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全日本ロック駅伝 ライブレポ⑤

第4区 原田茶飯事

フラッシュくんのライブ中、配信のモニターを観ながら「あれ?」と思った。
もしかしてこれ、無料で観れる状態になってる?!
通常のツイキャスの配信では30分で切れてしまうのだけど、コンティニューコインというアイテムを視聴者から5枚もらえるともう30分延長になる。
「あと○枚で30分延長」という文言を見て、おかしいと思った。
有料のプレミア配信では時間制限なんてないはずなのに、、、
そういえば観ている人の数も売れたチケットの枚数より多い。
うむ、間違いない。これはチケットを買っていなくても観れる状態で配信してしまっているぞ!

プレミア配信に切り替えるには一旦この配信を終了しなければならないので、フラッシュくんのライブ終了まではそのまま配信することに。買ってくれた人には本当に申し訳ない気持ちで落ち込みつつ、気持ちを切り替えて転換中にアナウンス。
まずはここまで無料で配信してしまったことをお詫び。一旦終了して、プレミア配信に切り替えてからはチケット買った人にしか観れないので、まだ買っていない人はぜひはチケット購入お願いします、と。

その間にもコメントが届く。
どうやらチケット買いたくても公開中の録画がないため購入できない状態らしいのだ。
とりあえず配信を終了してプレミア配信しなければ。チケット買って後で観ようと思っていた人も観れないことになってしまう!
しかし、何回やってみてもプレミア配信に接続できない…汗
後に調べたら、OBSなどの外部ツールを使ってのプレミア配信はちょっとややこしいやり方をしなければいけいことがわかったのだが、その時は落ち着いて調べる余裕もなく。。
茶飯事くんと電話で相談。このまま無料配信でいいよと言ってくれたのです。
本当に情けなくて申し訳なくて泣きそう。けど折れそうになったぼくのこころを視聴者のみなさんが救ってくれました。

「買ったけど、楽しんでるからオーライ」
「みんなで完走しましょうー」
「ウッドストックみたいにしよう」

こんなやさしいコメントにまた泣きそうでした。
もう絶対みんなで完走しようぜー!
「第4区、東京から原田茶飯事です。お願いしまーす!」

茶飯事ピンク

スクリーンに映し出されたムーディーな部屋。
ピンクと紫に明滅する照明が壁を照らす。パーテーションは普段レコーディングに使ってるものだろうか、幾何学模様がとてもポップ。鮮やかな青紫のベーレー帽とセーターを身につけた茶飯事くん。愛器のガットギターの薄黄土色のボディーには赤いタスキがしっかりとかけられいる!
質感が統一され、鮮やかな配色の画面は、それ自体が絵画のようだ。
個人的には幼い頃観た日曜朝のロボット特撮シリーズ(ロボット8ちゃんとか、ペットントンとか、40歳以上の人しか知らないかも)を想起させるようなノスタルジックな雰囲気がサイコーにかっこいい!
そんな色合いをそのまま溶かし込んだような甘く切ない響きのギターをおもむろに弾き始め、まずはあいさつがてら「めちゃくちゃに〜すべったとしても〜メガネは外さない〜」と即興の歌詞でフラッシュくんからタスキが繋がったことをアピールして、そのまま1曲目「終末のドライブ」へ。
こういうライブのはじまりかた、まさに茶飯事くんらしいつかみで、会場にいたお客さんは一瞬で引き込まれました。同じ配信ライブでも、ライブハウスのフロアで、大きなスクリーンの映像とスピーカーから流れる触れそうなほど太い音に包まれたら、もうそれはスマホで観るのとはまったく違う体験といっていいと確信。いまここで原田茶飯事のライブがはじまったんだ!という興奮が止まりません。
茶飯事くんとは何度もテスト配信で音質や画質の調整を重ねてきたけど、本番で見せる集中力、表現力の高さはまったく別次元です。そしてやっぱり表情がとてもいい!茶飯事くんにはきっと大分アトホールと全国津々浦々の沿道からの声援が届いているんだって、うれしくなってしまうようなやさしい笑顔。それは勝手な空想であっても、その勝手な空想をさせてくれるのがプロの手腕というものだから、さすがの百戦錬磨だなぁ!

