ストロベリームース
ストロベリームース
僕はいちばん奥の席にすわっている
この時間のファミレス
他愛ない話し声が耳をかすめる
外の街道には
何台もの車のテールランプが帯びをひいている
「恋をしてきれいになっていく・・・」
店内には僕の好きな曲がながれていた
君が大好きだった「ストロベリームース」が
テーブルに佇んでいる
まるでさっきまで
君がおいしそうに食べていたかのように
決まって君は ストロベリームースの感激を
おいしいって言葉と共に 僕の鼻をツンっておしたね
僕が素っ気無い顔をしていたら
「この味がわかんないのかな」って ひとりぶつぶつ
「コーヒーでいいよ」僕もひとりぶつぶつ言っている
食べ終えると君は
「あ~おいしかった でもまたすぐにほしくなるんだよね」
「それ 僕のこと」
「バカっ」
「なんで」
「そうよ ストロベリーちゃん♪」
昨日のことのように 彼女の笑顔が繰り返された
僕の視界がまたテールランプの帯に引き戻された
「辛いから もうここにはこないで・・・」
僕の好きな曲がながれている
彼女がいった台詞
彼女がひといちばい笑顔でいた理由
僕への悲しみを隠すために 笑顔でい続けてくれた
彼女の悲しみの理由
僕が彼女を引き止めなかったから
「彼女じゃないと 生きていけない わかってくれ」
友人が僕にそう告げた
その間 彼女との思い出 彼女の笑顔が僕のなかを駆け巡った
長い沈黙が僕を裏切った
「幸せにしてやってくれ」
彼女は 僕の胸をたたいて 泣きじゃくった
「どうしてなの どうしてなの」
何度も 何度も 彼女は泣き腫らした目で見つめた
無声映画のように 彼女の声が遠ざかって
僕たちは終わった
テーブルに佇んでいる
ストロベリームース 君の笑顔
ひとくち 味わった
「甘いよ・・・」かき消されそうな声で言った
窓にうつる僕の横顔が深く涙した
#君に還るまで
#恋愛詩
#心声