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【第13話】忠告

思いがけない土曜日の電話。

隆史(仮)は約24時間、私と同じように自問自答して悩んで考えたんやろう。


言い逃げした金曜日と土曜日の一件は、その後お互い一度も触れることは無かった。

照れや恥ずかしさもあった。

でもそれ以上に、口にしなくても2人だけが知ってる互いの想いがあった。

心の中に強い想いがあって1人でも1人じゃない感覚だった。


気持ちを確認しあって初めて会う月曜日。

いつものように教室に入って席につく、隆史はまだ来ていない。

どんな顔をするかな。

私はどんな顔をすればいいかな。

「おはよーー」

待ち望んだ声が聞こえた。

私も返事をしたけど、みんなの声に重なって隆史には届かなかった。

その時の席順は近くて、隆史が席についたときもう一度声をかけた。

「おはよう」

少し心臓がバクバクしていた。

隆史は振り返り、いつものように…

「おっす!」

???

いつものように…では無かった。

はっきり覚えてる、声が少し揺らいでいるような…

でも笑顔はいつもの笑顔。

私は安心した。

どこかで少し、よそよそしくなったりしたらと不安もあったから。

でもその日以来、変わったことがある。

それは学校、スイミング、そろばん教室の帰り道でバイバイする場所。

隆史は遠回りになるのに途中まで送ってくれた、今まで以上に。

遠回りしたからか、バイバイした後は猛ダッシュで走り去った。

なぜ遠回り…考えなくても、小4の私でも分かった。

守ってくれてありがとう。


毎日をいつものように過ごし、いつものように一緒にいた。

冷やかすようなクラスメイトも居なかった。

唯一、そこに水を差してきたのはオカンやった。

平日の夜、オカンと私の2人になったとき突然言われた。

「一対一の付き合いは許さんで」

静かに押し殺した…いや、ドスの効いた声。

隆史と2人で帰っているところでも見られたのか、ご近所さんの告げ口か。

ただそこで気付いたことがあった。

(付き合い…?)

好きと言い合ったけど付き合うって?

あぁ、そうか!!

彼氏と彼女か!

合点。

オカンに言われて初めて、自分達がそういう関係に値することに気付いた。

変に忠告なんてせんかったら、あなたの子供…気付きませんでしたよ?

しかし、小4に言うことかね。

ねぇ?

うちのオカン、ほんまそういう人なんですよね。

男勝りに遊び散らしたら文句言うのに、女子が男子を好きになるって…お望みの女の子らしい事じゃねぇのかよ。

まぁ、なにいってんの的な態度でスルーしましたけどね。

私にとってオカンの忠告は、隆史への想いを強固なものにした。

親への反抗ではない。

忠告くらいで好きなことを止めるわけもない。

隆史と私は付き合う事が出来る、そう気付かされた私は隆史と付き合うぞと決心する。

彼氏と彼女になる!

付き合うことが何か知らなかったけどね。

愛読書の少年ジャンプには載ってない。

本屋でりぼん(少女漫画誌)を立ち読みするか、近所の双子から借りるか…

よーし、"付き合う"を研究するぞ!!

小4の本気である。


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読んで頂きありがとうございました!

明日は車検、LEDを対応品に変えないと💦

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