「大分のみなさん全国のみなさん、間奏で一緒に思い思いにうたいましょう」と予告して
2曲目は「始発」。「朝まで頷いて / 駅まで送るから / 美しい弔辞がいつか / ぼくにも届くのだろうか」なんていうやさしさと死生観でうたい出す。普段は立ってうたう茶飯事くん、その全身を使ったパフォーマンスが武器でもあるんだけど、こんなふうに座ってすぐそばでうたってくれる感じがぴったりの曲です。不特定多数に向けられいるはずの歌が実はひとりひとり、一対一で届いているように感じる。
それにしても茶飯事くんの家のADSL回線、強力です。全然止まらない!そして待ってましたの間奏タイム。「大分ー!」「全国ー!」と煽る茶飯事くんにあわせて、きっと全国の沿道のあちこちから声が上がっていたことでしょう。コメント欄は一斉に「ララララ〜♬」の文字(笑)

3曲目はぐっとテンポが上がって「とおせんぼ」。テンポ感のせいだけでなく、なにか急き立てられているような焦燥感も感じさせるのはきっと歌詞のせい。無意識に「とうせんぼ」してしまっている様々なシチュエーションが俯瞰して描かれていて、この歌詞が持ってる皮肉は並みのセンスじゃない。全部載せたいくらいの素晴らしい歌詞なんだけど「あてずっぽうで名前を呼んでも / 幸せが邪魔で聞こえない」という一節がグサリと胸に刺さる。こんなふうに世界を捉える茶飯事くんの観察力がちょっと怖いくらいです。

MCもライブの大事な要素になってる茶飯事くんだけど、それは配信ライブでも遺憾なく。キャッチボールできない状況でしっかり語りかけてくれるのはさすが、コロナ以降ずっと配信ライブを続けてきた賜物ですなぁ。(毎週木曜22時か茶飯事くんのInstagramで「原田茶飯事の茶柱10万本」というライブ配信が見れます!ぜひチェックしてみてください)
ロック駅伝出演者のみんなに特典音源のダウンロードに必要なパスコードを発表してもらっているのだけど、茶飯事くんはちゃんと紙に書いてわかりやすく、しかも冗談まじりに発表してくれて、ぬかりない男や!

つづく4曲目。「孤独はめちゃくちゃ得だ、孤独はいい、便利だ。そんな曲を…」といってはじまったのは「うたはぬり絵のように」。切ないメロディーと「変わり者のうたを聴いて 変わり者が手を叩く」という歌詞が印象的で以前から大好きな曲だったけど、そんなふうに孤独をほめたたえる曲というイメージはなかった。こんな歌詞がある。
「努力をしてきた友達は / いつまでもここにはいない / あたりまえのことを聴かせたい / 孤独は歌になる」
具体的にどんなシチュエーションなのかはわからないが、一種の諦観のようなものが曲全体を貫いているように感じる。挫折と諦め。だけど残り1パーセントのわずかな希望がまだ残っていて、ろうそくの灯りのように揺れている。それがどうしようもなくやさしい。きっと100パーセントの希望の歌より、真実に響く。
茶飯事くんの歌にはどれもちょっとした毒が含まれているような気がする。それが不思議と薬になったりするのだ。
「増えすぎた / 詩人がくれるのは / ぬり絵をするより / やさしいことばかり」
こんな皮肉も、まるでひとつまみの塩があんこの甘さをより引き立てるように、曲全体をひきしめているみたいだ。

