもない。
性産業従事ウサギinAV工場、18時間ケツ掘られ耐久の巻である。
そう。
性 産 業 従 事 ウ サ ギ i n A V 工 場 18 時 間 ケ ツ 掘 ら れ 耐 久 の 巻
である。
ウサギといってもネットのエロ広告で見かけるような人型バニーお姉さんではない。
小学館の図鑑NEO〔新版〕動物に載っている、あの兎形目ウサギ科ウサギ亜科のウサギである。
色は白。元来いきものへの興味が薄い私は耳の垂れたり毛が長かったりという洒落たウサギの出力が困難だったようだ。
ベルトコンベアに乗せられた何百、何千、何万羽というウサギたちは皆そろって白ウサギ。私もその一羽となっていたとは今でも怖気が走る。
そう、AV工場とはヒト(今回は例外的にウサギ)をモノ化し効率的に利潤を得ようとす資本家のシステムの暗喩ではない。あちらの世界では商品をベルトコンベアに流し機械作業で犯しあげてゆく、言葉通りの工場生産が行われていた。なんたるライブ感!我が夢ながら恐ろしい。
そもそも私は酒!!薬!!セックス!!が蔓延るアンダーグラウンドなウサギ界を正すため、現地調査に足を踏み入れたのである。ドクターの怪しい薬を飲んでみたらばあらふしぎ!寸分変わらぬ白ウサギに大変身、したはいいものの窮地に陥った仲間に売り飛ばされ、気づいたときには他のウサギとまとめてタコ部屋だ。
「ねぇ、聞いた……?私たち、『アレ』されちゃうらしいよ」
「いや、あんな目に遭うなら死んだ方がマシよ!」
「ロープ、誰か!ロープを!!!!」
「あ、アレってなんすか……?」
「「18時間ケツ掘られ耐久」」
ベルトコンベアに乗せられた何百、何千、何万羽というウサギたちは皆そろって白ウサギ。ヒクヒクと鼻を動かしながら、じっとそのときを待っている。
ヒクヒク、ヒクヒク、ヒクヒク、ヒク、ヒク………
完