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【第7話】壊されていく

昭和59年、小学3年生。

その前の年にデビューしたチェッカーズが世間を賑わせていた。

トップテンやベストテンを放送している時間帯、そもそも子供にはチャンネルの選択権は無く彼らの曲を聴く由も無かったので名前しか知らなかった。

私がチェッカーズを好きになったキッカケとなる曲は昭和61年発売の「Song for U.S.A.」

紅白歌合戦での歌唱曲でした。

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曲に衝撃を受けたのは、この時が初めてでした。

理由が分からないから衝撃なのか、いわゆる「この曲好きやわぁ」と自分の意思で感じたわけです。

時を戻そう。


通っていた小学校は変則的なクラス替えをすると前回記載しましたが、1~2年、3年、4年、5~6年と計4回のクラス替え。

何となく意図するとこは分かりますけどね、この3年でのクラス替えは私にとって重要なものとなりました。

私は1組、山之内(仮)は5組…何があっても関わらないようにと大人の策略が見えかくれします。

クラスが変わってもどうせ何も変わらないと思っていた。

3年となり、学校行事でも下の者が出来た以上は何かしらの役割が出てきます。

その時に使われたシステムが出席番号順(名前順)

初めて男子と女子の出席番号順に分かれなさいと言われ、隣に来たのは名前がマ行の隆史(仮)。

ヤ行の私と何の因果かマッポのてさ…ゲフンゲフン

何の因果か取り扱い注意の厄介者とペアになった隆史少年。

気の毒である。

あの乱闘事件以来、他のクラスの奴らも近付いて来なかった。

コイツもまぁ周りの友達に最悪やーとか、そんな顔してんやろーな。

「お前1年のとき喧嘩したやつやろー?(笑)」

え、いきなりそこ触れる?

満面の笑みで言われた、そんな奴いなかった。

なんやこいつ、頭おかしいんか?!

1年間、ズケズケと話すこのクソ坊主とペアかよ…

更に憂鬱な学校生活となるのは明白。

ところがどっこい

喧嘩の事に触れてきたのはこの日この一回だけ。

毎日返事もしないのに「おっす!」と挨拶してくる。

頼んでもないのに休み時間にドッチボールやろーぜと誘いに来る。

とにもかくにも話しかけ、誘う。

クリーニング屋の息子だと聞いてもないのに自分の事をペラペラ喋ってくる。

弟が1年にいる、しかも私の弟と同じクラス…

だからどうした

毎日心のなかで突っ込んだ。

おっす!

うぜぇ

ドッチボールやろーや!

いやじゃぼけ

今日日直やで!

お前1人でやれや

途中まで一緒に帰ろうや!

番線破りをサラッと言うな

毎日これである。

ノイローゼなる、ってか何で無視してんのにガンガン来るわけ?

また我慢の限界がやってきた。

アカン…アカン…口を開けばまたやってしまう。

私の心の中に入ってこないで!

(byア〇カ)


忘れもしない、耐えに耐えた4月の終わり頃…

ドッチボールやろーや!

ブチン

「うるさい!やりたないわ!!」

教室中に鳴り響く轟音でした。

ついに心の声が出てしまった。

唖然とした隆史の顔。

でももう、これで何も言っては来ないはず。

その直後…

「…じゃあなにがしたい?」

満面の笑みである。

はぁぁぁぁぁ???!!!

そうきたか、そうきましたか!

今度は私が唖然である。

あれほど分厚かったATフィールドが中和どころか崩壊の危機。

何層もあるはずやのに、もうすぐ完全にATフィールドが消えてしまう。

ちょっと待て

そもそも、何で人と距離置いてるんやっけ?

何で誰とも話そうとせんかったんやっけ?

なんで?

あれ?…理由が分からない。

あの保健室から学校では誰とも必要以上に話さなくなったけど…

そう、喧嘩の事を聞かれたくなかった。

触れられたくなかった。

隆史は触れてきたけど、以降は一切触れずにあの手この手で話し掛けてきた。

悪絡みではない、本当に嫌だと思った山之内(仮)のようなことはされていない。

「あんたなんやの?!」

こう問いかけた。

隆史は笑いながら…

「おまえ、ドッチボール上手いやん!やろーや!」

体育で何度かドッチボールやったけど、本気は出してないぞ…

おじいちゃん仕込みの球技に関しては確かに自信はあった、女子なら逃げるやろう豪速球。

「ほんでおまえ、スイミング通ってるやろ?俺もやねん!」

そう、1年のときからオカンに通わされたスイミング。

有り余る体力を消耗させる目的だったと聞いてる。

曜日も同じ、隆史も同じスクールで以前から私の事は知っていたとか。

級は私より上。

ちょっと悔しいという感情が芽生えた。

「あんたより上いったる」

何を思ったか宣戦布告…


ATフィールドはもう消えていた。


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読んで頂きありがとうございます!

お暇なときのお供になれば幸いです


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