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③天使セラフィーナの授業『所有欲とは』

天使大学で『人間学』という興味深い講義を受けることになったエリアルは、天使にはあまり馴染みのない『孤独感』という概念をセラフィーナ教授から学び、少々頭が混乱していた。

続けて、セラフィーナ教授が話し始めた。

「今日の講義では、もうひとつのテーマをとりあげます。この『分離』の概念に焦点を当て、それが人間たちにどのような影響を与えているのか、掘り下げていきましょう。」

『孤独感』の次は、どんな概念が出てくるのか?

エリアルは、期待と興奮でワクワクしていた。

「では、みなさん、「所有欲」とは何か、分かりますか?」

セラフィーナ教授の質問に、ちらほら手を挙げる生徒もあったが、多くの生徒が首をかしげていた。

「物を欲しがる感じじゃないですか?」という声が、教室の後ろの方から聞こえた。

セラフィーナ教授はうなずきながら話し始めた。

「その通りです。

所有欲は、自分に不足があることを感じ、何かを獲得したいと欲する気持ちです。

不足だと感じるものは、物質的なものだけではありません。人間関係や経験なども含まれます。この『所有欲』もまた、「分離」の感覚から生まれる欲望の一つです。

それでは、もう少し深く考えてみましょう。

なぜ人は所有欲を感じるのでしょうか?」

生徒たちが考え込む中、一人の生徒が手を挙げた。

「物を持つことで安心感が得られたり、他の人と比較して自分の価値を感じられるからじゃないでしょうか?」

セラフィーナ教授は感心そうに頷きました。

「素晴らしい洞察です。『所有欲』は、ワンネスの世界にいる天使には、理解しにくい概念ですが、よく人間を理解していますね。

所有欲は、不足を補いたいという気持ちから生まれます。不足していると思う物を獲得することで安心感を得ることや、他者が持っていないものを自分が持つことで、比較による自己価値を感じようとする欲望に由来します。これもまた、分離という感覚から生まれるものなのです。」

すると、別の生徒が質問を投げかけました。

「でも、教授、分離が存在しない天使は、物を持つことや他者と比較などしなくても十分に幸せなのに、なぜ敢えて、人間界では、「分離」をつくり、所有欲や安心感を感じる必要があるのでしょうか?」

セラフィーナ教授は微笑みながら答えます。

「それが興味深いところですね。
我々、天使は、「分離」の概念がないために、物理的な所有や他者との比較による評価が存在しません。天使の世界では共感と調和に満ちた状態で、常に幸せを感じることができていますね。

しかし、一方で、人間が経験するような深い感情や学びが天使には体験できないと言えます。分離から生まれる欲望があることで得られる経験や、できる体験、感じられる感覚が、人間界にはあるのです。

例えば、孤独を感じた後に、つながりを感じた時の喜びはひとしお大きなものとなります。」

生徒たちは教授の言葉に興味津々といった表情を浮かべていた。

セラフィーナ教授は、生徒たちとの対話を通じて新たな洞察を広げ、話は更に深化して、次なる展開へと進んでいくのです。

セラフィーナ教授は微笑みながら続けました。

「次回の授業では、『分離』が人間界においてどのように作用し、どのような影響を与えるのかをさらに詳しく掘り下げていきます。その中で、みなさんがお持ちの疑問や気づきにも答えていければと思っています。分離の向こうに広がる世界を、一緒に探求していきましょう。

それでは、また次回の授業でお会いしましょう。」

生徒たちは興奮と好奇心に満ちたまなざしを浴びながら、教室を後にしました。教授の言葉に触発され、それぞれが次回の授業に向けての期待を抱えていました。

教室から出ると、明るい光が彼らを迎え、天使たちは羽ばたく準備を整えていました。友達同士で予想や感想を交わしながら、エリアルと仲間たちは未知の知識を求めて大学の庭を歩き出しました。

「次はどんな驚きが待っているんだろう?」と、エリアルは仲間たちと共に次の授業に期待に胸を膨らませました。


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