薄井秀夫

お寺の運営コンサルティング会社、株式会社寺院デザイン(https://www.jiin…

薄井秀夫

お寺の運営コンサルティング会社、株式会社寺院デザイン(https://www.jiin-design.co.jp/)の代表。主著に『10年後のお寺をデザインする』『葬祭業界で働く』など。ブログ(https://www.jiin-design.co.jp/blog/)もよろしく。

マガジン

  • 10年後のお寺をデザインする

    お寺のコンサルティング会社の株式会社寺院デザイン代表の薄井秀夫による、現代における寺院運営に関するエッセイ。時には真面目に、寺院活性化のノウハウについてもお伝えします。

  • 葬式仏教の研究

    葬式仏教という日本の仏教のあり方を通して、日本の仏教の仕組みをあきらかにします。 高邁な教えから見た仏教ではなく、普通の人が仏壇やお墓に手を合わせるという、人の営みとしての仏教を考えます。

最近の記事

永代供養墓プロジェクト11      お寺による永代供養墓の募集(5)

なぜ広告を出してもさっぱりなのか?  永代供養墓の募集に関して、折込チラシや新聞広告、あるいは交通広告などのオフラインの広告と、リスティング広告、墓地紹介サイトなどのオンラインの広告について触れてきました。  これらを複合的に出稿して見込み客を集めるのですが、お寺によっては、広告をそれなりに出しているのに反応はさっぱりということもあります。要因は様々ですが、中でも広告を出した後の流れができていない、というケースは非常に多いようです。 次の行動を促す広告  キャッチコピ

    • 永代供養墓プロジェクト10               お寺による永代供養墓の募集(4)

      墓地紹介サイトを利用する  インターネットを利用した永代供養墓の募集において、リスティング広告は極めて重要な役割を果たすが、もうひとつ重要なのは、墓地紹介サイトの利用です。  10年ほど前から、墓地販売においては大きな存在感を示していますが、近年は、永代供養墓の募集においても、外すことのできないプラットフォームとなっています。  ご存じの方が多いと思いますが、紹介サイトの仕組みは、サイト上で永代供養墓の資料請求ができるようになっており、資料請求した人のリストがお寺(石材

      • 永代供養墓プロジェクト入門9      お寺による永代供養墓の募集(3)

        オンラインでの広報活動  前回、お寺が永代供養墓の募集をする際に行うオフラインでの広告について解説しました。  今回は、オンライン、すなわちインターネット関連での広告について述べたいと思います。  現代社会において、インターネットは、社会のインフラとして必要不可欠のものとなっています。それゆえ僧侶の中には、「インターネットをうまくつかえば、永代供養墓の募集は、けっこううまくいくと思う」と考えている人が多いようです。  もちろんその通りなのですが、現実はそんなに甘くはあ

        • 永代供養墓プロジェクト入門8      お寺による永代供養墓の募集(2)

          オンラインの広告とオフラインの広告  前回の原稿でも書いたが、お寺は、永代供養墓の募集をするにあたっても、広告を出すことに消極的であることが少なくありません。弊社がサポートしているお寺の中にも、最初は「広告は出さない」と考えているお寺が多いのですが、しつこいくらい広告の必要性を説いて、広告を出すように誘導しています。  またお寺は、広告を出した経験が少ないので、どんな広告媒体があるのかの知識や、それぞれのコストや効果についても、整理して説明する必要があります。  広告は

        永代供養墓プロジェクト11      お寺による永代供養墓の募集(5)

        • 永代供養墓プロジェクト10               お寺による永代供養墓の募集(4)

        • 永代供養墓プロジェクト入門9      お寺による永代供養墓の募集(3)

        • 永代供養墓プロジェクト入門8      お寺による永代供養墓の募集(2)

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        • 10年後のお寺をデザインする
          11本
        • 葬式仏教の研究
          24本

        記事

          永代供養墓プロジェクト入門7       お寺による永代供養墓の募集(1)

          募集がうまくいかないお寺が多い理由  前回まで永代供養墓を建立するまでのことを書きましたが、どんなにいい永代供養墓を建立しても、そこに入る遺骨が無ければ、申し込む人がいなければ何の意味もありません。  ところが現実は、永代供養墓を建立するお寺の多くが、募集がうまくいかず中途半端な状態になっています。弊社に来る相談も、募集がうまくいかないので何とかしたい、というものが大半です。  お寺は、募集というものの大切さをあまり理解していないケースがほとんどです。募集の見込みも、が

