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職業は「カジノディーラー」 仕事内容、働き方、賃金は?【時事ドットコム取材班】(2023年05月30日)
カジノを中核とする日本初の統合型リゾート(IR)を大阪に整備する計画が動きだす中、「カジノディーラー」への注目度が高まっている。日本ではまだまだ身近とは言えないカジノディーラーとはどんな職業なのか。ディーラー養成校や海外のカジノで働く人に、仕事内容や働き方、賃金など気になる実態を聞いた。(時事ドットコム編集部 横山晃嗣)
ディーラーが足りない!
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「大阪IRには2000~2500人のカジノディーラーが必要です。ディーラーが足りていません」。5月14日午後、東京都新宿区のディーラー専門養成学校「日本カジノスクール」では、そう熱弁を振るう大岩根成悦校長(53)を、体験入学に集まった10~40代の男性8人が真剣なまなざしで見つめていた。
2004年4月に国内初のディーラー養成校として開校した同校は、現在、東京と大阪に計2校あり、23年3月末までに計約1000人が卒業した。うち約200人はシンガポールの「マリーナベイ・サンズ」といった海外のIRやホテル、海外クルーズを行う豪華客船などのカジノへ、残りの卒業生の多くも、金銭を賭けずにカジノ体験ができる国内のアミューズメントカジノに就職したという。
体験入学の参加者に話を聞いてみた。
今後の進路を考えている最中だという都立高校2年の男子生徒(17)は、「堅苦しいイメージを持っていたが、(体験入学は)とても楽しかった。大阪IRの開業が大学卒業のタイミングと重なるので、有力な就職先になりそうだ」と笑顔を見せた。都内の自営業の男性(36)は「海外の豪華客船で働きたい」と入学を検討。同じく都内から参加したフリーランスの男性(34)は「副業として手に職を付けたい」と話した。
ポーカー人気が後押し
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日本カジノスクールへの入学の問い合わせは、今年4月中旬から急増した。政府が大阪IRの区域整備計画を認定したことがきっかけだった。大阪IRは29年秋から冬ごろの開業を計画し、延べ床面積約6.5万平方メートル(東京ドーム約1.4倍)のカジノには、テーブルゲーム約470台、スロットマシンといった電子ゲーム約6400台が配置される予定。年間来訪者はカジノだけで約1600万人、併設のホテルや国際会議場、展示場を含む施設全体では約2000万人を見込んでいる。
大岩根氏は「海外で一般的な24時間営業のカジノでは、テーブル1台を1日3~4人のディーラーが交代で担当する」と説明する。ミスや不正を監視する上級職や管理職も含めれば、大阪IRで必要な関連人材は約3000人に膨らむとみている。
実は、既に現状でも国内のディーラー需要は伸びつつあるという。大岩根氏が卒業生や業界関係者らへの聞き取りを基に、23年春時点で少なくとも400軒のアミューズメントカジノが全国で営業していると見積もる。「ここ数年ですごく増えている。海外カジノのポーカー大会に参加する日本人のユーチューブ動画などがきっかけとなり、特にポーカー人気が高まって専門店が増加した」と解説する。
「勝ち方」は学べません
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ディーラー養成に向け、同校で教えるのはルーレットの玉を投げたり、カードを素早く配ったりといったゲーム進行に必要な技能だ。正確な配当計算も訓練するほか、公正なゲーム運営のための「ルーレット盤を見て玉を投げない」「何も隠し持っていないことを示すために手のひらを客や監視カメラに見せる」といった所作も指導する。カジノの歴史や運営の仕組み、英会話などについても講義形式の授業で学ぶ。
カジノを巡ってはギャンブル依存症を懸念する声は根強い。大岩根氏も「依存が問題になれば、カジノの評判が下がる。カジノ側にとっても依存は防ぐべきことだ」と話し、スクールでは専門家を講師に招くなど、依存症対策について知識を深めるための講座を設けている。
大岩根氏は、「ディーラーはカジノのゲーム進行役であって、勝敗を操るような何かをしているわけではない。ゲームの勝敗で給料も変わらない。海外では『オネスト・ビジネス』(正直な職業)と言われているほどだ」と話す。「カジノは薄利多売のビジネスだ」と語り、客がゲームに参加するとカジノに手数料が入るため、「ディーラーに求められるのは、勝ち負けではなく、素早く正確なゲーム進行で気持ちよく遊んでもらうこと」という。
「ディーラーになればポーカーで勝てるようになれますか」。
同校に時々ある問い合わせの一つだが、広報担当者は「プレーヤーとして強くなる方法を教えているわけではない」とばっさり。ディーラーに求められる素養は、「うそをつかないこと。ミスしてもごまかさず、正直に申告すること」と話した。
一挙一動が監視対象
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では、実際のディーラーの働き方とはどういうものか。まず勤務だが、海外の24時間営業のカジノでは、週5日、1日8時間のシフト勤務が一般的だ。集中力を保つために1時間前後働いた後に20分程度の休憩時間が確保され、残業はほとんどない。
客からの心付け(チップ)は集計し、同じ時間帯に勤務する従業員で分配する。賃金水準は、心付けを渡す習慣がある国では低く設定されているが、日本と同じように習慣のないオーストラリアのカジノでは、一般的なホテル従業員の1.2倍から1.5倍程度という。
海外のカジノでは、そのカジノが立地する国の労働許可を受けることが前提だが、カジノが行う技能テストに受かることができれば、性別や年齢に関係なく働くことができる。仕事中は上級職がそばに立ち、不正がないかどうかを見張り、監視カメラも一挙一動を記録。手順から外れた動作やチップの数え間違いといったミスが続けば、勤務を外されることも珍しくない厳しい世界だ。
ソウルで腕磨く女性
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カジノ勤務のリアルに迫るべく、海外のカジノで活躍する日本人2人に話を聞いた。いずれも日本カジノスクールの卒業生で、将来は日本のIR業界に関わることを目指している。
白倉福子さん(27)は、今年4月から韓国ソウル東部の「パラダイスカジノ ウォーカーヒル」に勤め、主に日本人VIP専用ゾーンで働いている。「海外で経験を重ね、将来は日本のIR業界で働きたい」と話す。以前はエステ業界で働いていたが、日本でのIR開業を巡るニュースに触れたことがきっかけでスクールに入り、18年3月に卒業。その後は、国内のアミューズメントカジノで副店長を務めるなどして腕を磨いてきたが、本物のカジノでは駆け出しのディーラーだ。
白倉さんが働くのはVIP専用ゾーン。人気のゲームはバカラで、賭け金は平均10万円ほどだが、約700万円を賭けるケースを目にしたこともあるとか。後半で紹介します。
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