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永代供養墓プロジェクト入門1        お寺の永代供養墓プロジェクトの問題点

自身のお墓のことで不安を感じる人たちのために

 このマガジンを書いている薄井は、お寺の運営コンサルティングを行う寺院デザインの代表を務めています。

 寺院デザインでは、創業以来約15年の間に、永代供養墓に関してだけで、100以上のお寺のコンサルティングを行ってきました。

 寺院関係者にとって、永代供養墓を運営することが、これからのお寺にとって必要不可欠であることは共通認識に近いと思います。

 少子高齢化の進む中、子どものいないおひとり様やご夫婦、あるいは、お墓のことで子ども達に迷惑をかけたくないという人が、増えています。そしてそうした方々は、ご自身のお墓のことで、不安を感じていることが多いのです。

 お寺は、そうした方々が、自身のお墓のことで不安にならないように、何らかの対応をしていかなくてはならないと思います。永代供養墓の運営は、その対応のひとつであり、社会的関心も高いお墓でもあるのです。

 それゆえ、永代供養墓にとりくむお寺は10年くらい前から急増していますが、その多くは計画性が無く、その結果、建立したものの申込みが少ないという状況にあります。中には、建立業者に乗せられて、必要以上に多額の投資をして建立したものもあります。どんなにいいものを建立しても、申込みが無ければ、存在価値はありません。

 弊社にコンサルティングの依頼のある案件の多くは、建立して数年たち、申込みが思ったように無く、困り果てて相談に来たというものです。私としては、最初から相談があればこんなことにならなかったのに、と思うのですが。
 それでも、後からでも軌道修正することは可能ですし、工夫次第では、目標の申込数を確保することは不可能ではありません。さらに申し込んでくれた人とのコミュニケーションを工夫することで、檀家以上の存在になっていただくことも可能です。

永代供養墓のプロジェクトを体系的に計画する

 マガジン「10年後のお寺をデザインする」では、まず、永代供養墓のプロジェクトについて、約15年にわたって100ヵ寺以上のプロジェクトに携わってきたノウハウをもとに、事業計画から建立、募集、その後の運営までを体系的にお伝えしたいと思います。

 本原稿より、以下の内容について書く予定です。これから永代供養墓を建立したいと考えている住職、永代供養墓のプロジェクトを見直したいと考えている住職に読んでいただければと思います。


永代供養墓プロジェクト入門

・お寺の永代供養墓プロジェクトの問題点
・目的と対象を明確化する 永代供養墓プロジェクトの基本
・永代供養墓の納骨形式と礼拝形式
・永代供養墓の制度設計と料金体系
・永代供養墓の規約 ──利用者の義務と権利
・永代供養墓の建立業者の選び方を考える
・お寺による永代供養墓の募集 オフライン編
・お寺による永代供養墓の募集 オンライン編


 永代供養墓は、平成元年に新潟の妙光寺・安穏廟、東京・巣鴨の功徳院・もやいの碑が生まれ、その後、約30年をかけて広まり、定着してきた。そして、おひとり様が増え、葬送が簡素化する中で、永代供養墓を求める人も増えてきました。

 しかし現実は、建立しても、ほとんど申込みの無いというお寺が少なくありません。申込みは、一部のお寺に集中しているだけです。

プロジェクトがうまくいかない理由

 プロジェクトが、うまく行かないお寺の問題点は何なのでしょうか。
 まずは、募集のことを軽視しているお寺が多いということです。建立さえすれば、自然と申込みが来ると信じているお寺が多いのです。当たり前のことですが、檀家外の人に申し込んでもらいたい場合は、それなりのマーケティングで募集を行わなければなりません。

 つぎに、制度設計や料金設定がいい加減すぎることです。お寺の都合しか考えない制度設計であったり、複雑でわかりにくい料金設定のものも多いです。申込みを考えている人は、そういったものをよく見ています。制度や料金に難のある永代供養墓には、申し込みたくはならないと思います。

 そして建立する永代供養墓そのものの問題。デザイン性が強すぎて、手を合わせる人の感覚を考えていないもの。住職や設計者の趣味性が強いデザインで、ちゃんと申込みの来ているものはあまり見たことがありません。過剰投資の永代供養墓もよく見かけます。業者が募集を行うならともかく、お寺が募集を行うのに、三千万円を超えるような永代供養墓は現実的ではありません。またオーソドックスなデザインのものはまあ間違いないのですが、納骨形式や礼拝形式が、デザインする人、あるいはお寺の独りよがりになっているものもあります。

お寺にとっては初めての事業

 永代供養墓のプロジェクトは、ほとんどのお寺にとって、初めての事業らしい事業です。経験が無いので、どうしても泥縄のような事業の進め方になってしまいます。しかも、僧侶視点で考えるので、一般の人とどうしても感覚にズレがでてしまいます。

 もうちょっと外部の人の声に耳を傾ければいいのにと思うのだが、残念ながら、お寺の周囲にいる人というのは、お寺に対して苦言を呈する人は多くはありません。そんな中で、プロジェクトを進めなければならないご住職はたいへんだと思います。

 その意味で、この連載が、そうしたご住職の役にたっていただけたらと思います。

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