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きっかけは重大不祥事 主役不在の日産ゴーン事件 「司法取引」元側近公判は終盤に (2021年09月29日 11:00)
日本版「司法取引」(合意制度)が導入されたのは2018年6月。既に3年超が経過したが、これまでに適用が明らかになったのは3件にとどまる。2件目となった日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告の事件は世界の耳目を集め、元側近で元代表取締役グレッグ・ケリー被告の公判は終盤を迎えたものの、肝心の主役はまさかの国外逃亡を続けたまま。暴力団など組織犯罪の解明に役立つと期待された「捜査の武器」は定着するのか。(時事ドットコム編集部 正木憲和)
司法取引は、容疑者や被告が他人の犯罪を捜査当局に明かせば、不起訴や軽い求刑などの見返りを得られる制度。2018年6月施行の改正刑事訴訟法に盛り込まれた。経済犯罪や薬物銃器の密売などが対象で、殺人や性犯罪は適用外。他人の犯罪を暴く情報に見返りを与える点に特徴があり、米国のように容疑者らが自らの犯罪を認めても取引できない。「日本版」と呼ばれるゆえんだ。
導入のきっかけとなったのは、2010年に検事が逮捕された大阪地検特捜部による証拠改ざん事件だ。郵便不正事件で、捜査に当たった主任検事が証拠品のフロッピーディスクの文書データを改ざんしていたことが発覚。同事件で逮捕・起訴された村木厚子厚生労働省元局長(当時)の無罪が確定した。
証拠の改ざんは検察への信頼自体を揺るがす極めて重大な不祥事。「冤罪(えんざい)」の温床とも言われた密室での取り調べを認めない録音・録画(可視化)で容疑者の権利を守る必要性が議論され、同時に捜査の「武器」として司法取引の導入が検討された。
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新たな武器は、暴力団事件などの組織犯罪でトップの指示解明に役立つと期待された。末端の容疑者や被告の協力が得られれば、解明が困難だった統括役やリーダーの関与を明らかにできる。だが、罪を軽くしようと企てた容疑者らが、実在しない「主犯」をでっち上げ、罪をなすり付けるような危険性はないのか。第三者が関与しているかのような供述をして取引し、刑罰を逃れようとする。企てが成功すれば、ぬれぎぬを着せられた無関係の人物が逮捕されかねない。
裏付け証拠に重き
こうした懸念から、司法取引の合意には弁護人の同意が必要とされ、虚偽供述には罰則も設けられた。最高検は施行前に「裏付け証拠が十分にある場合でなければ取引を成立させない」との運用方針をまとめている。運用方針などに基づき、取引成立までをシミュレーションしてみよう。
日本版司法取引が初適用されたのは、タイの公務員に対する贈賄事件でした。後半で、シミュレーションに続いて取り上げます。
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