全日本ロック駅伝 ライブレポ④
第3区 FLASHザ徒歩5分
「FLASHザ徒歩5分、お願いします!」といっても、すんなりはじまるフラッシュくんではなかった。なんだかギターの音を確かめるようにじゃらじゃやら鳴らし、(曲がはじまったのかな?)と思ったら、やめてギターアンプのつまみをちょっといじって、(これはまだはじまっていないのかな?)と思ったところで突然うたい出しかと思ったら、その歌詞はいま思いついたことを即興でうたっているみたいな歌。だけど時々「子供の成長はうれしいけれども / 子供を早く大人にしたいわけではないのだ」みたいな胸に響くフレーズが飛び出す。かと思ったら「本当はEとGとDとEで曲を作りたかっただけ〜」と展開してこの歌のコード進行が、E G D Eの繰り返しだったことを理解する。サビの歌詞はそのまま「 / い〜じ〜だ〜い〜」。いきなり一曲目からとんちの効いた、真面目なんだか冗談なんだかつかみどころのないフラッシュくんの本領発揮です!
配信がカクカクになってしまうことを人力で再現しようとしたり、カメラ映りを気にしてステージを降りてカメラに寄ってきたり、じゅんくんとはまた違う方向に自由な立ち振る舞い。ぼくも目の前でライブが見れるのがうれしくて思わず話しかけ過ぎました、ごめんなさい。
すると何かを話している途中で2曲目「ねえ?神様」のリフを弾き始める。
美しい4小節のフレーズをマシンを使ってループさせようとするんだけど、なかなかうまくいかない。3度目にうまくいったときには「おお!いい!」と客席から歓声。計算なのか、偶然なのかわからないけど、いつの間にか会場との一体感がすごい笑。
そのまま何周かリフが流れ、普通だったらこのリフに重ねて曲が進むんだろうなと思いきや、ピタッと止めてギターの弾き語りがはじまった。だったらループさせる必要なかったんじゃ?!と突っ込みたくなるが、そんなこと関係ないくらい素敵な曲なんですよ。
「ギターが歪んだり あの子の手がやわらかかったり ごはんがあたたかったり 帰ったら電気がついてたり…そんなご褒美を おれは欲張りだ 世界一の」
そして忘れた頃に再びイントロのリフが流れ出し、撫でるようにそっとソロを弾きはじめる。かと思ったら、リフをかき消すほどの音量でギターをかき鳴らすという病的に感情の起伏の激しいプレイがあけると、思い出したようにまたリフが聴こえ出す。
一曲の中でめまぐるしく場面が展開して、まるで短編映画を見てるみたいでした。
3曲目は娘がピアノの発表会で弾いたという「大きなノッポの古時計」をギターインストで披露。弾きはじめた瞬間、会場の空気が一変する。誰もが知っているその曲がひとりひとりの心の中で再生されはじめたみたいに。派手な飾り付けなしのアレンジにどんどん引き込まれる。途中「おじいさんと一緒にチクタクチクタク♪」のところをハーモニクスだけで表現するのは、さすがフラッシュくんという職人技。
「ドヤ顔をしたいんですがカメラが近すぎてためらうって歌でした〜」と茶化して終わったかと思ったら「来年あたりまでには仕上げたいと思いますのでよろしくお願いします〜」なんていうので思わず(仕上げてから来いー!)と突っ込みたくなるけど、フラッシュくんらしい照れ隠しなんだろう。
続く「いい夢を見たいなら」。これはフラッシュ的弾き語りのひとつの到達点だと思う。ギターがしっかりリズムを刻んで、歌がはっきり聞こえて、歌の合間におもわずうなってしまうような小気味いいフレーズを挟み込む。「いい夢を見たいのならトイレはすませておきましょう」というかわいい歌い出しなのに、「きみは今夜どんな夢を見てるのかな?夢はきみを今夜どこに連れてってくれるの?」というサビでは気がついたらセンチメンタルな気持ちになっている。それから曲を中断してニット帽を脱いで中から何か出すのかと思ったら、かぶり直して胸ポケットからカズーを取り出して吹き出すんだから、いま自分が見ているのが何なのかわからなくなってくる。「あしたもし目が覚めて / 本当の朝が来とけばいいのにね」なんて決め台詞まで。こんな曲フラッシュくんにしかできないよなぁ!
そして急にギターの音がソリッドになって「メガネイズマイライフ」で一気に盛り上がる。振り返るとここまでアップテンポな曲が一曲もなかったことに気がつく。フラッシュくんのライブはひとことで言うとおもしろくてかっこいい。その2大要素がぎゅうぎゅうに詰め込まれた曲だ。途中で「M・E・G・A・N・E メガネ!」とウインクの「淋しい熱帯魚」の振り付けまでして楽しませてくれるが「このすべるタスキを4番手の原田茶飯事さんに送ろうと思いますのでよろしくお願いします〜」というあたりにロックスターの余裕を感じてしまう。配信ではじめてフラッシュくんを観た人は最後の「大分で一番流行っているロックンロールナンバーです」という一言もまんざらうそではないと思ったに違いない。
6曲目、最後は「天気がよくてうれしいぜ」。
不思議なことに、フラッシュくんはどれだけ熱唱しても暑苦しくない。全力でやっているんだろうけど、必死には見えない。「全力でやってます」なんてアピールはお客さんには邪魔なだけだし、全力だろうがそうじゃなかろうが、どっちでもよいのだ。ただ、ぐっとくるかどうか、だけが大事なのである。
フラッシュくんがライブで大事にしてることって、そういうことなんじゃないかなーって勝手に想像してしまう。そんな想像をさせてくれる「間」がフラッシュくんのライブにはあるのだ。むしろその「間」こそがフラッシュくんのライブの醍醐味なんだと思う。音は鳴っていなくても、続く余韻。それはみんながそれぞれの夢を見る時間。そういえばフラッシュくんの曲には「夢」ってことばがよく出てくるよなぁ〜。。
なんてのんきな余韻に浸っている場合ではない事態が、実はその時現場では起きていたのですが、それはまた次回詳しく。とにかくフラッシュくん、素晴らしい演奏ありがとうございました。たくさん話しかけてごめんね!
(つづく)