一日一首(令和六年一月)
喜寿の朝「健康余命一年」のつもりで詰め込む年間計画
纏(まとひ)振る消防団の掛け声と馬簾(ばれん)の音が淑気(しゆくき)を醸す
正月の能登大地震の惨状に映画『日本沈没』が現実味をおぶ
能登大地震の直後に支援をツイートせし蔡英文総統に「多謝」かへさむ
雪国の小寒に雪ならで雨が降る。天変地異とさへ言ふべかりける
老いたるか辞書を的確にめくられず滑る手指を息にて湿らす
冬陽さす温き書斎で本を読む。気づけばストーブの火は消えてをり
久しぶりの白銀世界に日に三度シャベルを押して雪掻きに汗す
雨ふりて雪掻き不要で籠りをり暦は小寒の候と言へるが
「珠玉の」とふ帯に魅かれて求めたる文庫本の小さき文字に難儀す
鏡餅型のプラスチックの底を開け「鏡開き!」と夫婦で笑ふ
切り餅を取り出しし空の鏡餅。飾りをはずして年末を待つ
兆民の『一年有半』に記されし政治の様は令和も変らず
願はくは無為徒食での長寿より社会参画で余命のばさむ
温暖化を憂ひしかどもこのところ降り続く雪に「もう十分だ!」
雪道にも除雪車のくる気配なく轍のあとをたどりて歩む
新聞への投稿採用のメイルあり。令和六年のまづは十二分の一
なにごとも自己責任といふ世なり「医者を選ぶも寿命のうち」とぞ
「無効」との帰無仮説立て棄却せし薬の効果はP値が頼り
チャット相手がAIであること知りつつも秘書と思ヘて感情移入す
すまし顔でたばこは吸はぬと答ふるも男の手には加熱式たばこ
一茶さへ死に稽古せむと詠みしのち辞世の句をば遺したり嗚呼
名ばかりの大寒の候、降る雪も霙まじりの三寒四温
キュブラー・ロス著『ON DEATH AND DYING』は終末ケアのバイブルなりや
大寒の陽射しはすでに春めいて雪掻きする手に額の汗たる
免疫とは疫を免れる意味なれど時には暴るる「諸刃の剣」
娘来て三人で飲むコーヒーはアメリカンなり。分量ミスか?
赤飯で七十六歳(しちじふろく)を祝はるる爺医にしてなほ働き盛りぞ
純血のホモサピエンスの遺伝子はサハラ以南にとどまりきとか
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