そして5曲目、歌い出すまでなんの曲かわからないほど全然違うアレンジではじまったのは「太陽」。原曲はドラマチックな場面展開がグッとくるストーリー性溢れるメロウな曲なんだけど、今回はぼくのボキャブラリーでは何て表現していいかわからない、ファンキーでグルーヴィーでとにかくかっこいいリズムで一貫されていて、ギターだけで聴いたらたぶん最後まで何の曲だかわからなかったと思う。茶飯事くんといえばこの曲!というくらいの代表曲のひとつなのにこんなふうに料理してしまえるなんて、、なんて度胸だろう!しかも無理やりやってる感じがしなくて、初めて聴いた人はこのバージョンで好きになってしまうだろう。あんな難しそうなギターのフレーズをさらっと弾きながら、複雑な譜割の歌を乗せてくる茶飯事くんの力量といったら。すごいことやってるって思わせない感じがまたすごいです。ぼくは割と一度決めたアレンジは変えずにやる方なんだけど、茶飯事くんの場合はただ自由ってだけじゃ片付けられない、完成した自分の曲でも熱心に探求する姿勢があってこうなってるんじゃないかと思う。以上を踏まえて今回はじめて「太陽」を聴いた人にはぜひ原曲もお薦めしたいです!

茶飯事セッション


電話をつないで少し話してから最後の曲はいよいよThe Old&Modernsとのセッション。
事前の打ち合わせで茶飯事くん曰く「ぼくの曲の中で一番駅伝っぽい」という「どうかしてるぜ」を。どの辺が駅伝っぽいのかは結局わからず仕舞いでしたが、この曲がロック駅伝のひとつのハイライトになったことは間違いなかった!
茶飯事くんはひとりで、一定のテンポで演奏することを心がけてやっていた、だけではなく、聴こえなくてもきっとぼくたちふたりの演奏をイメージしながらやっていたんだと思う。イントロは空中ブランコが大きな弧を描くように、ぼくらが曲に飛び込んでいくのを静かに待っている感じ。歌がはじまると心なしかいままでよりも滑舌をはっきりとうたってくれているみたい。ステージでは振り返らずに音に集中して合わせていたけど、ぼくが「幸せになれるって思う」というフレーズでハモると、不思議なことにスクリーンの茶飯事くんがこっちをちらっと見て微笑んだではないか!もしもそれがコーラスをイメージしての演出だとしたら、茶飯事くんすごすぎるわ。。
アルバム「いななき」の1曲目であるこの曲は、元々アップテンポな曲なんだけど、遠隔セッションしやすいようにかなりおそめに演奏してもらっている。茶飯事くんの曲の中ではシンプルな構成の曲なんだけど、それでも中々複雑。もしもの時に楽譜を確認するためか珍しくメガネをかけてた森ちゃんだったけど、スクリーンを照らすためにステージはかなり暗めで、きっと何も見えなかったんじゃないかな。伝わって来る緊張感がすごい。
茶飯事くんに合わせる以前に、ぼくらふたりの息があっていないとどうにもならない。前半は若干硬めだったけど、ソロパートで「ヒライマサヤ!」と紹介されると一気にテンションが上がった。ソロのフレーズは何も考えていなかった。こういう時は絶対そのほうがうまくいくのだ。どんなに練習しても必ず間違えるものだけど、即興のほうが間違えた時の反応が早くて柔軟。そもそも即興には間違いということ自体がないから思いっきりいけるのだ。
続いて「ベース、森ちゃーん!」の合図でちょうど森ちゃんのリズムが変わる。ソロってほど派手ではないけど、あらかじめ送っていた練習の音源を聴いて紹介してくれたのだろう。森ちゃんの音がそこから変わった気がした。考えるのやめて吹っ切れたって感じ。
さらに「ワン・ツー!」の掛け声からララララララ〜の合唱。このあたりの盛り上がりは本当にこの場に茶飯事くんがいないことが信じられないようなシンクロ率でした。演奏は若干のズレはあったかもしれないけど、それでも一緒にやってる空気は全然損なわれないような。こうして茶飯事くんとのセッションも大成功で、たまらずまた電話かけてしまったのでした。これを会場で、そして配信で観てくれたお客さんにはどうか自慢してもらいたい。なんかすごいもんみた、と。

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茶飯事くん、準備から本番まで本当にたくさん無理言ってごめん。第4区、素晴らしかったです!ありがとう!
そしてロック駅伝のタスキは最終区のThe Old&Modernsへ繋がったのです。(うっかり茶飯事くんとのセッションの時からタスキかけてやってしまっていたけど)
つづく

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