ビル火災!どう逃げる大阪放火 京アニ事件に学ぶ教訓(2021年12月21日15時00分)
大阪市北区のクリニック放火事件。8階建てのビル4階で上がった炎は約30分で鎮圧されたが、27人が心肺停止状態となり、25人が死亡する大惨事となった。現場はどこにでもあるような雑居ビルだ。放火かどうかはともかく、日常、私たちもビル火災に巻き込まれる可能性はゼロではない。万が一の場合、どう逃げればよいのか。(時事ドットコム編集部 正木憲和)
無色無臭、1~2分で死も
大阪府警の捜査などによると、放火の疑いが持たれている谷本盛雄容疑者(61)は2021年12月17日午前、大阪市北区曽根崎新地のビル4階クリニックでガソリンのようなものをまいて火を付けたとみられている。谷本容疑者はクリニックの患者で、エレベーターを降りてすぐのクリニック出入口付近の床に置いた紙袋を蹴り倒し、火を放つ様子が防犯カメラに映っていた。被害者の多くは一酸化炭素(CO)中毒で死亡したという。
COは、ガスが酸素不足の状態で燃焼した場合(不完全燃焼)に発生する気体だ。強い毒性があるが、無色・無臭のため、気が付かないうちに吸い込んで中毒症状を起こしてしまう。
東京消防庁の資料では、大気中のCO濃度が0.03~0.06%では4~5時間で嘔吐(おうと)や激しい頭痛に襲われ、やがて運動能力を失う。濃度がわずか0.5~1%でも1~2分で呼吸障害に陥り、死に至るほど毒性が強い。
犠牲者の多くはクリニック奥に固まるようにして倒れており、逃げ場を失った末の惨事だったと思われる。事件では出入口付近で炎が上がり、奥に逃げ込むしかなかったのだろうが、ビル火災で助かる可能性が少しでも高まる避難方法はないのだろうか。
低い姿勢、息を止めない
36人が犠牲になった2019年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、消火に当たった京都市消防局が事件後にまとめた指針を見てみよう。
指針によれば、2階以上にいるときに火災に巻き込まれた場合は、階段での避難を第一に考える。階段が複数あれば、屋外階段や曲がる回数か少ない経路を選び、屋内階段を使う場合は、出火階の煙を上階に行かせないため、階段室の扉を閉めるとよい。
火災の熱と煙は上の方からたまってくる。姿勢を低くして逃げるのが常道だが、指針は息を止めず、少しずつ浅めの呼吸をしながら避難することを勧める。息を止めて逃げると、途中で苦しくなったときに一呼吸で多量の煙を吸ってしまい、倒れてしまうことがあるためだ。タオルや服などで口と鼻を覆うことも望ましいという。