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やりすぎ補強伝説 -戦力均衡といたちごっこ-

マンチェスター・シティが2年間のチャンピオンズリーグ出場禁止。バレンタインデー明けの朝からとんでもないニュースが入ってきましたね。

今回の例は、単純にファイナンシャル・フェア・プレー(FFP)に違反していただけでなく、財政面での不正(スポンサーシップ収益の水増し)があったこと、クラブが調査に対して非協力的であったことが処分に至った理由のようです。

今日の記事では前に私がお話した「補強は力である」の限界と、「戦力均衡策は本当に戦力均衡として機能するのか」について書いていこうと思います。

ファイナンシャル・フェア・プレーってなんなん

今回の話に移る前に、まずファイナンシャル・フェア・プレーについて説明しなければなりません。
ファイナンシャル・フェア・プレーとは、2014年にヨーロッパのサッカー界に導入された「UEFAに加盟するクラブは、移籍金や人件費などの支出が、移籍金や入場料、テレビ放映権料、大会賞金、スポンサー収入などのクラブがサッカーによって得た収入を上回ることを禁ずる」という規則です。分かりづらいので図にするとこんな感じ。

もともとサッカーの戦力補強は自由な接触が許される分、使える資本力の差が全てを決するという世界になっています。赤字を犯してまでも「補強は力である」を実践するクラブが増えたことで、パルマやフィオレンティーナといったように破産するクラブも出てきました。
そこでこのFFPの導入により、オーナーのポケットマネーによっての赤字補填や移籍金支払いは事実上禁止となったのです。ACミランが最近弱くなったのはこれが理由。
この制度の目的は移籍の制限ではなく、赤字経営のクラブが続出することを止めることだ、と2011年の時点でUEFAは声明を出しています。

が、強引に言い換えれば、この制度はいわゆる「戦力均衡策」の一つなのではと私は考えています。それもただの戦力均衡ではなく、「移籍金のインフレや赤字経営クラブ出現を抑えつつ、戦力均衡に貢献する“表向きにはクラブ政治的に正しい”策」ではないかと私は思うのです。それでニューヒーローが出てくれば面白いしね。

「補強は力である」の限界

私が以前お話した強いチームの3原則、「補強は力である」は、限界が存在します。当たり前ですがクラブやチームが稼げる金額は、規模によって限度があり、補強のためにそこから出せる金額も限りがあります。また、補強した選手が高い技術を持っていなかったり、想定以下のパフォーマンスが出ない可能性もあります。技術ブーストのために、やみくもに補強をすればいいというわけではないと私は考えています。資本力は頭を使ってこそ。大事なのは「無理せず高い技術を持つ選手を獲る」ことであり、そのことで「競争は平和である」を阻害してはならないと私は思います。

「抜け穴」は必ず存在する

話を戻します。マンチェスター・シティの場合、ポケットマネーではなく、「クラブオーナーと関係の深い企業と巨額のスポンサー契約」を結ぶことでFFPを事実上回避しようとしました。いわゆるひとつのエティハド航空。

ただし、その額があまりにも多すぎたために嫌疑の目を向けられてしまい、2014年に一度FFP違反と判断されました。今回の件は再犯、その上で収益の水増しが発覚したため、より重い処分が課されることになったというわけです。

違うスポーツでも「タンキング」と呼ばれる手法が存在します。特にバスケや野球などドラフト制度のあるスポーツでよく見られる手法です。「低迷するチームがわざと負け続け、ドラフトの上位指名権獲得やトレードなどによって短期でのチーム再建を図ること」で、対策としてNBAではドラフト上位指名順をくじ引きにする「ロッタリー制度」などを導入していますが、「成績下位チームほど1位指名権を引き当てやすいように、高い当選確率を与えられる」というルールがあるおかげであまり意味がなされていないのが現状です。2008年のブルズとか確率論を超えてるしね。

このように、戦力均衡策には必ずルールをついた抜け穴を狙える余地があると私は考えています。また、それらを防ぐために新たな仕組みを考える、といった「いたちごっこ」が永遠に続いていくのです。

F1を反面教師に

こうした「抜け穴」が横行して、その対策とのいたちごっこがエスカレートし、結果的に人気が凋落したプロスポーツがあります。F1です。

F1はサッカーより資本力と技術力がものをいう世界で、それによる戦力均衡とコスト抑制、加えて安全性も考えなければならない、という難しい世界です。

ルールが変われば新技術が生まれ、それによってルールが変わる。加えてコスト抑制策によって生まれたのは、ファンが魅力を感じにくい無機的に生まれる追い抜きと、醜いマシンやエンジン音でした。

私はただ人気が下がった今のF1をボロクソに言いたいわけではありません。頭部保護のために生まれたHALOの重要性もわかっています。ハミルトンとルクレールの世代を越えた戦いも面白く感じます。
ただ、あの頃の自然に生まれる熱いバトルと人間ドラマと、かっこよさの中に生まれるロマンあふれるデザインを取り戻してほしいだけなのです。あとインディゲートみたいなやつはもうごめんね。

カギは「コスパ」にあり

残念なことですが、私はこのいたちごっこは人間や人間と共に生きるAIが文章作りをやめない限り永遠に続くと考えています。しかしながら、補強を実践しなければ、より良い技術はもたらされず、より良い選手の育成は叶えられません。そんな中で大事になってくるのが「コスパ」です。

投資効率の良く、群を抜いた技術を持つ選手が、今後育成にとっても、補強にとっても大事になってくると私は考えています。これらの選手の奪い合いが、今後起こってくるのではと私は思います。それはドラフトにしろ、移籍金を払ってのものにしろ、「良い選手」は「良い選手」なのですから。ドラ1で入ったばかりの森友哉が秋山翔吾に影響を与えたように…

まとめ

今回のまとめはこれ!

クラブやチームが稼げる金額は、規模によって限度があり、補強のためにそこから出せる金額も限りがあるので、やみくもな補強は結果的には育成にはつながらない。
戦力均衡策には必ずルールをついた抜け穴を狙える余地がある。また、それらを防ぐために新たな仕組みを考える、といった「いたちごっこ」が永遠に続いていく。
いたちごっこは永遠に続いていくので、「高い技術を持ち、安く獲れる」という「コスパ重視」が今後の補強傾向を左右する。

今回はあえて昇格降格があり、シーズン終盤まで競争がある「オープンリーグ」とそれがない「クローズドリーグ」にほとんど触れずに書きました。それぞれのリーグの形によって取るべき戦力均衡策は違いますが、どうしても抜け穴は生まれてしまう、というのを本記事の最大のポイントにして締めたいと思います。

それでは、また。
じはんき

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