          永代供養墓プロジェクト入門7       お寺による永代供養墓の募集(1)

          永代供養墓プロジェクト入門6       永代供養墓の建立業者の選び方を考える

          プロジェクトの方向性によって建立業者の選択は変わる   永代供養墓を建立するにあたって、どんな業者を選択すればいいのでしょうか。これも、よくお寺から来る相談です。  普通の墓地に墓石を建立する石材店を選ぶにあたっては、さほど選択肢が多くはありません。  古くからつき合いのある地元石材店にお願いしているケースが多いと思いますが、新規区画をつくって募集する場合などは、広いエリアで営業活動する石材店を選ぶお寺が多いと思います。  ところが、永代供養墓を建立する業者に関しては

          永代供養墓プロジェクト入門6       永代供養墓の建立業者の選び方を考える

          永代供養墓プロジェクト入門5      永代供養墓の規約 ──利用者の義務と権利

          お寺と利用者の約束ごと  永代供養墓を運営していくには、利用者との間に、規約をつくることが必要となります。  一般的にお寺と檀家との間には、必ずしも規約等の約束事が定めてあるわけではありません。近年は、何らかの約束事を定めるお寺も増えていますが、もともとは檀家の間で何となく伝承されてきた約束事です。ところが永代供養墓の利用者の多くは、新たにお寺と関係を結ぶわけですから、当然、以前からの約束事は知りません。そのため、新たに明文化された規約が必要となってくるのです(現代におい

          永代供養墓プロジェクト入門5      永代供養墓の規約 ──利用者の義務と権利

          永代供養墓プロジェクト入門4     永代供養墓の制度設計と料金体系

          後回しになりがちな制度設計と料金体系  永代供養墓のプロジェクトにおいて、制度設計と料金体系が大切なことは、いろんな場所で伝えてきました。  しかし多くのお寺では、この二つを、充分に考えて整えているとはいいがたいのが現実です。とりあえず建物としての永代供養墓を建立することで頭がいっぱいで、制度設計のことは、ギリギリになって考え始めるということが多いようです。  制度設計の要素としては、次のようなものがあります。 檀家になるか、宗派を限定するか、俗名でも可能か  遺骨を骨

          永代供養墓プロジェクト入門4     永代供養墓の制度設計と料金体系

          永代供養墓プロジェクト入門3      永代供養墓の納骨形式と礼拝形式

          選択肢が多い納骨と礼拝の形式  お寺で永代供養墓の計画をたてる時、納骨形式をどうするか、礼拝形式をどうするかは、必ず考えなくてはならないことです。  一般的なお墓と異なり、永代供養墓にはこの2つの形式に選択肢が多いのです。  例えば、納骨形式には、合祀なのか、骨壺のままなのか、粉骨して納めるのか、といった選択肢があります。さらには、地下カロートなのか、地上の構造物に納めるのかという選択肢もあります。また、骨壺を納める場所は、個人単位なのか、家族単位なのか、さらには全ての遺

          永代供養墓プロジェクト入門3      永代供養墓の納骨形式と礼拝形式

          永代供養墓プロジェクト入門2      目的と対象を明確化する

          ほとんどの場合は、目的も対象もあいまいにしか考えていない お寺の永代供養墓プロジェクトのコンサルティングを行う時、必ず行うのが、目的と対象の明確化です。何のために永代供養墓を建立するのか、どんな人を対象に永代供養墓を募集するのか、ということです。  この話をしようとすると、そんな面倒なことは必要なのか、という反応をする住職も少なくありません。中には、そんなのはもう決まっているから、早く具体的な内容を考えて欲しいという住職もいます。どんなデザインのものをつくればいいのか、どう

          永代供養墓プロジェクト入門2      目的と対象を明確化する

          永代供養墓プロジェクト入門1        お寺の永代供養墓プロジェクトの問題点

          自身のお墓のことで不安を感じる人たちのために  このマガジンを書いている薄井は、お寺の運営コンサルティングを行う寺院デザインの代表を務めています。  寺院デザインでは、創業以来約15年の間に、永代供養墓に関してだけで、100以上のお寺のコンサルティングを行ってきました。  寺院関係者にとって、永代供養墓を運営することが、これからのお寺にとって必要不可欠であることは共通認識に近いと思います。  少子高齢化の進む中、子どものいないおひとり様やご夫婦、あるいは、お墓のことで子

