全日本ロック駅伝 ライブレポ②
第1区 サイキシミン
大事な第1区を彼らにお願いして、本当によかった。
スタート直前、なんと赤フン山岡くんが白い手袋をはめ、真っ赤なタスキをかけてステージ上でストレッチしているではないか!この実物のタスキの演出。本来ぼくが用意するべき所、自主的にやってくれたサイキシミンのノリの良さはイベント全体のクオリティーを一段持ち上げてくれたといっても過言ではない。
「さあやって参りました全日本ロック駅伝。既に他校の選手は走り出しておりますが、サイキシミン大学外人選手のアカ・フン選手、まだまだ余裕を保っております!」とボーカルギター、大谷くんの実況(笑)「全日本ロック駅伝スタートー!!」の掛け声とともに一曲目、「うなだれる底辺」になだれ込む。
フロアーのお客さんはまばら、配信を見てくれているお客さんの方が多い状況だったけど、ぼくのテンションは一気に上がり、思わず飛び跳ねてしまった。
サウンド面ではボーカルギター、ベース、ドラムのシンプルなアンサンブルなのに、なぜかとっ散らかっているようなカオス感はどこからくるかのと言えば、やはり赤フン山岡。
一曲目では終始、ステージ中央に向かって走り続けていた。適度にたるんだ肉体が揺れる。しかもよく見るとなんとなく曲のリズムに合わせて走っているでようだ。そんな細かい演出のおかげなのか、見ていて弾む気持ちになる。それにはドラムひかるくんのリズムが細かく踊っていることも大事な要素で、まるで二人で叩いているみたいにちょっとズレる所も気持ちいいのだ。
続いて2曲目「赤フンの運命」。そういうタイトルの昭和の総天然色映画の主題歌みたいな、懐かしかっこいい赤フンボーカルの曲なのだが、残念なことに滑舌が悪いのか声の抜けが悪いのか、歌詞がよく聴き取れない。たまに聴こえて来る言葉の断片から推測するに、たいして重要なことはうたっていないようだ。クールな演奏との対比がかっこいいのだけれど、配信を見ているお客さんから「コマ送りに見えますが演出ですか?」とのコメントが。原因は回線の問題だと思われるのですが、確かに演出なのかな?と思うような、歌詞のくだらなさと、コマ送りの画像がなぜかマッチしてちょっと素敵なスライドショーになっていました。しかし、一番恐れていた回線トラブル。現場では冷や汗をかきながらなんとか持ってくれと祈っていたのです。
続く3曲目「PAマイクについてのお願い」はミキサー卓やマイクの取り扱いに関する注意点を赤フンがひたすら絶叫するハードコアナンバー。その発想もすごいけど、赤フンのちょっと気持ち悪くらいのキレっぷりがかっこいい。一番機材の取り扱いが雑そうなやつが一生懸命お願いするようすはかなりシュールで刺激的、逆に機材をぶっ壊したくなるほどのカタルシスを感じる。
4曲目「仏壇のダンスホール」。ここにサイキシミンの素晴らしさがぎゅっと詰まっていると思う。ひかるくんのにぎやかなラテンノリのドラムをしゅうとくんのツボを押さえたベースが貫いて、そこに大谷くんの歌。
「世界最高の音楽は / ふとした所に落ちていて / とぎどき私は拾えるの / 苗場じゃなくても拾えるの / 仏壇のダンスホール / ミラーボールが回ってる / 仏壇のダンスホール / 仏様も踊りだす」
田舎のインディーロックバンドの矜持とも言える歌詞は秀逸。そして赤フンがホイッスルを吹き鳴らしながら激走する。サビではテンポが倍になって、もう駅伝というより100メートルダッシュだ!
しかしここでもいいところで所々映像が止まる。。赤フンの体力とWiFiの限界だ。
回線をアトホールのWiFiから予備のポケットWiFiに切り替える。
いい流れを切ってしばしの休憩タイムになってしまい、サイキシミンにもお客さんにも本当にもうしわけなかったです。給水しながらなんとか最後まで走ろう!
一時中断の後、名曲「街」。
オーティス・レディングから、忌野清志郎、そしてサイキシミンへと受け継がれたソウルミュージックの遺伝子。「帰る場所はこの街しかなかったんだ / ライブハウスもないこの街に / 誰も聞かないこの歌は / パチンコ屋の音に吸い込まれた / この街がこの街がこの街が大嫌い」大谷くんは小手先でギターソロを弾かない。ソロだ!と思ったらたぶんそれはファズで歪んだしゅうとくんのベースだ。結局コードを掻き鳴らすしかない、弦を一本ずつなんて弾いてらんない衝動をそのままギターにぶつける姿に嘘はかけらも見当たらない。
赤フンは仁王立でマイクを握り締め、最後ののシャウトに備えて力を溜めている。「この街が大嫌い」という反復がどんどんエネルギーを増して大きな渦になっていく。最後まで好きだなんて言わない屈折したラブソングに、配信を見ていたお客さんもたくさんの拍手を送ってくれました。
そしてラストは「バカの歌」。自分の才能に失望しながらも止めることはできず「世界を変えるデタラメを今日も口から吐き続けている」。この曲で特筆すべきは赤フンのハーモニカの美しさだった。ライブの前に書いた「間違ってるかもしれない出演者紹介」で、ぼくは赤フンのバンド加入について「音楽性にはあまり影響は与えなかったと思う」なんて書いてしまったけど、それは大きな間違いだった。こんなハーモニカはなかなか吹けるもんじゃないし、これがあるのとないのとでは曲の景色がまるで違う。赤フン山岡、すごいぞ!
さらにぼくはこんなふうにも書いていた。「山岡くんはとても普通の人だと思う。だけどふんどし一丁でがんばってバカをやってる。ステージでのその所在なさがたまらなく身につまされる。」すいません間違っていました!山岡はかんばってバカをやっているんじゃなく、バカなんだと思いました。そして普通の人じゃなくていい奴なんだと。
最後はメンバー全員が「うおおお!!!」と雄叫びをあげて見事第1区を走り抜けました。ありがとうサイキシミン!素晴らしかったです!
(つづく)
コメント