その日はよく曇った日でしたから、私はチンチンを勃起させるしかできなかったのです。

 その日はよく曇った日でしたから、私はチンチンを勃起させるしかできなかったのです。
 まず朝目が覚めたときに、チンチンが固くなっているのを感じました。それだけであれば、ああ排尿すれば治まるなと思っていました。
 しかしそうはならなかったのです。チンチンは排尿してなお固く、雄々しく、屹立していて、私の生きてきた中で最も勇敢なシルエットをしていたのです。
 こうなっては、なんだか楽しくなってくるもので、灰色の、着心地のいいスウェットと緑のズボンを履いて、黄色のスニーカーの靴紐を蝶々結びし外へ出かけました。
  鍵を閉めるときの感触はいつでも私を戦かせます。もう戻れないこと、そのアリバイを私自身が創っているようで。
 その時間は確か4時くらいだったので、道には人っ子一人いませんでした。私は朝の静けさと清々しいしさを独り占めできて、思わず道の真ん中で踊ることさえしてしまいました。
 その日の空の色と私の服の色とがおそろいだったので、あの鉛空と私を隔てる輪郭が無くなったかのように思えました。
 いっそこのまま消えてしまおうかと思ったその時、私は下腹部の違和感を思い出しました。
 そうだ、今日は君もいるんだね。私は私の勃起したチンチンをそっと撫でました。
 やさしい刺激を与えられたチンチンは感応し、より大きく、より固くなりました。
 君も出たいのかい?そうチンチンに話しかけると、チンチンはピクッ、と小さく痙攣しました。
 よって、私はズボンのジッパーを下ろし、腰の制約を解きました。
 チンチンは、引き絞った弓のようにしなっており、振り絞った弦のように振動していました。
 やがてその震えがなくなると、私たちは近くの公園に行くことにしました。
 公園は道を挟んで向こう側にあり、同様に向こう側にある川に沿って歩くと、直ぐつきます。
 私たちが公園へ向かっていると、遠くに人影が見えました。
 しばらくしないうちにその人影は識別できるくらい大きくなり、それがジョギングしている人だと分かるのにそれほど時間を要しませんでした。
 やがて近くまでやってくると、私は声をかけました。
「おはようございます。今朝は涼しいですね」
 私がそう言いますと、ランナーは爽やかな顔で、
「いやいやいやいやいやいや!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!そげなB.I.Gなディック、見たことありませんわ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!もう、怒張して、怒張して、どちらが身体の支配権を司っているのか甚だ疑問に思います
                            ヴァギナ」
 と言い、タッタッタッ、と走り去っていきました。
 ここの公園はそこまで広くありませんが窮屈ではなく、すべり台やシーソーなど、公園らしいものをしっかりと揃えてあります。だから私はこの公園が好きです。
 普段私が腰掛けてるベンチに座ります。木陰にあって、あの忌々しい日光どもが激しい日は、よくここで本を読んだりします。
「悪かったね。君を今まで外に出さなくって」私は私の勃起したチンチンに言いました。
 冷涼な大気のなか、余にも青く、新鮮な大気を肺いっぱいに満たすと、変なことを口走ってしまうものです。
 私の勃起したチンチンは静かに震えました。
 私は咄嗟に口元を抑えてしまいました。ああ、違うのです。私は赦しを求めているのではありません。ただ楽に、楽になりたかったのです。自らが抱え込んだへどろを、ただどこかへ捨てたかっただけなのです。
 だが、それが彼の下に渡った途端、彼はそれを飲み干しました。何も言わずにです。
私は神ではない、ただの勃起した私のチンチンに無責任に赦しを請い、神になることを強制してしまったのです。
 私はその時私の本当の過ちに気づきました。なんて醜く、傲慢で不遜な生き物なのだろうかと。
 私は彼に謝ろうと口を開きました。しかしそこから言葉が生まれることはありませんでした。
 なぜなら気づいてしまったのです。私がここで彼に謝罪したところで、先程のくだりの再生産でしかないことに。
 そこから私はついに動けなくなってしまい、ベンチから立てなくなってしまいました。
 どのくらい時間が経ったでしょうか。足音が聞こえたので顔を上げると、犬と散歩している、およそ40代半ばの恰幅のいい主婦が、私を見下ろしていました。
その主婦は私を見るなり言いました。
「チンチンはこんなに勃ってるのにねえ」
そういうと、主婦は愚鈍な犬の、リードを引っ張って足早に立ち去りました。
 主婦の言葉に突き動かされ、私は今一度私の勃起したチンチンに向き合いました。
 私の勃起したチンチンは、たおやかな風に、静かに揺れていました。
「チンチン。チンチンやい」
 呼び掛けに応じるように、私の勃起したチンチンはピクッ、と感応しました。
「お前は立派だよ、俺より」
 チンチンは応えません。
「でも、やっぱりお前の主は俺で、それは星が廻るように、岩が砕け砂になるように、時間が巻き戻らないように、宇宙の部屋に飾られている、変えられないことなんだ」
チンチンはやっぱり応えません。
 「だからさ、俺も、お前みたいになるよ。固く、雄々しく、勇敢に立つ。そういう人間になるよ」
 チンチンは、円を描くように回りました。でもそれは、私が根本を掴み、動かしているからです。
 それでもそれがチンチンの言葉だと信じています。あの日、満天の曇り空の下、私と私の勃起したチンチンの誓いは、勃起したチンチンに浮き出る血管に誓って、永劫果たされるものであると信じています。
 たんぽぽの綿毛が亀頭にそっと触れました。

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