読む、 #ウェンホリ No.04-03「お金を稼ぐ仕事、心を豊かにする仕事」
<No.04-02から続く>
堀井美香さんが考えるこれからの働き方
宮治:でも、そんな堀井さんなんですけど、これからどんな声の仕事をしていきたいですかね?(笑)
堀井:いきなり質問?(笑)
宮治:いや、刀で返されるのがわかったから(笑)。もうズバッと斬っておこうと思って。『朝ズバッ!』って(笑)。
堀井:懐かしいですね(笑)。
宮治:でもそんな堀井さん、これからやっぱり……ちょっと、見ないでくださいよ(笑)。堀井さんはこれからね、今までアナウンサーを……。
堀井:作家さんに渡された質問ですよね?(笑)。
宮治:『朝ズバッ!』(笑)。
堀井:したくもない質問ですよね?(笑)。
宮治:足、組みはじめちゃったよ(笑)。ねえ。フリーアナウンサーになられて。堀井さん、これからどんな……声の仕事っていっぱいあるじゃないですか? どういうお仕事をしていきたいんですか?
堀井:そうですね。あの……まあナレーションはね、本当にしっかりやっていこうと思うんです。ナレーションでちゃんとお金を稼ごうと思ってます。私は。
宮治:「お金を稼ごう」。そうですね。
堀井:これは真面目な話。稼いで、その稼いだお金でちょっと自分で朗読会をやろうと思ってるんですけど。全部、赤字なんですよ。ちっちゃいところ、ちっちゃいところを回るから。なんですけど、いいなと思って。
宮治:でももう舞台というか、高座ってもうお金じゃないですからね。
堀井:そう! わかります? たぶん20人、30人ぐらいを転々と、地方をやっていくっていう。
宮治:地方で2、30ですか? それは結構大変ですね。
堀井:ああ、そうですか?
宮治:で、何人ぐらいで? お一人で?
堀井:今、もうだんだん自分で朗読会の箱もガン! ガン! って押さえてしまったんですけど。それは都内なんですが。
宮治:えっ、ご自分で?
堀井:自分で。もう、そう。ナレーションは楽しいから、きっとずっと続けられると思うんですけど。もうひとつ、朗読っていう分野があって。すごく地味で。落語家さんみたいに話芸でもないし。ファンもそんなにないし。やらなければやらなくてもいいっていうようなステージなんですけど。ちょっとそれをちゃんと、自分で続けていこうって決めたので。その先に、その続けた先に何があるかはわからないんですけども。まあ、やろうと決めたので。ただ、たぶんボーッとしていたら私、やらなくなるなって思って。この、美味しいナレーションとかの方に走っちゃって。
宮治:でもね、確かにナレ録りと2、30人の舞台で考えたらナレーション録りの方が明らかにね、生活としては豊かになりますよね。気持ちが豊かにならないかもしれないけど。
堀井:いや、気持ちも豊かになりますけれども。もちろん。
宮治:ほら、「金のためにしゃべってんな」っつって。「病気でも、事故でも、災害でも、一律の同額保障」とかやるんでしょう? 「○○生命」みたいな(笑)。
堀井:良い声です(笑)。CM、来ます(笑)。
宮治:それよりはね、目の前でちゃんと読んでいた方がね。恋文かなんかをね。コイブミーズみたいな。ラブレターズみたいに言ったけど(笑)。
堀井:でもね、本当に需要がないからたぶん、やらなくていい仕事なんだけども。「やる」って決めたからやるしかなくて。そうすると会場を押さえるでしょう? そうすると、地方でも……でも、宮治さんもいろんなところでちっちゃく落語会をやってらっしゃるじゃないですか?
宮治:やってます、やってます。
堀井:あれは、何のためですか?
宮治:仕事です(笑)。
堀井:あれがちゃんとお金を稼ごうっていう?
宮治:僕たちの場合は、利益になります。2、30人でも。2、30人って地方で2、30人はもう今はさすがにないですけど。だいたい300から500ぐらいなんですけども。
堀井:まあ、そうですねね。300、500ですよね。昔はどうでしたか? 10人、20人っていうのがあったんじゃないですか?
宮治:もちろん、もちろん。僕、だって最初に僕の勉強会なんていう本当に10人とか……つばなれしたのは。僕ら、10人以下のことを「つばなれ」って言って。10人行って僕らははじめて、「つばなれした」ですね。「一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、九つ……」って。で、十からはじめて「とお」になるので。「つ」から離れるので「つばなれ」。10人行くとつばなれって言うんですけども。そういう言葉があるぐらい、やっぱりそういう時代をやってきて、300の小屋に行って、500に行って。じゃあ次は800かっていうふうに段階がね、上がればいいやと思ってやってるので。ただ、やっぱり人数じゃなくて。その目の前にいるお客さんが楽しいと思ってるか、思ってないか。このキャッチボールをしながら、ひとつの一期一会の空間を作っていくって、ちょっとやってる人間じゃないとわかんないこのワクワク、ゾクゾク感ってあるじゃないですか。
堀井:すごいわかります。だから自分の、その自分1人でやるものは100人、200人の大きい箱を押さえたんですけども。地方でやるのは10人とか20人の方と一緒にやるんですよ。だからたぶん採算も取れないし、たぶん赤字なんです。なんですけど、たぶんおもしろいんだろうなと思って。
宮治:すごい! でもそれは、すごくいい50代、60代ですね。そんなことを……だってものすごく贅沢な遊びというか、仕事というか。うん。
堀井:贅沢なんです。そう!
宮治:それができるっていうのは勝った人間しかできないですからね。仕事で勝ってなければ……だって今日、明日の生活をどうしよう? っていう人は、そっちのことができないですからね。それは今まで、すごく頑張って。TBSアナウンサーとしてきちんと頑張ってきたからこそ、その仕事の延長線上に仕事なのか遊びなのかわかんないことができるっていうね。最高の5、60代じゃないですか。そんなの。
堀井:ありがとうございます。ちょっと今、顔がにやけていましたけども、私はその言葉をもう真摯に受け止めましたから。
宮治:いや、本当に、本当に。すごいですよね。
堀井:だから、そうやって稼ぐところと、その自分でふんだんに赤字であるけれども心を豊かにするっていうか。なんか人生を豊かにするために使う場所と、それを分けようと思ってるんですよ。
<No.04-04へ続く>
文:みやーんZZ
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