【第21話】ひとはだ
隆史(仮)と過ごす時間と竜(仮)と過ごす時間、明らかに自分の中では違いがあった。
たかだか11才かそこらの小学生だった当時の状況を今の私が代弁すると…
まさに二重生活
これが当てはまるのである。
どっちが本命とか浮気とか、確かに隆史とは付き合っているとお互いに認識してはいたけど竜に関しては私の一方通行だった。
最初はね。
徐々に…こう…分かるじゃないですか。
時間を重ねて、何度か日曜日にもソフトボールの試合で会うことがあったり。
いくら小5でも好意は分かる。
暗黙の了解の如く、互いに…確実に好きやった。
ーーーキリトリーーー
竜は私立高校に進学し、たまたま訪れた文化祭で再会することとなった。
その時、竜は小学校のときから女の好みが変わっていないことを知った。
ショートカットの女が好き。
芸能人では内田有紀が好きだと。
私は小学校から女っぽい髪型が嫌でショートカットに近い髪型だった。
単に竜の好みの髪型だったのである。
むしろそれだけやった可能性まである。
完全にチャラくなった竜と再会し、
髪の毛切りーや
ニヤニヤしながら言われた瞬間、再会で復活かと思っていたけど瞬殺でボコボコにした…
心の中で竜は再起不能に。
想い出は綺麗なままでとは、よく言ったもんや。
ーーーキリトリーーー
どっちも好きで、最初は隆史がいるのにと少し罪悪感的なものもあったけど…
罪悪感って時間が経つと麻痺するもの。
好きな男が2人いて、どっちとも楽しい時間を過ごしながら羨ましいほど無邪気に過ごした小5と小6の2年間だった。
それでも変化はあった。
修学旅行は名古屋。
クラスの中で仲の良い子と班を組んで良かったので竜と同じ班になった。
ただただ楽しかった。
小6の夏休みは隆史と通うスイミングで選手育成の合宿に参加した。
4泊5日、親元を離れ違う県にある山奥の合宿所で一日中泳いだ。
小学校高学年と中学生が参加する男女は常に分けられていて、それでも互いに目配せをしながら最終日の夜まで乗りきった。
ただ楽しいだけの竜。
それに比べて互いに支え合い、想い、心を通わせられる隆史。
無邪気に2人とも好きやと自覚していても…
どこかで私は隆史が一番大切で、竜は遊びの延長のような好きやと自覚していたように思う。
順位をつけるんじゃなく、存在意義そのものが違うというか…
愛と好きの違い
これに尽きるような気がする。
齢12才でそこまでは考えてなかったけどね。
今ならそう思うのよね。
合宿最終日のキャンプファイアーで、皆が燃え盛る炎を見ていた。
私と隆史はコッソリ建物の裏側で座り、手を繋ぎ、抱き寄せ合った。
肌寒い山奥で、人の肌の暖かさを初めて知った小6の夏休みだった。
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