お金があっても貧しい?

相対的剥奪と死亡率

他者と比較して貧しいと感じると死亡率は上昇する
相対的剥奪の影響は男性に強く見られる

大病を患った時には命はお金で買えるのではないかと思うくらい治療費がかかり、逆に考えると、治療費が払える人は病を克服することが可能となります。

そう考えると、現代社会においては収入が高い人ほど死亡率が減少しそうです。

しかし、ここで注意しなければならないことがあります。

それは、私たち人間は他者と比較する生き物だということです。

つまり、実際には収入が高くても周囲と比較して貧しいと思えば、その人は貧しいというわけです。

これを相対的剥奪と言います。

相対的剥奪の観点からは、収入が高い人でも周囲と比較して貧しいと感じている人は死亡率が高いということが判明しています。

さらに、この影響は男性に強く見られます。

進化心理学的観点から分析すると、競争(周囲との比較)で負けていると感じている場合(相対的剥奪)は健康に悪影響を及ぼしますが、女性より男性の方が争う動機が高いので、相対的剥奪の影響は男性の方が高いということでしょう。

高度な医療を受けられ、飢えに苦しむことがほとんどないような生活を送っていても、ヒトが働くを止めないのは周囲との比較で生きているからでしょう。

参考文献:

Kondo N, Saito M, Hikichi H, et al
Relative deprivation in income and mortality by leading causes among older Japanese men and women: AGES cohort study
J Epidemiol Community Health 2015;69:680-685.