          永代供養墓プロジェクト入門1        お寺の永代供養墓プロジェクトの問題点

          24 僧侶が弔いに関わってはいけない時代のお話し/日本の仏教が葬式仏教になった理由⑤

           鎌倉時代初期に活躍した鴨長明という僧侶がいる。『方丈記』という随筆を書いたことで有名であるが、その鴨長明が当時広まっていた仏教説話を集めて、『発心集』という説話集を編纂した。その中に、次のような話が収録されている。  ある時、京都に住むある僧侶が、思うところがあって、坂本にある日吉神社に百日詣をしようと決心した。  八十日目を過ぎて何日目かのことである。お参りから帰る途中、家の前で人目をはばかること無く泣いている娘と出会った。  僧侶は放っておけず、「何がそんなに悲し

          24 僧侶が弔いに関わってはいけない時代のお話し/日本の仏教が葬式仏教になった理由⑤

          23 室町時代、なぜお寺が爆発的に増えたのか?/日本の仏教が葬式仏教になった理由④

           室町時代、仏教が爆発的にひろまったことを前述したが、その一方でこの時代は、日本仏教史の中では、めぼしいトピックがほとんど無い時代である。  鎌倉時代のように、その後の仏教に大きな影響を与えるような指導者も出ていないし、取り立て大きな事件も無い。  前述の日本史の教科書『日本史B』を見ると、室町時代で触れられているのは、北山文化・東山文化と新仏教の発展の項目のみである。  北山文化・東山文化というのは、金閣寺や銀閣寺に象徴される、禅宗を中心とした仏教文化が興隆したという

          23 室町時代、なぜお寺が爆発的に増えたのか?/日本の仏教が葬式仏教になった理由④

          22 教義的信仰と儀礼的信仰/日本の仏教が葬式仏教になった理由③

           信仰には、教義的な信仰と、儀礼的な信仰がある。  端的に言えば、教えを学び、教えに基づく生き方をしていくのが教義的信仰、様々な場面で神仏に祈るというのが儀礼的信仰である。教義的信仰はどちらかというと理性的で、儀礼的信仰は感覚的である。  また儀礼には、どうしても非科学的で、マジカルな力というものがつきものである。そのため現代社会は、儀礼的信仰を低いものと見る傾向が強い。しかし、どちらか一方が、他方より価値があると考えるのは正当では無い。どちらが欠けても、信仰は成り立たな

          22 教義的信仰と儀礼的信仰/日本の仏教が葬式仏教になった理由③

          21 インテリ視点でしか語られてこなかった仏教/日本の仏教が葬式仏教になった理由②

           仏教には、三つの担い手がいる。   第一の担い手は、仏教のエリートである。宗派の中で、専門に教学(宗派の教えを研究する学問を教学という)を研究している人、修行を専一に行っている人、あるいは宗派の指導者などである。   現代では、教えを研究する僧侶は、宗派の研究機関に属していることが多い。ほとんどの宗派が、教学部など、教えを社会に適応させるためのセクションを持っていたり、教学研究所のような研究施設を併設したりしている。また、資金力のある大きな宗派になると、大学を経営してい

          21 インテリ視点でしか語られてこなかった仏教/日本の仏教が葬式仏教になった理由②

          20 鎌倉時代に仏教が広がったという誤解/日本の仏教が葬式仏教になった理由①

           「日本仏教の歴史の中で、一番、仏教に勢いのあった時代は?」と聞かれたら、十人が十人、鎌倉時代と答えるだろう。  何しろ、鎌倉時代には、たくさんのスターが仏教界に生まれ、活躍をしていた。法然に始まって、親鸞、栄西、道元、一遍、日蓮など、仏教にあまり興味が無くとも知っている名前ばかりである。  歴史の教科書を見ても、やはり鎌倉時代が重要視されているのがよくわかる。  高校の日本史教科書の中で、最も使われている教科書のひとつに、山川出版社の『詳説 日本史B』がある。平成二十七年度

          20 鎌倉時代に仏教が広がったという誤解/日本の仏教が葬式仏教になった理由①